スウェーデン発祥の家具メーカー・イケアが、ホームレス経験者などに狭小住宅を提供するパイロットプロジェクトが米国で始まりました。狭小住宅といっても、イケアがデザインしただけあって、コンパクトなのにおしゃれな住宅ができあがっています。
住宅価格の高騰によって、ホームレスが増加している米国。そんななか、イケアは「1回限りの寄付ではなく、より戦略的な方法でコミュニティと協力する方法を模索していた」と言います。そこで、地元の建築企業と協力して、テキサス州サンアントニオのコミュニティに家を建てるというプロジェクトを始めたのです。
このコミュニティはドライブインシアター跡地を利用したもので、最終的には約200軒の狭小住宅やアパートが建設されるほか、レクリエーショナル・ビークル(アウトドアやレジャー向けのクルマ)が導入される予定。このコミュニティに移り住めるのは、少なくとも1年間ホームレス生活を送り、慢性疾患などがあって、ホームレス向けの支援施設で生活してきた高齢者です。
イケアが作る狭小住宅は、34平方メートルの1LDK。室内の空間を最大限に活用できるよう、ビルトインで家具が作られています。また、ホームレス生活を送ってきた人により安心した住まいを提供できるよう、再トラウマ化するリスクを軽減する「トラウマ・インフォームド・デザイン」を採用。例えば、あえて窓は小さめにすることで安心して生活できるような配慮がされています。
また、狭小住宅でありながら、バスルームには浴槽を設置。ホームレス生活者は、シェルターにあるシャワー室しか利用できないことが多いと言い、浴槽に座ってゆったりとする時間を感じてほしいと、ここにもホームレス生活者への配慮がなされています。
イケアらしいデザイン性と、そこに暮らす人の背景への配慮。このコミュニティには、すでに約70人が入居し、今後2か月でさらに60人ほどが引っ越してくる予定だそうです。
【主な参考記事】
Fast Company. Inside Ikea’s thoughtfully designed tiny house. October 30 2024
IKEA. IKEA U.S. Donates Trauma-Informed Design Small Home to Towne Twin Village in San Antonio, Texas. October 29 2024