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2021/1/8 6:00

「自己修復するディスプレイ」でスマホはまだまだ進化する

スマートフォンによく起こるアクシデントのひとつが画面のヒビ割れ。楽天モバイルのアンケート調査によると、スマホのディスプレイを割ったことがある人はおよそ3割もいるそうです。画面が割れたまま使い続けると何だか少しだらしないし、かといって修理にかかる手間や費用も惜しい。そこで、そんな問題を解決するための研究が行われており、ついに最近、割れたスクリーンを自己修復させる新しい素材が発表されました。

↑画面が割れても、へっちゃら!

 

折りたたみスマホをはじめ各種電化製品には「透明ポリイミド」と呼ばれる素材が使われています。ガラスのように透明なこの合成樹脂は、折りたたむ動作を何千回と繰り返しても強度を維持できるのが特徴。そんなポリイミドに亀裂や破損が生じにくくするために、これまでに添加剤の注入や保護層のコーティングなどが試みられてきましたが、破損を予防できる素材の開発には至っていませんでした。

 

そんな状況を打破したのが、韓国科学技術研究院(KIST)と延世大学の共同研究チームが開発した「自己修復可能な透明ポリイミド」です。この研究チームは、亜麻という植物の種から抽出した「亜麻仁油」に着目。この油は25度で硬化する性質があり、美術品の塗料などにも使われていますが、彼らはマイクロカプセル状にした亜麻仁油にシリコンを混合し、それを透明ポリアミドでコーティングしました。これによって、素材が損傷を受けると亜麻仁油が損傷部分に流れ出て硬化し、自然と修復できるようになるそうです。

 

紫外線照射なら20分で修復

自己修復機能を持つ素材はこれまでにも開発されてきましたが、従来のものは柔らかい素材にしか利用できなかったうえ、修復のためには高温での処理が必要でした。しかし今回開発された透明ポリイミドはスマホのような硬い材質でも使用でき、室温環境で修復することも可能。さらに、修復の時間を短縮したい場合は紫外線照射と湿度によって、わずか20分以内に95%以上が元に戻るそうです。

 

この素材がスマホに広く使われるようになったら、同じスマホをいままでよりも長く使うことができるかもしれません。同様に、ほかの電子機器や電化製品にもこの素材が使われる可能性も考えられます。スマホの進化は頭打ちとも言われていますが、この開発によって、画面が割れてしまって「だらしない」と思うことはなくなりそうですね。

 

【出典】Youngnam, K., Ki-Ho, N., Yong, C. J., & Haksoo, H.(2020). Interfacial adhesion and self-healing kinetics of multi-stimuli responsive colorless polymer bilayers. Composites Part B: Engineering, 203, https://doi.org/10.1016/j.compositesb.2020.108451