米国で、日本の「餅」は「Mochi」として広く知られており、ヘルシーという前向きなイメージで受け入れられています。アイスクリームやドーナツなどのスイーツ原料に使われ、人気商品として定着。日本とは一味違う、新たな価値を創造しつつあります。
米国でMochi(※)が広まることになったきっかけは、ロサンゼルスの和菓子店が1980年代に実験的に発売した「Mochi Ice Cream」が始まり。日本の「雪見だいふく」のようなもので、その後1990年代から各地で販売を開始し、米国全土へと拡大しました。それまでになかった食感とやさしい味で、今はスーパーに定番商品として並んでいます。
※米国における餅を指す場合、”Mochi”と表します
Mochi Ice Creamに続いてメジャーになったのは、日本でお馴染みの「ポン・デ・リング」のような形をした「Mochi Donuts」。こちらも1990年代に発売され、最近では米国中で販売されています。
従来のドーナツに比べると、餅ドーナツは甘さが控えめで、モチモチ感が楽しめます。今ではすっかり定番の食べ物となり、餅粉を使った手作りレシピがたくさん公開され、餅ドーナツ用の型も売られています。
国が違えば、価値も異なる
本来、餅米はお米なので、日本人は餅に対してあまりヘルシー感を持っていませんが、対照的に米国人はMochiにヘルシーなイメージを抱いているようです。
Mochi Ice Creamがきっかけで広まったためか、米国のMochiにはスイーツとしてのイメージが強くあります。確かにグルテンやコレステロールを含まないことから、Mochiはヘルシーな食品との評価を得ています。
一般のアイスクリームと比べて、カロリーは低めという見方も存在。Mochi Ice Creamが1つあたり約100キロカロリーであるのに対して、アイスクリームは350キロカロリー以上になるといわれています。
ただし、これはMochi Ice Creamの製造販売メーカーのウェブサイトでの説明で、一口サイズのMochi Ice Creamと市販のカップ入りアイスクリームを比べること自体、少々無理があるかもしれません。
米国は肥満問題を抱えていて、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)は現在、成人の41.9%、小児の19.7%が肥満であると報告しています。その主な原因として、貧困層にとって健康的な食生活は手が届かなかったり、多くの地域で新鮮な野菜や果物を入手することが困難であったりすることが挙げられています。そのため、多くの米国人は肥満に敏感で、口に入れる食品がヘルシーかどうかをとても気にしています。
「Mochiはヘルシー」というのは販売側のイメージ戦略による部分もあるかもしれません。それでも、ジャンクフードが蔓延る米国において総合的に見れば、確かにMochiは健康的といえるでしょう。
米国では「和食=健康的」というイメージが根強いことから、Mochiについてもそう考えられているようです。グルテンフリーやコレステロールフリーを歓迎する米国人は多いため、これらを武器にMochiを使った新たな食べ物が今後も登場するかもしれません。
執筆・撮影/福田マダール 有希子