日本最高峰のMCバトルUMB GRAND CHAMPIONSHIP全国三連覇のラッパー「R-指定」と、世界一のDJ「DJ 松永」による、ヒップホップユニット「Creepy Nuts」。様々なジャンルで活躍する彼らが、ついにオールナイトニッポン1部に昇格。今回は彼らに昇格後の抱負やラジオへの熱い想いを聞いた。
(構成・撮影:丸山剛史/執筆:有山千春)
昇格は驚いたしうれしいけど、誰に言うでもなし
ーー1部(オールナイトニッポン)昇格おめでとうございます! 報告を受けたときの心境を教えてください。
DJ松永 信じられない感じです。「オールナイトニッポンR」を4回やってから、2018年から「オールナイトニッポン0(ZERO)」を4年間やらせてもらって、こんなふうに段階を踏んで1部の「オールナイトニッポン」に昇格することってないじゃないですか。なかなかないパターンだから、すごく貴重な体験をさせてもらっています。
ーー連絡を受けたとき、喜びのあまり誰かに連絡したりしましたか?
DJ松永 特にせずですね。
R指定 まったく一緒ですね。驚いたしうれしいけど、誰に言うでもなく。
DJ松永 しないよね。「1部になりやしたァァ!」って言わないよねえ。
ーー(笑)着実に力をつけた証としての昇格だと思います。
DJ松永 本当にありがたいです。
ーーANN 0を開始した当初とは取り巻く環境もいまとはかなり違うと思いますが、当時と現在とでは、ラジオに向き合う姿勢に変化はありますか?
DJ松永 変わっていないですね。当時も今も、1回1回をどう面白くしようか考えて、目の前のことでいっぱいいっぱいです。慣れる、とかはないよね? うまくいくこともあればそうじゃないときもあるし。
たとえば、制作時期は頭が制作モードになっていてラジオ中に何も思いつかないこともありますが、それは「1年目だから」「4年目だから」とかではなく、「そういう時期だから」であって。「○年目だからこう変わって、これができるようになった」とは思わないですね。
R指定 松永さんが言ったような、「制作時期はこうなってしまう」というようなことを「そういうもんなんやな」と最近気づき出しました。「いまはこういう時期、というのが如実に出てしまうもんなんやな」と。
最初の1年は「今日はなんでこんなにうまく考えがまとまらんのやろう」というのはあったんですけど、やっていくうちに「ああ、いまはこの時期だからか」と客観的に把握できるようにはなりましたね。
DJ松永 制作時期は、ふたりとも露骨に何も出ないよね(笑)。
R指定 「うーーーーん……」ってなったりね。お互いの状態が生々しく出ます。
DJ松永 生放送だからね。その日のコンディションが全部出るからしょうがないよね。
ーー「今日は調子悪いな」というのが、リスナーにもバレたりするのでしょうか。
DJ松永 そこまではわからないんじゃないですかね。それか自分から言うかな? いや、言ったことはないな。
R指定 ないね。
DJ松永 それってスゲー言い訳だもんね。
あの逆ナン女性と二度目の遭遇!
ーーおふたりの自由気ままなテンポのトークが魅力のひとつですが、個人的には、R指定さんが京都で逆ナンされた話が大好きでして。京都でライブの日、ご自身を知らないであろう女性から、京都駅付近で「お兄さんの見た目とか雰囲気が性癖にドンピシャすぎて」と声を掛けられたという。美人局などを疑い連絡先交換もしないまま別れた話です。
DJ松永 出たー! あれガチだもんな。
R指定 あのときは言いふらしましたよ。ほんまに友達にも、「マジでナンパされた!」って。
ーー「パコる」などのいろいろなワードが出てきましたが、これからは時間帯が上がるのでああいった話が減ってしまったり……。
DJ松永 パコるって懐かしいよな(笑)。昔、ギャルの漫画家さんが「パコる」って使ってて。
R指定 ちなみに、あのナンパされた人にもう一回会いましたからね。
DJ松永 そうだ! それでRが名刺をもらって写真を撮ったのを、見せてもらったんだ。
R指定 次は神戸で会ったんですよ。
DJ松永 「ウソやろ!?」って。
ーーそのときも、何も起こらず?
