〜〜3月14日ダイヤ改正で変わった「鉄道貨物輸送」注目のポイント〜〜
2020年3月14日、JRグループと、多くの私鉄各社がダイヤ改正を行った。新車両の登場、新駅開業など華やかな話題があった一方で、親しまれてきた車両が姿を消した。華やかな旅客輸送の変化につい目を奪われがちだが、JR貨物も同日にダイヤの改正を行っている。
この改正により鉄道貨物輸送にも、いくつかの変化が見られた。例えば長年、続けられた輸送が終了した。一方で、新型機関車が全国を走り始めていた。改正により新時代を迎えた鉄道貨物輸送。注目したいポイントを追った。
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【鉄道貨物新時代①】長年続けられた石炭輸送列車が廃止に
現在はコンテナを利用した輸送が主流になっている。一方で、車扱貨物(しゃあつかいかもつ)と呼ばれる貨物輸送も、少ないながら続けられてきた。かつて良く見られた無蓋(むがい)・有蓋貨車による輸送は車扱貨物の代表例である。現在は、無蓋・有蓋貨車による輸送はほとんど消え、タンク車、ホッパ車といった輸送する物品に合わせた専用の貨車を利用した輸送が大半を占める。
この春を前に、名物だった車扱貨物列車が消えた。消えた列車とは「石炭輸送列車」である。石炭輸送といえば、蒸気機関車が鉄道車両の中心だったころはもちろん、その後に減ってはいたものの、地道に続けられてきた輸送である。
最後となったのは、鶴見線扇町駅(神奈川県川崎市)と熊谷貨物ターミナル駅(埼玉県熊谷市)の間を結ぶ列車だった。同列車は扇町駅の先にある三井埠頭に陸揚げされた輸入炭を、専用の貨車・ホッパ車に積み、太平洋セメント熊谷工場へ運んでいた。石炭は石灰石の焼成用に使われた。この春に鉄道輸送からトラック輸送に切り替えるための廃止で、ダイヤ改正時に合わせて消えることがアナウンスされていた。ところが、実際には半月以上早い2月25日発が最終列車となった。
ちなみに、前年の2019年3月31日にも石炭輸送列車が消えていた。太平洋石炭販売輸送という会社が運行していた臨港線の輸送である。臨港線は北海道釧路市内にある炭鉱・釧路コールマインで採炭された石炭を積みだし港まで運ぶ石炭輸送の専用線だった。
釧路の臨港線に続き、首都圏で続けられてきた石炭輸送列車が消えた。こうして130年以上にわたり続けられてきた石炭輸送の歴史が終焉を向かえた。「石炭輸送列車」は、沿線のわずかなファンに見守られ、静かにその使命を終えたのだった。
【鉄道貨物新時代②】合わせて秩父鉄道の石炭輸送も廃止に
廃止された石炭の輸送は、熊谷貨物ターミナル駅の先、秩父鉄道の貨物専用線・三ヶ尻線(みかじりせん)を通り、太平洋セメント熊谷工場まで運ばれていた。2月末までは熊谷貨物ターミナル駅〜三ヶ尻駅の間を日に3往復、石炭輸送列車が行き交った。
残念ながらこの列車も消滅している。甲高いモーター音を奏でる電気機関車に牽かれ走る勇壮な姿は、JR線内とはいっぷう異なり、なかなか見ごたえがあった。
秩父鉄道の熊谷貨物ターミナル駅〜三ヶ尻駅間は、この石炭輸送のために保持されてきた線区だ。3月のダイヤ改正以降は、どのような輸送が行われるのだろうか。
貨物列車の新ダイヤを見ると同区間の輸送は日に1往復となった。編成内容は「その他」となり、しかも不定期の運行となった。
今後は、おもに秩父鉄道や東武鉄道の車両の輸送といったことに使われることになる。たとえば秩父鉄道の名物列車、SLパレオエクスプレスの牽引機、C58形蒸気機関車。JRの工場でメンテナンスが行われ、この三ヶ尻線を通して秩父鉄道の路線へ入る。ちなみに2020年、C58は長期にわたる全般検査が行われるためにSL列車の牽引はない。
ほか、同線は東武鉄道の新車の入線に使われる。こうした車両の入線用に使われる程度になりそうで、行き来する列車が極端に減ってしまうことになる。