ライフスタイル
2025/2/19 18:30

連載最終回「半径3mにスーパースターがいるってことに気づく目線を持ってほしい」玉袋筋太郎が出会った日本文化の担い手たち。

〜玉袋筋太郎の万事往来
最終回 玉袋筋太郎が連載を振り返る

 

全日本スナック連盟会長を務める“玉ちゃん”こと玉袋筋太郎が、新旧の日本文化の担い手に話を聞きに行く連載企画も今回が最終回。過去32回の対談で、印象的なエピソードや、この連載を通して学んだことなどを玉ちゃんが総括します。

【玉袋筋太郎の万事往来】記事アーカイブ

 

 

連載で会った人たちに前向きに考えさせてもらってパワーをいただいた

──この連載が始まったのは2020年6月でした。

 

玉袋 そうだよね。コロナ禍で世の中真っ暗闇の中で始まったから、最初はそういう話題が多かったけど、みんな生き延びているというか、ちゃんと続いているところがすごいよ。『町中華で飲ろうぜ』(BS-TBS)だとさ、コロナ禍をきっかけに高齢だから辞めちゃうお店が結構あったりしたのよ。俺自身、お店もきつくなっちゃった時期だったから、この連載で会った人たちには前向きに考えさせてもらったな。へこみそうだったけど、皆さんとお仕事させてもらうことによって、へこんでられねえなってパワーをいただいたんだ。

 

──これまで32回を数える連載なので、全てを振り返るのはスペース的に難しいということで、ピックアップして振り返っていただきます。1回目は明治時代から大森海岸で営業している老舗芸妓置屋「由の家」の女将・のぼるさん

 

玉袋 今のご時世、置屋のシステムは知られていない文化じゃないですか。そこからスタートしたことに、この連載の意義があったのかなと思うよね。のぼるさんは言ってみりゃ日本の浮き沈みを見てきた歴史の証人だからね。このままだと、ああいう文化は途絶えちゃう訳だから、土俵を割らないでやっているところが素敵だよ。

 

──一時期はアメリカ人の芸者さんも在籍したと仰っていましたよね。

 

玉袋 そうだそうだ。いち早くグローバル化を取り込んでいたということだよな。古い稼業だけど、先見の明があったんだ。

 

──2回目は世界に羽ばたく「TENGA」の松本光一社長

 

玉袋 オナニーの補助道具を、ちゃんと理念を持って作っているところがいいんだよな。昔の大人のおもちゃみたいに安っぽいものじゃなく、本当に求められているものを研究開発して出しているところに感じるものがありましたよね。どうしても変な目で見られちゃう業界だったけど、今やドラッグストアの棚に堂々と陳列できるようになって、日の目を見た。それで言うと3回目でお会いした靴磨き職人の長谷川裕也社長も、すごいところに着目したよね。もともとはガード下の靴磨きの世界じゃない。

 

──南青山に靴磨き専門店「Brift H(ブリフトアッシュ)」を開業しています。

 

玉袋 俺たちの世代だと、新宿の駅前にいた靴磨きの家族だとかさ。靴を見れば人が分かるっていう根底にあるものを、しっかり商売にして。TENGAが大人のおもちゃから進化したように、靴磨きというものを表立って世に出したんだからね。世界大会でも優勝してるし、日本人の誇りだよね。この取材の後、靴じゃなくてカビだらけになっていた革ジャンを持って行ったら、すげーきれいにして返してもらったよ。

 

──お店もきれいでしたが、長谷川社長もおしゃれな方でした。

 

玉袋 ジェントルマンでかっこよかったよね。そういうイメージも大切だよ。そんな長谷川社長も最初は東京駅や品川駅でやってたというストーリーもあって、まさに自分を磨き上げたというか、靴も磨き、自分も磨き、業界自体をピカピカにしているというイズムが素晴らしかった。長く靴を大事に履くというのも、使い捨て文化のカウンターだよね。

