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2021/2/9 6:00

アメリカで話題の「ウォルマートプラス」が示す小売業の新しいサービスモデル

現在、アメリカではAmazonが以前にも増して売り上げを伸ばしていますが、そこに一石を投じたのが大手スーパーのウォルマートです。ほかのスーパーに先駆けてアプリやドライブスルーを導入したことに加え、毎回の配達料が無料となるサブスクリプション(定額制)サービスも始めました。

 

競合スーパーやアマゾンへの対抗施策として顧客サービスに力を入れるウォルマートの取り組みをユーザー視点も交えて紹介します。

↑Amazonに立ち向かうウォルマート(画像出典: Walmart+の公式サイト)

 

2020年9月に始まった新たな定額制サービス「ウォルマートプラス(Walmart+)」。サービス内容は「日用食料品の無料配送」「スキャン&ゴー(無接触購入システム)」「ガソリンの値引き」の3点で、コロナ渦でも必要な買い物には行かざるをえないものの、人との接触は避けたいというニーズに対応したサービスです。会費は年間98ドルで、15日間無料で試すことができます。

 

会員になれば配達料がいつでも無料

まずは、3つのサービスのなかで一番のウリである「無料配達」から見ていきましょう。日用品、食料品、衣類、家電製品など幅広く取り扱うウォルマートですが、これまでの配達サービスは注文金額が最低35ドル以上ということに加え、1回あたり7〜10ドルの配達料がかかっていました。ところが、ウォルマートプラスに加入すると配達料は無料で、注文金額にかかわらず配達してもらえます。注文はアプリで行い、配達日時と受け取り方法も選びます。

 

定額制サービスのため、月に2回以上注文すれば十分に元が取れるでしょう。例えば、いままで週に2~3回、約30〜45分程度の時間を1回の買い物に使っていたとすれば、1週間で約2時間、1ヶ月で約8時間、年間で約96時間も自由な時間ができることになります。

 

惣菜も販売しているので、「Uber Eats」のようにテイクアウト宅配としての利用も可能。Uber Eatsではテイクアウト料・配送料が上乗せされるので店舗で食べるよりもかなり割高になってしまいますが、ウォルマートプラスは余計な金額をかけずに食事を宅配してもらうこともできます。

↑こんな注文も届いちゃう(画像出典: Walmart公式インスタグラム)

 

ウォルマートプラスは当日配達可能と謳ってはいますが、筆者が住む地域では注文が集中する土日や夕方以降は選択肢から自動的に外されていることも。また、筆者は何回か注文してみた結果、生鮮食品は自分で選んだ方がよいという感想を持っています。やや傷んだものや鮮度が落ちたものなどが混ざっていることもあったため、商品をピックアップする人によってかなり差があると思いました。

 

見落としがちですが、ウォルマートに限ったことではないものの、アメリカでは対面で何かサービスを受けたらチップを払うのが常識です。地域により金額の差はあると思いますが、ウォルマートプラスでも毎回配達員に5ドル程度のチップを払わなければなりません。配達料は無料でも、この点が日本とは異なります。

 

店舗での非接触会計やガソリン割引サービスも

↑スキャン&ゴーでサクッとお買い物

 

ここからは、店舗内で使う「スキャン&ゴー」と「ガソリンの割引サービス」に話を移しましょう。スキャン&ゴーはお店のなかでアプリを起動し、購入したい商品のバーコードをスキャンすると、即座にアプリに合計金額が表示されます。専用支払機で支払い用のQRコードをスキャンし、登録済みのカードで購入が完了した後、出口で店員にアプリの支払い済み画面を見せれば買い物は終了。共有の買い物カゴを使ったり、レジに並んだりする必要もありません。コロナ渦中でなるべく人との接触を避けたい人にはもってこいのサービスでしょう。

 

しかし、難点はシステムを取り入れている店舗とそうでない店舗があり、利用できる店舗が限られていること。また、割引価格やクーポンの利用には対応しておらず、それらを使いたい場合は通常通りレジに並ぶしかありません。

 

一方、ガソリンの割引サービスでは、会員は1ガロン(約3.8リットル)あたり5セント(約5円)の割引が受けられます。このサービスはウォルマートだけでなく、系列の大型量販店「サムズクラブ」やガソリンスタンドの「マーフィーステイション」も対応。全部合わせると全米の2000を超える場所でこのサービスが受けられます。給油の際には、アプリを起動し割引コードを入力するかQRコードをスキャンするだけなので手間もかかりません。

↑ガソリン代が結構浮きそう

 

旅行先などで給油したい場合でも、アプリを開くとGPSのマップ画面で割引対象となる最寄りのガソリンスタンドが確認できます。まったく土地勘がない場所でも割引を受けられるガソリンスタンドを見つけられるので、とても便利です。

 

Amazon Primeと比べると……

コロナ禍で売り上げがさらに拡大しているAmazonの有料会員サービス「Prime」と比較してみると、その年会費は119ドルとウォルマートに比べてやや高めです。Amazonはパントリーをはじめ、ホールフーズマーケットと提携し食品配達サービスも提供していますが、最低購入金額が35ドル以上のうえ、多くの場合、1個売りではなくケース売りと大量です。

 

また、ホールフーズマーケットはオーガニックやオリジナル商品を多く取り扱っている一方、安さを売りにしているウォルマートに比べると価格帯が高め。店舗の立地も街のなかが多く、人によっては遠くて行きづらいかもしれません。

 

Amazonは実店舗を有さないことから、ガソリン割引については実店舗を持つウォルマートのみのサービスとなります。しかしPrimeでは映画や音楽、ゲームを体験できますが、ウォルマートプラスにはこのようなサービスがありません。

 

まとめ

ウォルマートはオンラインに限定せず、実店舗を持つ強みも生かしたウォルマートプラスを始めました。実際に使ってみるとまだ改善すべき点はあるものの、Amazonとうまく差別化しながら、ユーザーのニーズを先読みしていると言えるでしょう。日本でもいくつかの小売りサービス企業が連携していけば、ウォルマートプラスのような新サービスが生まれるかもしれません。