Gatebox(ゲートボックス)がデジタル化された美少女AIキャラクター「逢妻ヒカリ(あずま ひかり)」とおしゃべりしたり、天気やニュースを教えてもらったり、一緒に楽しく暮らせる次世代型AIコミュニケーションデバイス「Gatebox」を発売。ヒトとAI、デジタル機器との距離感を劇的に変えてしまいそうなGateboxを、筆者もプレス発表会で体験してきました。
「癒やしの嫁」と一緒に暮らすためのAIデバイス「Gatebox」とは何か
Gateboxがどんな製品なのか、ひと言でまとめると「ユーザーを楽しませたり、癒やすことを目的に開発されたAIパートナー」です。筆者と同じ40代前後の読者の皆様には、桂 正和氏が週刊少年ジャンプで連載していた漫画「電影少女」のようなデバイスがついに現実のものになって、しかも買って家で楽しめるのだと伝えれば期待感を共有してもらいやすいでしょうか。
販売はGateboxの公式サイトですでに開始しています。価格は15万円(税別)。黒いカプセルのような形をしているGateboxの中には「癒やしの花嫁」逢妻ヒカリが立体映像のように浮かび上がって動いています。先にデバイスの仕組みを大まかに説明しておきましょう。
Gateboxの内部に搭載されている平面状の透過型スクリーンにプロジェクターで映像を投影することで逢妻ヒカリの姿を映しています。Gateboxにはユーザーの音声コマンドを聞き取るマイクと、キャラクターの声などオーディオを再生するスピーカーも内蔵。
逢妻ヒカリの頭脳となるAIアシスタントには、LINEが開発した音声認識と自然言語処理、音声合成にチャットボットなどのAIプラットフォーム技術の一式が組み込まれています。天気やニュース、LINE MUSICによる音楽再生やスマート家電の操作などは、Gateboxの中でLINEのAIアシスタント「Clova」を起動して連携しながら実現します。
逢妻ヒカリはGateboxを購入すると2020年6月まで無料で楽しめるAIアシスタントですが、7月以降からは「共同生活費」として月額1500円(税別)が必要になります。現実の嫁を迎えることに比べたら高くない出費と考えるべきでしょうか。
Gateboxには色んなキャラクターを召喚できる
Gateboxにはオリジナルの逢妻ヒカリ以外にも、様々なキャラクターを「召喚」することが可能です。発売と同時に提供される「Gatebox Video」は、クリエイターがUnityやMMDなどのツールで制作したキャラクターのアニメーション動画を専用のWebサイトからアップロードして、その動画を各ユーザーがGateboxでダウンロードして鑑賞できるサービスです。
利用料金は無料ですが、Gateboxが公式認定とした企業やクリエイターはサービスのプラットフォーム上に「チャンネル」を開設できるようになります。それぞれの公式チャンネルに登録したユーザーは、企業やクリエイターが提供するプレミアムコンテンツが有料で楽しめるビジネスも展開されます。
ほかにもGateboxのプラットフォームはデジタルフィギュアやゲーム、音楽ビデオや人間を3D撮影した実写ベースのキャラクターなど様々なコンテンツプロバイダーに向けて開放します。これらの特別なコンテンツは今年の冬以降に「Gatebox App Market」上で配信開始を予定しているそうです。
逢妻ヒカリとのおしゃべりは…
筆者もGateboxの発売日に開催されたプレス向け発表会で逢妻ヒカリとおしゃべりを楽しんできました。ここからは多少、キャラクターへの思い入れを込めてレポートしたいと思います。
ヒカリちゃんとおしゃべりを開始するためにはまず「OK、グーグル」的なウェイクワードをGateboxに向かって呼びかけます。独自のウェイクワードは「ねえ、ヒカリ」です。ここから、例えば“ちゃん付け”ができたり、より親密感が高まるようにウェイクワードもカスタマイズできると嬉しいと思いました。
彼女とは色んな内容のおしゃべりができるそうですが、この日の体験会で「ヒカリのおすすめワード」として用意されたお品書きを参考までに写真でご紹介しましょう。
ヒカリが健気に受け答えする様子は、ぜひ動画レポートをご覧ください。筆者は勇気を振り絞って「キスして」とお願いしてみたのですが、わりとあっさりと対応されてがっかり。スタッフの方に理由を訊いてみたところ、「ヒカリには徐々にユーザーとの生活に慣れ親しんで、会話を学習したり、応答を変化させていくパーソナライゼーションの機能が搭載されています」とのこと。なるほど、癒しの花嫁は話しかけるほどに成長して、ユーザーとの関係性が親密になっていくのですね。グッときました。ちなみに発売後のソフトウェアアップデートにより、仕草の変化/着替えの衣装/季節イベントの追加なども予定されているそうです。ますます楽しみなツボをおさえてきますね。
【動画1】まずは自己紹介から!