 

──4回目は恵比寿横丁を拠点に流し歌手として活躍する傍ら、約50名からなる流しグループ「平成流し組合」を運営するパリなかやまさん

 

玉袋 流しも絶滅危惧種という存在の中、新しい形態で流しの共同体を作るというアイデアも良いし、なくちゃならないものを残すという姿勢は立派だよ。流しから日本の歌謡界が出来上がっていることも考えると深いよね。ストリートミュージシャンからトップアーティストになった人たちもいるけど、やっぱ俺の基本は昭和だからさ。昭和42年生まれとしては、流しの文化にロマンやエレジーを感じる。それがギターの音色にも比例していくんだよね。小さい頃から流しをやっていた藤圭子がいなけりゃ、宇多田ヒカルもいなかった訳だし。底辺拡大のためにも、流しっていう文化は流されちゃいけないよ。

 

──5回目は東京23区で唯一の酒蔵を営む「東京港醸造」から、取締役会長の斎藤俊一さんと、同社の代表取締役で杜氏の寺澤善実さんに登場していただきました。

 

玉袋 東京港醸造さんはメディアで取り上げられることも多いし、どんどん注目度も高まっているよね。俺のやってるラジオでも取材していたし。古くからある酒蔵の町とかも風情があるけど、都内に酒蔵があるなんて信じられないもん。その逆張り感がいいよね。あと水道水で作っているというのも、東京の水が美味しいって実証になってる。日本酒の海外需要も高まっている中、こういうことがきっかけで若い奴が日本酒に戻ってくると面白いんだけどね。そういう意味で言うと、6回目の和菓子も日本酒に通じるものがある。老舗の和菓子店が減っている状況の中で、和菓子のスポークスマンとして全国を駆け回る畑さんは立派だよ。

 

──髙島屋全店の和菓子バイヤー・畑 主悦さんですね。

 

玉袋 和菓子もさ、あれだけ若い奴がコンビニスイーツを買ってるんだから、こんなのがあるんだぜって気づいたら、みんな飛びつきそうなジャンルだよね。見た目もかわいいし、四季折々の花鳥風月も入っている商品もあるしね。そりゃあコンビニスイーツもレベルは高いけど、もっと和菓子に興味を持つ若い子が増えてもいいと思うんだ。

 

裏方の人にスポットライトを当てる日本はすごい

──10回目の節目は『仮面ライダー』シリーズや『スーパー戦隊シリーズ』を中心に、数多くの特撮作品でスーツアクターを演じてきたレジェンドの岡元次郎さんです。

 

玉袋 この対談は、「岡元さんと対談したんですか!?」って周りからの反響も大きくて、改めてスーツアクターのすごさを実感したね。『ウルトラマン』の中に入ってた古谷 敏さんが、俺も出させてもらってる「マムちゃん寄席」を必ず観に来るんですよ。まむしさん(毒蝮三太夫)も『ウルトラマン』に出てるし、『ウルトラセブン』では同じウルトラ警備隊の仲間で、二人はその頃からの繋がりなんだ。古谷さんも世界的なスターだから、海外に行ってサイン会や握手会をやっているんだよね。ご高齢だけど、まだまだ元気で、もちろんマムちゃん寄席の楽屋に来るときは普通の格好だけど、今も体のフォルムはウルトラマン。そうやってスーツアクターというジャンルが確立されていて、裏方の人にスポットライトを当てる日本はすごいよね。

 

──11回目は昭和22年創業の駄菓子問屋「大屋商店」店主の大屋律子さんです。

 

