マスク不足が解消されつつある今ですが、そうなると今度は「どんなマスクが良いか」「こういうマスクを使いたい」「こういうマスクは使いたくない」と人それぞれこだわりが出てくるものです。
そんな中、特にビジネスパーソンから絶大な支持を得ているのがシャツメーカー・東京シャツが開発したマスク。マスク不足の真っ只中、いち早くシャツの素材を使い販売を始め話題になりましたが、今回は改めてシャツ生地を使ったマスクの秘密について、同社・川上智明さんに聞きました。
実は2月から始めていた、「シャツ生地マスク」開発
ーー今年3月から4月頃は、新型コロナウイルス感染拡大でマスク不足が深刻でした。そのようななか、いち早く異業種でありながらマスク製造に取り組んだのが東京シャツでした。
川上智明さん(以下、川上) もともと弊社はシャツのアパレルとして創業し、百貨店さんに商品を卸していました。その後、今から20年前ほど前よりSPA業態(衣料の企画、製造、小売までを一括して行うアパレルのビジネスモデル)に事業転換し、現在に至っています。つまり、クイックに商品を製造し、お客さまにお届けできる体制を自社で持っています。
当初は、弊社の従業員の感染を防ぐためにシャツ素材でマスクを作ろうとスタートしました。ちょうど2月頃、ダイヤモンド・プリンセス号で甚大な数の感染者が出ましたよね。この頃はまだマスク不足はそこまでではなかったのですが、少しずつサンプルを作って商品化を考え始めていました。
弊社の自社工場は千葉県松戸市にあるのですが、3月から本格的な製造を始め、4月6日から販売し始めました。メディアで取り上げていただく前、1万セット分の予約の受付をできるようにしたのですが、初日に全部完売してしまいました。これはあくまでも予約でしたので、実際にお客さまのお手元に届くのは5月の中旬。その分の生産を必死にやっていたのが4月でした。ようやく今は落ち着いてきて、ご注文を受けたらすぐにお渡しできる状態になりました。
「シャツ生地」がマスクに向いていた理由
ーーこの間、様々な異業種の企業がマスク開発を始めていましたが、シャツ地が特にマスクに適している点を教えてください。
川上 弊社で使っているシャツは全て綿100%生地中心なのですが、まず重すぎないところが適していると考えています。「では軽ければいいのか?」と言うとそうではなく、軽すぎると着用感も悪く飛沫が外に出てしまったりして、要件に足りません。「適度に重さがあり、でも、重すぎない。さらにつけ心地も良い」という機能を持ったシャツ地が、マスクにも向いているのではないかという仮説のもと作り始めたのですが、これがピッタリハマったということです。
また、弊社のマスクには表面にシャツ地を使用し、内側にはガーゼ生地を使用しているのですが、このことで見た目が良くなった。例えばガーゼのみのマスクですと、見た目がドレッシーに見えないんですよね。今はフォーマルな場でもマスクを使う機会が増えていると思いますが、そういった場合にも違和感なく使っていただけるのがシャツ地なのではないかと思っています。
ーーさらに、形態安定の生地を使われていますね。
川上 もともと東京シャツはシワがでにくい形態安定のシャツ地ですので、ご家庭で洗濯していただいても形態が崩れにくいのも利点でした。洗濯方法は手洗いを推奨しています。
弊社のシャツは50~100回は洗濯して繰り返し使えるものですが、同じ回数を、このシャツ地のマスクも使えるということです。シャツ同様、縫い方も丁寧に施しているので、糸のほつれなども出にくくなっています。