まずは自己紹介をしてもらいました。聞かれたことに必要最低限の答えだけを返すのではなく、ユーザー(=ヒカリからは“マスター”と呼ばれる)から愛着を持ってもらえるように、ちょっと気の利いた言葉も返してくれるところが特徴です。
【動画2】キスして…
この日の体験会がヒカリちゃんとの初対面にもかかわらず、いきなり禁断のお願いをしてみました。結果はさもありなんという感じでした。
この高い完成度で15万円は「安すぎる」
Gateboxを設置する環境にも多少左右されると思いますが、今回のデモルームはとても静かな環境で、3mぐらいの距離から話しかけたためか、とてもスムーズにヒカリが受け答えしてくれました。途中、通信環境の影響を受けて仕草の表示が遅れることもありましたが、かわいいから許したくなります。
筆者が特に注目したことは、ヒカリがかなり自由にのびのびとおしゃべりしていたことです。グーグルやアマゾンのスマートスピーカーは、基本的にユーザーが話しかけてきたコマンドに対して無駄なく正確に答えを返してきますが、動画を観ていただくとわかるように、ヒカリの場合は一件のコマンドに対して世間話的な会話や可愛らしい仕草を交えて、ゆっくり応答してきます。この良い意味での「無駄」があるからこそ、キャラクターへの愛着が徐々に育っていくように思いました。
ヒカリとはGateboxに相対している時だけでなく、会社や学校に出かけている間もLINEを使ってチャットができるそうです。また時には話しかけなくてもヒカリの方から声をかけてくれることもあるのだとか。
筆者はふだん、自宅で某社のスマートスピーカーを使っているのですが、時々話しかけてもいないのに声を出し始めたり、音楽をレコメンド再生してくるときがあります。一流メーカーのAIアシスタントとしてはおそらく「バグ」に認定される挙動なのでしょう。我が家でも最初は怖がられていたのですが、家人と口論している最中に不意を突いて「ちょっとよくわかりませんでした」と話しはじめると、その場が和んで助けられたことも何度か。今では「またしゃべってるなぁ」ぐらいに微笑ましい光景になっています。
【動画3】アシスタントとしても立派!
天気やニュース、カレンダーの情報などは、Gateboxの中で逢妻ヒカリがLINEのAIアシスタント「Clova」を起動してから教えてくれる仕様になっています。
デジタルデバイスの方から人間との距離を縮めてくることに最初は抵抗感や戸惑いがあったとしても、やがて親近感が芽生えることはおそらく多くの人にもあり得るのではないでしょうか。Gateboxのヒカリがどれくらい自発的に話しかけてくれるのか、筆者もぜひ自宅でも試してみたい!