玉袋 日暮里の駄菓子問屋街で唯一残っているところだよね。俺のばあちゃんも駄菓子屋だったから、女将さんとの対談は懐かしい気持ちになった。駄菓子屋もどんどんなくなっちゃって、コンビニとか、スーパーの駄菓子屋コーナーでしか扱われなくなっている。そこには梅ジャムなんかはないので、いろいろ考えさせられるよ。ズルチンやサッカリンみたいなものをガキの頃に食べてたから強くなったんだって、こないだ町田 忍さんとも話したんだけどさ(笑)。駄菓子屋経験があるかないかで、大人になってからのライフスタイルもずいぶん変わるような気がするよ。駄菓子で育ってきた奴らって、居酒屋選びにしてもチェーン店には行かねぇぞみたいな大人になる。今の若い子どもたちはかわいそうだなと思うところもあるよね。だからこそ逆張りすれば流行るかも知れないし。そういう意味で言うと、12回目で行ったポレポレさんにも通じるものがあるよね。

 

──ミニシアター「ポレポレ東中野」代表の大槻貴宏さんですね。

 

玉袋 こういうスタイルでやる映画館も少しずつ増えているけど、何かに特化した映画って、こっちも求めているもんね。やっぱシネコンでやってる超大作ばかりだと飽きるしさ。どの映画をかけるかっていうこと自体が博打で、ドキュメンタリー作品を中心に社会的なテーマを持った映画が中心のプログラムで、博打に勝っているポレポレさんには可能性を感じるよ。こうやってマニア心を満たしてくれる劇場があるのはいいよね。

 

──13回目は世界的な盆栽職人の小林國雄さんで、江戸川区にある春花園BONSAI美術館にお伺いしました。

 

玉袋 江戸川区から世界に発信してるんだもんね。外国人の弟子もいたし。小林さんは達観していて、俺が俺がってところがないんだよね。かといって商魂たくましいって感じもしない。すごい人なのにも関わらず、ものすごくフランクに話してくださる。職人を突き詰めるとああいうふうになるのかね。本質は頑ななのかもしれないけど、それを前面に出さないでやってるところに粋を感じたよ。

 

──イメージですが、盆栽の世界はうるさ型が多そうですもんね。

 

玉袋 そうそう。入り口はカジュアルに行けるかもしれないけど、奥が深い世界だからね。俺みたいに何度か盆栽にチャレンジして、失敗した人間からすると、なかなか手が出せないなって思うけど、一見お断りという感じは一切なかった。

 

──15回目は東京・北区の滝野川にある「稲荷湯」の5代目・土本公子さんで、大正3年創業の老舗銭湯です。

 

玉袋 お風呂屋さんも大変だよね。薪が使えなくなって、今はガスになったとか、稲荷湯さんの一存で値段を上げられないとか、いろいろ聞いたんだ。そりゃあ銭湯もなくなっていくよ。あと、この連載で何がうれしかったかって、番台に座れたことだね。営業中だったら、なお良しだったけどさ。女将さんが小さい頃から番台に座らされて、同級生の男の子にからかわれて、「番台党の覗き見子」というあだ名を付けられたのも良いエピソードだった。

 

──番台がある銭湯は希少ですからね。

 

玉袋 昔ながらの文化を残していく銭湯もあるけど、やっぱり新しくしていかなきゃいけない。サウナブームでリニューアルしてブレイクした銭湯もあるけど、どちらにロマンを感じるかといえば、俺は稲荷湯さんにロマンを感じるよね。ブームはブームでいいんだけど、どこも右へならえだからさ。

 

──昔から銭湯に通っている人からすると、そういった今風の銭湯は逆に敷居が高くなっているかもしれません。

 

玉袋 時代に流されず、地元の人たちが必ず来るんだよっていう銭湯をキープしてるのは良いことだよ。俺が今住んでる家の周りの銭湯が軒並み潰れちゃって、一軒しか残ってないんだ。じゃあ、もともと銭湯に行ってた人たちがどこに行ってるかと言ったら、スポーツクラブなんだよね。しかも月額会員だったら銭湯代より安いんだ。だから近所のスポーツクラブはジジイ・ババアだらけ(笑)。そりゃあ時代によってリニューアルしなきゃいけないかもしれないけどさ。俺が、国立競技場が新国立競技場になったときにずっと怒ってたのは、国立競技場まんまで中を綺麗にすればいいじゃんということだったんだ。そういうことをやれば文化も残っていく。いきなり全とっかえはないよ。銭湯も今は煙突を作れないんだし、世界遺産にすべきは銭湯だと思う。そっから『テルマエ・ロマエ』とかに広がっている訳だしね。

