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2020/3/22 18:30

2020年の春どう変わったのか?ダイヤ改正を経た「鉄道貨物輸送」を追う

 

【鉄道貨物新時代⑨】複数の路線でDD200の利用が始まる

この春に最も顕著な動きはDE10形式ディーゼル機関車から、DD200形式ディーゼル機関車への切り換えが目立ったことだろう。

 

JR貨物が発表した車両ごとの新製車両数を見ても、DD200は8両とダントツに多い。DD200は2017年に量産先行車の901号車が造られた。新製車両の中でHD300形式ハイブリット機関車が、貨物駅構内の貨車の入換えのみに使われているのに対して、DD200は駅構内の入換えだけでなく、本線の短距離区間での列車牽引が可能な車両として造られた。両機能を持っていたDE10の後継機と言って良いだろう。

 

配置は全車が愛知機関区となった。愛知機関区への配置ながら、興味深いことに、運用は北陸、新潟、東北、九州と広域にわたる。

↑2017年に登場したDD200形式ディーゼル機関車。写真の901号機は量産先行車で試運転が2年にわたり続けられた

 

まず北陸地方では富山貨物駅〜高山本線・速星駅(はやぼしえき)間と、富山貨物駅〜氷見線・高岡貨物駅間(こちらは臨時列車として運行)。新潟では、新潟貨物ターミナル駅〜信越貨物支線・焼島駅(やけじまえき/貨物専用駅)。東北地方では仙台貨物ターミナル駅から東北本線・小牛田駅を経て石巻線の石巻駅までの行程。さらに九州の北九州貨物ターミナル駅では入換えに利用されている。機関区こそ愛知機関区のみの配置だが、興味深いことに地元で使われることはなく、他の地方で広く使われるという例も珍しい。

↑石巻線を走るDE10牽引の貨物列車。この春からは6往復(臨時列車を除く)中、4往復がDD200の牽引列車に変更されている

 

一方、新製のDD200に一部切り替えられたDE10の現状はどうなったのだろうか。2月1日現在の車両数は45両で、国鉄時代に誕生した機関車の中では、今も最多を誇る。とはいえ、2010年4月1日時点でのJR貨物の保有台数が120両だったのに対して10年間でほぼ3分の1まで減ってしまった。前述したDD200が走り始めた路線以外の運用が続けられるももの、DD200とHD300の増備により、DE10、さらに増備車のDE11と共に徐々に減っていくことになりそうだ。

 

 

【鉄道貨物新時代⑩】九州のEF81のED76は変化もあまりなく

国鉄形機関車の引退が目立っているが、一方で変化が少なかったのが九州地区の機関車の動きだろう。

 

関門海峡を越える幡生駅(はたぶえき/山口県下関市)〜北九州貨物ターミナル駅の連絡こそ、EH500形式交直流電気機関車の独壇場ながら、ほかの区間には、国鉄形機関車のEF81形式交直流電気機関車、ED76形式交流電気機関車が、変わらず活かされている。門司機関区(福岡県北九州市)に配置される車両数こそEF81の基本番台に1両のみ減ったものの、機関車の運用に大きな変化はない。

↑長年、走り続けたEF81-303号機。EF81では唯一のステンレス仕様で、“銀窯”として人気が高い車両だ

 

↑ED76-81号機はJR貨物に残る基本番台2両のうち1両。ほか1000番台も含め10両が今も元気に活躍している

 

JR貨物で使われるED76は新しい車両が多いものの、それでも40年以上稼働している。EF81の中で人気が高い“銀窯”303号機は46年に至る。そろそろ後継機関車が取り沙汰されてもおかしくない状況になっている。

 

とはいえ鹿児島本線の福岡貨物ターミナル駅以東をのぞき、輸送量がそれほど多くない九州管内。ほかJR貨物の交直流機関車となると、日本海側の路線で活躍するEF510ぐらいしか見当たらないのが現状で、まだまだEF81やED76の活躍を見ることができそうだ。

 

 

【鉄道貨物新時代⑪】災害時に大きな強みとなりそうな常磐線

今年の旅客各社のダイヤ改正の中で、最も注目を浴びたのが常磐線の全線復旧の話題だったのではないだろうか。東日本大震災による津波による被害、さらに福島第一原子力発電所の事故により、帰還困難区域内に同線があったことから長期間にわたり列車の運行が途絶えていた。

 

東日本大震災が起る前までは、常磐線も東北本線のバイパスルートとして貨物列車が複数走っていた。

 

今回の全線復旧時には旅客列車の復活のみで、貨物列車の復活はなかった。とはいえ、JR貨物は常磐線の三河島駅(東京都荒川区)〜岩沼駅(宮城県岩沼市)間の第二種鉄道事業者として、貨物列車を走らせる許可を受けている。

↑現在、常磐線で最も長い距離を走る通称・安中貨物。泉駅(福島県)と安中駅(群馬県)の間を結ぶ名物列車だ

 

昨年の秋に豪雨で平行する東北本線が不通になるなど、貨物輸送にも支障が起きた。近年の災害の多い列島の状況を考えると、東北本線以外に常磐線という貨物列車が運行可能な路線という新たな選択肢を持てたことは大きい。この春に貨物列車の復活はなかったものの、今後は、貨物列車の復活という可能性も常磐線の復旧は秘めている。

 

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