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2023/9/12 6:00

DNA検査に賛否両論! 紛糾するフランスの「犬のふん」を片付けない問題

「美しい街並みに憧れて実際に訪れてみると、その汚さにうんざりする」と言われるほど路上放置されているフランスの飼い犬のふん。この問題に対してついに行政が本腰を入れ、マナー違反摘発に乗り出しました。賛否を呼ぶその対策とは?

 

公共空間の掃除は行政の仕事

↑やめろと言われても犬のふんを放置するフランス人

 

フランス人はペット好きで、都会で犬を飼っている人もかなりの数に上ります。そのため至る所に犬のふんを持ち帰るゴミ袋が設置され、場所によっては家に持ち帰らなくても済むように専用のゴミ箱まであります。さらに、公園や歩行者道路など公共の場所には、砂地でできた犬専用のトイレスペースも設置されています。

 

ところが、フランスでは近代までふん尿が道路に捨てられていたという歴史もあり、犬のふんに限らず公共空間の清掃は行政あるいは清掃業者が行うという考え方が根強く残ります。「個人が公共空間をきれいに保つ」という感覚が希薄なことが、ふん放置問題を引き起こしてきた原因の1つと言えるでしょう。

 

データで対抗も…

これまでもフランス全土では、警察官がふんを持ち帰らない人を見かけた場合や近隣住人からの通報があれば、罰金が科されていました。ところが、フランス南部のベジエ市は2023年7月から、さらに厳しい規制に着手。犬のDNA検査を飼い主に義務付ける条例が発令され、2年間限定で試験運用されることになったのです。

 

動物の権利や捨て犬問題対策のために、すでにフランスではペットのID登録を義務化していますが、ベジエ市では犬のID情報にDNAデータを紐づけるという方法を導入。かかりつけ獣医が専用キットで犬のDNAサンプルを採取して指定の研究所に送り、研究所が犬に番号を割り当てます。

 

もし飼い主がサンプル採集を拒否したりペットのIDカードを持っていなかったりした場合、38ユーロ(約6000円)の罰金が科せられます。飼い主が警察に犬のIDとDNA検査証明書の提示を求められて提示しない場合も、38ユーロの罰金。また、飼い犬のふんを放置すると、清掃料として120ユーロ(約1万9000円)の支払いを求められます。

※1ユーロ=約158円で換算(9月4日現在)

 

ベジエ市民やフランス国民の反応については、日頃からふんを放置しない人や犬を飼っていない人には賛成派が目立ちます。一方で、犬を飼っている人の中には「やり過ぎ」という反発の声も多く、賛否両論です。

 

ベジエ市長によれば、中心部だけで月に1000個以上のふんを回収しているとのことで、小さな町としてはかなりの数と言えるでしょう。マナーを守らない飼い主には罰則が必要との考え方は、どちらかと言えば推奨される雰囲気になりつつあるようですが、この実験がどんな結果を生むのか注目です。

 

執筆/Mayumi Folio