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2021/5/21 6:00

瞑想すると利己的になる!「マインドフルネス」の意外な落とし穴

「マインドフルネス」といえば、瞑想です。集中力が高まり、不安を軽減し、ポジティブ思考になるなど、瞑想は良いことだらけです。しかし最近の研究で、瞑想には意外なデメリットがあることがわかりました。

↑瞑想したらジコチュウになる? 修行が足りぬ……

 

瞑想は人の内面にさまざまなメリットをもたらしますが、社会的な行動に与える影響はあまり明らかになっていません。瞑想は人間を自立的にするのか、それとも人に依存しやすくするのか? この問題を明らかにするため、ニューヨーク州立大学バッファロー校の心理学部の准教授らが2つの実験を行いました。

 

1つ目の実験では、まず研究チームが被験者366名を自立的か相互依存的かどうかを判定します。次に被験者を2つのグループに分け、実験群は瞑想を、統制群はマインド・ワンダリング(心がふらふらとさまよった状態のことで、瞑想と相反する行動)を行いました。その後、慈善団体に送る封書の封入作業があることを両者に伝え、それにボランティアで参加するかどうかを聞きました。その結果、自立性が高いと判断された人が瞑想を行うと、ボランティアに参加する割合が減少することが判明したのです。

 

2つ目の実験では、研究チームは、325名の被験者が簡単なエクササイズを通して、自分の性格が自立的か相互依存的か、どちらの傾向が強いかを考えるように促しました。1つ目の実験と同様に、瞑想またはマインド・ワンダリングを行った後、被験者はチャリティー団体の募金に協力してくれそうな人とオンラインチャットを行う活動に参加するかどうか聞かれました。すると、自立的な性格に傾いた人ではボランティアに参加する割合が33%減少したのに対して、相互依存的な考えを好む人では参加の割合が40%も増えたのです。

 

この2つの結果から、瞑想は相互依存的な人の行動をより社会的にする一方、自立的な人は、人に頼らない傾向が強まることが示唆されたのです。前者は「集団主義」とも解釈できるのに対して、後者は、よく言えば「個人主義」、悪く言えば「利己主義」でしょう。いずれにしても、瞑想にはこのような側面があるようです。

 

あなたはどっち?

考え方や行動が瞑想によって利己的になったら、社会で生きていくうえでは損することもあるでしょう。瞑想によるデメリットを回避するためには、自分の性格が自立的か相互依存的かを知っておくことが大事です。

 

その指標のひとつが、自分自身の行動を表すときの言葉遣い。自立的な人は「私は〇〇をする」というように、1人称単数の主語を使う傾向があり、相互依存的な人は「私たちは△△する」のように、複数形の主語を用いることが多いそうです。

 

研究チームは文化的な考察も行っています。一般的に、欧米人は自分を自立した人間(個人主義的)と捉えるのに対し、アジア人は相互依存的(集団主義的)な人が多いと指摘しています。このような通説には異論もありますが、瞑想の作用は西洋人と東洋人の間でも異なる部分があるのかもしれません。

 

瞑想を客観的に分析し、そのデメリットを明らかにした今回の研究。「欧米のセレブやCEOの間で流行っているから自分もやる」という発想で、瞑想を無批判に取り入れることの危険性を指摘しているようにも思われます。