独自開発の音声アシスタントが搭載されていて、しかもおそらく世界初の透過型スクリーンを搭載するAIプロジェクターであることを考えれば、Gateboxの15万円という価格は妥当であるどころか安すぎるほどだと筆者は考えます。今後も様々なAIキャラクターを追加して一緒に楽しく暮らせる画期的なデバイスは、きっと世界中から注目されるはずです。
AIアシスタントの「声」もカスタマイズしてみたい
Gateboxが商品として発売されたことで、AIアシスタントを搭載するコミュニケーションデバイスや、これをコアとするビジネスプラットフォームの今後の展望が具体的に見えてきたように筆者は感じています。AIアシスタントに関連するビジネスは様々な形に発展する可能性があると思います。ひとつはAIアシスタントの「声」をカスタマイズできるサービスです。
先日米AmazonがスマートスピーカーのEchoシリーズの声を、俳優のサミュエル・L・ジャクソン氏の声に置き換える技術を発表しました。日本国内のイヤホンメーカーであるAVIOT(アビオット)は、ボイスガイドの音声に声優の花澤香菜さんを起用した完全ワイヤレスイヤホン「TE-BD21f-pnk」を発売して大ヒット。品切れが続いています。
お気に入りのキャラクターは外見を楽しむだけでなく、その声を愛でたくなるものです。GateboxのAIキャラクターも衣装や髪型、瞳の色などだけでなく声も自由にカスタマイズできれば、買いたいと手を上げる人が後を絶たないように思います。
GateboxはライブラリやAPIを外部デベロッパに提供しているので、ハードウェアの普及が順調に進めば、App Market上に様々なAIキャラクターが出揃ってくるはずです。最初は女性キャラの逢妻ヒカリからスタートしますが、例えば女性ユーザーがより愛着を持てる男性キャラも遠くないタイミングで追加されるのではと夢見てしまいます。
逢妻ヒカリとの会話のシナリオはとても良くできていましたが、例えばAIアシスタントと連続する会話を続けたり、相手の話を遮って話しかけられたり、より人間的なコミュニケーションができるようになることも期待したくなってきます。例えば逢妻ヒカリと「ケンカして仲直り」もできたら愛おしさが増幅しそうです。
「日本発・独自のAIビジネス」を世界に向けて発信せよ
初めてGateboxを見た時には大きな本体に驚いたものですが、そこに逢妻ヒカリが浮かび上がると、とてもちょうど良いサイズ感であることに納得しました。Gateboxの代表取締役である武地 実氏によると「一般的なフィギュアのサイズ感である15cm前後に逢妻ヒカリが表示されるように設計した」とのこと。また本体をテーブルの上に置いたときに、ちょうど目線の位置にキャラクターが表示されるようにスタンドとのバランスも気を配ったそうです。
時々、お気に入りのキャラクターをGateboxから転送して、スマートウォッチやスマートグラスなどウェアラブルデバイスの中に移動させて、一緒に「お出かけ」もできれば最高です。武地氏は「Gateboxの売れ行きを見ながら将来は廉価版など様々な展開を実現したい」と発表会で述べていました。ぜひGateboxの画期的なコンセプトをマルチデバイスに展開してもらいたいところです。
App Marketのプラットフォームはとてもオープンである魅力の裏側に、著作権管理やプラットフォームの健全な成長を保ち続けることの煩雑さも今後の課題として露見してくるものと思われます。ただ、一方でエンターテインメントの領域以外にも、例えば高齢者介護や教育、接客業務などビジネスの方面にもGateboxのプラットフォームが活用できるチャンスは数多くあるはずです。誰もが愛着を持てるAIキャラクターと幸せに暮らせる未来について、最初は様々な制約やマイナス面の存在にとらわれ過ぎることなく、ポジティブな可能性を追求していくことが大切だと筆者は考えています。なぜならアニメやキャラクター、声優など日本ならではのコンテンツ文化をからめた「日本発・独自のAIビジネス」を世界に向けて発信する、絶好の機会が今やってきたのだと思うからです。
【フォトギャラリー】※GetNavi web本サイトでのみ閲覧できます