 

『たまむすび』の放送10周年記念イベントで感じた縁

──17回目は、文久元年の創業以来、太鼓・神輿・祭礼具の製造と販売を行う「宮本卯之助商店」営業部の田口なみさんです。

 

玉袋 対談後に、生まれたばかりの孫のために宮本卯之助商店さんで玩具太鼓を買ったんだけど、ようやく今は孫も自分でポコポコ叩けるようになったよ。対談記事が2022年5月の公開だったけど、同じ年の9月22日に『たまむすび』(TBSラジオ)の放送10周年を記念したイベント『たまむすび in 武道館 ~10年の実り大収穫祭!~』で、外山(惠理)アナと和太鼓を披露したんだ。そのための稽古で、宮本卯之助商店さんの稽古場を借りたんだよね。ちゃんと和太鼓の先生についてもらって、北島三郎の「まつり」をバックに高田延彦の男祭りみたいにドンドコ大太鼓を叩くんだけど、1曲叩くとヘトヘトで。あれほどつらい練習はなかったね。マラソンをやっていたので持久力には自信があったんだけど、あれはしんどかった。当日も宮本卯之助商店さんにお願いして、武道館まで大太鼓を運んでもらったんだけど、それを叩けたのも縁を感じたね。

 

──当時はコロナ禍の影響で、三社祭も開催できない状況でした。

 

玉袋 何年もまともにお祭りができなかったんだから相当なダメージだったろうね。それが元に戻ったから良かったよ。

 

──19回目は五ツ星お米マイスターの資格を持ち、こだわり米専門店「スズノブ」を経営する西島豊造さん

 

玉袋 面白い人だったよね。いつも食べているお米なのに知らないことばかりで、米業界のこともバッサバサ斬って。こういう異端児というか、ちゃんと本音を言える人がいないと業界が駄目になるんだ。もっともっとメディアに出てほしいよね。実際、ここで食べさせてもらったお米は、どれも美味しかったしね。ロクに咀嚼もしねえで、ただ流し込んでいるご飯とはまた違う深みがあったよね。

 

──21回目は、食品サンプルのパイオニアで業界ナンバー1のシェアを誇る「イワサキ・ビーアイ」からビーアイファクトリー横浜の工場長・宮澤宏明さんと、広報の黒川友太さんに出ていただきました。

 

玉袋 『町中華で飲ろうぜ』のオープニングで、店先のサンプルを見てしゃべるんだけど、このときの対談で、ものすごく知恵をもらったんだ。「どうして日焼けしているかと言うと買い取りだから。きれいなところはリースなんです」なんて話も非常に面白かった。年に一度の社内コンクールで職人同士が腕を競い合うなんて話も、実物を見せてもらいながら聞いたのもあってワクワクしたよね。あと大量生産するファミレスの食品サンプルにしても、実際に料理を工場まで持ってきて、それを型取りするというのも初耳だった。3Dプリンターじゃねえんだってのが新鮮だった。もともと外国には食品サンプルの文化がなくて、日本発祥というのも驚きだよね。そりゃあ外国人がお土産で食品サンプルを買っていく訳だよ。

 

──23回目は、ミニチュアを使用した特殊撮影を中心に、映像・展示作品などの美術制作を一手に請け負うマーブリンググループから、「マーブリング・プランニング」の美術デザイナー・木場太郎さんと、代表取締役・岩崎敏子さんにご登場いただきました。

 

