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2022/3/4 6:00

イタリアが感激! 方言と標準語の「バイリンガル」は頭が良い

近年、イタリアでは方言に注目が集まっています。英国・ケンブリッジ大学が以前に行った調査によると、標準語と方言を使いこなす人は記憶力などに良い効果が見られるとのこと。このニュースに、方言の使用率が高いイタリアは敏感に反応しました。同国ではコロナ禍により地方への移住が進んでおり、その言語的な影響に関心が寄せられています。

↑外国語を覚えるより、方言と標準語の“バイリンガル”を目指したほうが頭が良くなるかも

 

キプロスの言語に関する調査

バイリンガル教育には賛否両論がありますが、ケンブリッジ大学で応用言語を研究する科学者たちはその良い面に着目し、研究を行いました(※)。バイリンガル教育の長所として、生まれた時から2つ以上の言語の中で育った子どもは、1つの言語で育った子どもと比べて思考や行動を制御する認知機能が発達していることがよく挙げられます。同大学の研究者たちは、そのような効能は方言を話す人にも当てはまるのではないかと考え、調べることにしました。

 

調査の舞台となったのは、地中海東部に位置する島国のキプロス。ギリシア系、トルコ系、アルメニア系と多民族が混在する国で、研究チームは「現代ギリシア語」と「キプロス方言のギリシア語」の両方を使いこなす子どもたちが多いことに注目しました。実験では、現代ギリシア語とキプロス方言のギリシア語を使う子ども64人、バイリンガルの子ども47人、単一の言語を使う子ども25人を対象に、言語能力や知力などの調査を実施。

 

その結果、記憶力・注意力・思考力において、現代ギリシア語とキプロス方言のギリシア語を使いこなす子どもたちには、単一言語を使う子どもより高いポイントを得ました。この傾向はバイリンガルの子どもたちと酷似していたのです。

 

この調査結果はイタリアでもすぐに話題になりました。イタリア語の方言はだいたい北部と中南部に大別でき、標準語はフランスやスペインなど周辺国の影響を受けていない中央イタリアの言葉や語彙を指すとされています。

 

イタリアの政府中央統計局(IATAT)が2017年に公表したデータによれば、6歳以上の国民のうち家庭内で標準語のみを話す人は45.9%にとどまりました。一方、32.2%が方言と標準語を併用しており、さらに14%は方言のみで生活していることが明らかにされています(ちなみに、外国語のみを使用しているのは6.9%)。

 

このデータが示す通り、イタリアでは幅広い方言が使われており、フランスやドイツと国境を接する北イタリアや、ギリシアやアラブの影響を受けた南イタリアでは、標準語と比べて理解するのが難しい方言が話されています。例を挙げれば、ラディン語に影響を受けたといわれるフリウリ方言や、ヴァンダル人やビザンチン帝国の影響を受けたといわれるサルデーニャ方言など。

 

方言の効用

このような言語的な状況は、都市が政治的に独立して小国家を形成する「都市国家」としての時代が長かったイタリアならではといった感じがありますが、およそ半数の国民が方言と共に生活しているということで、ケンブリッジ大学の調査結果に注目が集まりました。同調査では、「共通語と方言を併用する人」の脳の能力については、さらなる研究の余地があるとも記されていますが、方言はアイデンティティーでもあるので、過小評価すべきではないと提言しています。

 

近年、在宅ワークの推奨などで地方への移住が加速しているイタリアでは、移住先の方言を日常的に使いこなす子どもが増えていく可能性もありそうで、ケンブリッジ大学の調査に再び注目が集まっています。イタリアのように、日本も英語ばかりでなく、標準語と方言の“バイリンガル”にもっと目を向けるべきかもしれません。

 

※University of Cambridge. (2016, April 27). Speakers of two dialects may share cognitive advantage with speakers of two languages. ScienceDaily. Retrieved February 22, 2022 from www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160427151051.htm

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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