日本ではすっかり定番となっている洗濯乾燥機。2023年の調査では、日本で洗濯乾燥機を持っている人は51.9%という結果が出ており、 その人気の高さがうかがえます。一方、米国ではいまだに洗濯機と乾燥機は別々でサイズも大きく、両方並べて置くとかなりのスペースになります。なぜ米国では便利な洗濯乾燥機が浸透しないのでしょうか?
日本と違って米国で洗濯乾燥機が浸透しない背景には、三つの理由が挙げられます。
1: 多機能型より特化型が好まれる
米国では、多機能を備えた家電よりも、一つの機能に特化した家電が好まれます。あれこれ機能がついていても使い切れない、それよりも一つの用途で優れたパフォーマンスを発揮して欲しい、との考えからです。米国人は必要な機能ごとに家電を買うので、家が家電だらけというのはよくある話です。
機能がシンプルだと、故障しにくいというメリットもあります。DIYの国の米国では、持ち物が壊れたら、まず自分で直そうとします。多機能型家電は構造が複雑ですし、修理に出せば値段も高くつきます。そのため、丈夫で直しやすい特化型家電が好まれるというわけです。
2: パワフル&大容量が必須
米国では、洗濯物を外に干す習慣がありません。ほぼ100%乾燥機に頼っているので、大量の洗濯物を一気に仕上げられるようなパワフルかつ大容量の乾燥機が求められます。
米国にも洗濯乾燥機はあるのですが、パワーが弱く、全工程が完了するまでおよそ3〜6時間もかかってしまいます。米国の洗濯機の平均稼働時間は50分〜1時間、乾燥機は45分ですから、洗濯物を移す手間がかかっても別々に買う方がいいと考える人が多いのもうなずけます。
また、米国の洗濯乾燥機は容量が少なく、平均1.5~5立方フィート(42.5~142リットル)程度です。一般的な洗濯機は平均5~5.8立方フィート(142~164リットル)、乾燥機は7~7.4立方フィート(198~210リットル)入るので、容量差があることも少なくありません(※)。
※一般的に日本の洗濯機の容量は、1回分で入れられる洗濯物の重さ(kg)を表示しているのに対し、米国では洗濯機に入る最大水量を表示します。
3: 置くスペースに困らない
ご存じの通り、米国の戸建ては広いので、洗濯機や乾燥機を置く場所に困りません。洗濯乾燥機専用の部屋がある家もありますし、ガレージに置いて使っている家もよく見かけます。米国では「省スペース」が売り文句にならないのです。
ニューヨークなど都市部の狭いアパートに住んでいるなら、洗濯乾燥機を検討する余地はあるでしょう。それでも、スペースの問題なら洗濯機の上に乾燥機を積み上げれば解決するので、洗濯乾燥機はなかなか選ばれないようです。
日本の洗濯乾燥機には、「省スペース・エコ・手間いらず」といった魅力がありますが、米国が求めるのは「シンプル・パワフル・大容量」です。ここまで違うと、洗濯乾燥機が米国で浸透しないのも納得ではないでしょうか。
執筆/長谷川サツキ