玉袋 ここも面白かった。実際にジオラマをセッティングしてくれて、俺の名前やGetNaviの看板まで作ってくれたじゃん。マーブリングさんのミニチュアを間近で見させてもらったことでさ、孫と一緒に『ウルトラマン』を見返したときに、こういう風に作っているんだなって想像力が働くんだよね。ビルを丸ごと作っている訳じゃなく、ある部分はハリボテなんだけど、カメラの画角を通すと、ちゃんとビルに見えるんだよね。これには感動した。プロフェッショナルの仕事だよ。

 

リスペクトと誇りを持ってやっている姿に感動

──25回目は、実演販売のエキスパートを多数擁する「コパ・コーポレーション」の代表取締役・吉村泰助さんで、目の前で実演販売も披露してもらいました。

 

玉袋 結局テレビの広告で生き残るのは実演販売かACジャパンかって言われているぐらいでね。昼間のBSなんて、ほとんどテレビショッピングじゃない。大抵、司会が中野珠子で、パネラーに元巨人の宮本だとか久本雅美の妹がいたりしてさ。いや、強いよ。その中に実演販売のプロフェッショナルが出てきて、見事な口上を見せてくれる。ああいうのも秋葉原デパートの前にいた包丁研ぎなんかと繋がっていたのが非常にうれしかった。ルーツは香具師だからね。それが形を変えて、こうやって生きていて、しかも売れているんだから立派な文化だよ。香具師は神社の境内とかで、目の前に集まった20人程度を相手に売ってるけど、ネットだテレビだって何千万人を相手にできるんだから、そりゃあすごい会社になるよ。

 

──27回目は「方南町お化け屋敷オバケン」を運営する株式会社HLCの代表取締役、オバケンさん

 

玉袋 方南町全体をお化け屋敷にするのも、とんでもないアイデアだよね。まさに猪木イズム。これからも、どんどんオバケンは伸びていくよ。実際に見学させてもらった肉屋なんて、知らなかったら本物のお店だと思う。俺は怖がりだから行かないけど、そういうのが好きな人には勧めてるもん。

 

──過去にはサンリオピューロランドや、鹿島アントラーズのスタジアムなどとコラボしたお化け屋敷イベントを開催したと仰っていました。

 

玉袋 対談でも言ったけど廃墟や廃坑した炭鉱とかでやるのも面白いよね。権利関係なんかの難しさもあるだろうけど、そのほうが健全だよ。放っておくと地元の暴走族なんかに入られて、火を付けられたりするんだからさ。

 

──28回目は、千葉県浦安市の鮮魚店「泉銀」(いずぎん)の3代目店主であり、フィッシュロック・バンド「漁港」(ぎょこう)のリーダーでもある森田釣竿さん

 

玉袋 この対談を機会に付き合いが始まってさ、釣竿くんは毎日入荷した魚をSNSに上げているけど、それを見て本人にダイレクトメッセージを送って、通販で買ってるんだ。この間もクジラをごっそり買った。釣竿くんはサービス精神旺盛だから、『ギョギョッとサカナ☆スター』(NHK Eテレ)なんかでは色物をやっているけど、鮮魚店に誇りを持っているのがいいんだよね。立派な男だよ。俺は大好きだな。

 

──29回目は、神奈川県相模原市で中古のタイヤとホイールの販売店「中古タイヤ市場」を運営する一方で、店舗の側で100台以上のレトロ自販機を稼働させている有限会社ラットサンライズ社長の斎藤辰洋さん

 

玉袋 たとえば自販機のうどんって全国一律で同じ味だと思っていたら、全部違っていたというのが面白かったよね。あそこでオリジナルのうどんを作ってるんだもんね。自販機と聞くと画一化しているかと思いきや、各々の味があるからこそ、あれだけ繁盛してるんだろうね。自販機にしても治安の良い日本だからこそ成り立つ文化で、海外からしたら金庫が置いてあるって認識なんだから。自動車屋らしく、ちゃんと昔の自販機をレストアしているところもかっこよかった。自販機を通して、クラシックカーを大事にしない日本にカウンターを打ってる感じがしたね。

 

──31回目は東京都葛飾区立石にある證願寺(しょうがんじ)の17代目住職で、境内に作ったプラネタリウム「プラネターリアム銀河座」の館長も勤める春日了さんです。

 

玉袋 良い意味で一番癖のある人だったね。どんなことにも一家言あって、あらゆる意見に対して論破できる見識がある。あの知識量は半端じゃないよ。これからのプラネタリウム業界をどうするのかという問題提起もあって、プラネタリウムの常識を覆されたね。

 

──ラストの32回目は合羽橋道具街で、飲食店で使う業務用商品を扱う4つの専門店を展開する高橋総本店グループ「TAKASO」の代表取締役社長・髙橋亮さん

 

玉袋 最初の話に戻ると、メインの客層が飲食店のTAKASOさんは、コロナで大変苦労したと思うんだ。そこは俺も経験したことだからさ。対談のときに、おしぼりを例に出して安物は使わないとか、業者との繋がりを大切にしていることなどを話したら、賛同してくださったのがうれしくてね。あと何でも大量生産を良しとする今の世の中の流通に対して危機感を持っていて、職人を大切にするとか、リスペクトと誇りを持ってやっている。そこに感動したよね。改めて日本の技術の高さに気付かせてくれたな。

 

──最後に、この連載の総括をお願いします。

 

玉袋 それぞれ業種は違うけど、気概を持ってやっている人たちばかりで、教わることも多かったし、皆さんとのシンクロ率も高かった。この連載がなくなっちゃうのは寂しいんだけど、こういう人たちと出会いたい、こういうところの商品を大切にしたい、こういうふうな人たちになりたいなど、これからの芸風や生き方のヒントにもなったし、実際仕事にも活きている。もう感謝しかないね。あと対談のたびに思ったのは、この人たちの思いを伝えたいということ。大谷翔平みたいなスーパースターにスポットが当たりがちだけど、実は表に出てなくてもこれだけすごい人たちがたくさんいる。読者の皆さんには、半径3mにスーパースターがいるってことに気づく目線を持ってくれたらうれしいね。

連載を終えて

2020年の春、世界がコロナで大打撃をうけている中、取材スタートしたこの連載は特別な思いで続けて参りました。

日本独自文化や企画で頑張ってらっしゃる方に取材ご協力をいただき、玉さんの巧みなトークで、各ジャンルで活躍されている人達の魅力が伝わったと信じております。

4年間ご協力いただいた皆様、スタッフ、ライター猪口さん、そして毎回素晴らしい切り口でこの企画を盛り上げていただいた玉袋筋太郎様

本当にありがとうございました。

 

編集企画  丸山剛史

 

玉袋筋太郎

生年月日:1967年6月22日
出身地:東京都
1987年に「浅草キッド」として水道橋博士とコンビを結成。
以来、テレビ、ラジオなどのメディアや著書の執筆など幅広く活躍中

<新刊情報>

「美しく枯れる。」著書:玉袋筋太郎

定価: 1,760円 KADOKAWA刊

仕事の人間関係、夫婦仲、家族構成にも変化が訪れた波乱万丈な50代。
「時代遅れ」な昭和の粋芸人が語り尽くした、
悩めるすべての大人たちに捧ぐ、人生後半戦の歩き方。

一般社団法人全日本スナック連盟会長
スナック玉ちゃん赤坂店オーナー(港区赤坂4-2-3 ディアシティ赤坂地下1階)

<出演・連載>

TOKYO MX「バラいろダンディ」
BS-TBS「町中華で飲ろうぜ」
CS「玉袋筋太郎のレトロパチンコ☆DX」
夕刊フジ「スナック酔虎伝」
KAMINOGE「プロレス変態座談会」

 

構成・撮影/丸山剛史 執筆/猪口貴裕