R指定 さすがに2回目なんで、ちょっと怖くなって、「あれ? これは……」みたいな感じで逃げてきました。
DJ松永 2回目だと確信犯感出ちゃうよね。
R指定 2回目はねえ……。相手は「こんな奇跡が……!」みたいな顔をしてたけど、いやいやそんなわけあるか!
DJ松永 ウソつけ! みたいな。
ーーまさか、前回もR指定さんと知りながら?(笑)
R指定 俺が神戸のここにおる時間に、たまたまおるわけがない!
DJ松永 神戸でライブの日だったんでしょ? じゃあ狙い撃ちじゃねえか! だって公に出てる情報だもんそれ。
R指定 もっとうまいことしてくれんと。
ーーそういった話を1部でも期待しています(笑)。
ラジオに完成はない
ーーところで、土曜パーソナリティは憧れのオードリーさんですが、横並びとなったことについてどう思われますか?
DJ松永 実感ないですよ、なんの実感もない……パニック……。横並びになった感じなんて、本当になにもないんですよ。あっちは自分が10代のころにテレビで見たりラジオで聴いたりしていた人たちだし、本当に実感ないです。同じ枠とは思えないですね。
R指定 ナインティナインさんともね。
DJ松永 うん、横並びの実感、ないね。ピンとこないですねえ。
ーーそうそうたるメンバーと同じように、ラジオの頂点を極めたと言っても過言ではありません。
DJ松永 極めてないですよ!! わからないことだらけですし! 本当に難しい! ラジオって、極められることないですよ、きっと。あんなにナマモノで、1時間半、2時間を完璧に走り切るなんて……不可能な競技だと思う。日々、試行錯誤です。
ラジオをやっている全員が、「たまたま今日はうまくできた」「今日はうまくできなかった」の繰り返しだと思います。
R指定 ライブと同じですね。どれだけでかいステージに立ったアーティストでも、絶対にその日によって出来不出来はありますから。
DJ松永 表現全般に通じるものだと思います。完成って、ないよね。
ーーそういった、ラジオパーソナリティの内なる生声が、リスナーの支えになることも大いにあるかと思います。かつて、オードリーさんのラジオに救われていたとDJ松永さんが話されていたことがあったように、同じようにおふたりに救われているリスナーがいるとしたら、どう思われますか?
DJ松永 そこを意識して、「誰かを救おう」という感じではやっていないです。本当にいっぱいいっぱいですからね。ふたりで頑張って、目の前の瞬間をどう面白くするか、どんな会話をするかって。
R指定 狙いを定める、というのは絶対にできないですね。
DJ松永 でも、回り回って「ふたりのラジオのおかげでこうなりました」みたいな声は確かに届くようになったので、「頑張っていてよかったな」と思いますね。大変なことも多いけど、やる意義があるし、あのとき俺たちがオードリーさんのラジオを聴いて救われたように、一生懸命ラジオをやっているだけで周りにそういう影響を及ぼすことがあるのかもしれない、と思うと本当にうれしいです。もったいないくらいですよ。ラジオをやらせてもらえるだけでも幸せなのに。救われてくれる人がいるなんて。胸がいっぱいですね。
ーー今後、1部でゲストに呼びたい人はいますか?
DJ松永 いままで、思いつく人全員呼んだよね? ヒップホップの先輩で呼んでいないのは、あとは漢さんとかKREVAさんくらいかな?
R指定 「1部だから」に限らず、相変わらず呼びたい人を呼びたいと思っています。
今まで通り楽しく、だけ
ーー今回おふたりは、ヒップホップアーティストでは初のANN1部パーソナリティ就任ということでも話題となっています。業界からも反響はありますか?
DJ松永 今のところそういう情報は……聞いていないですね。でも意外と、俺らと関係性があまりないようなハードコアなラッパーの人から「たまに聴いているんだよ」と言われることはあるので、「えーー! うれしい!」って思いますね。Awichさんとかね。うれしかったよね。
R指定 うれしかった!「聴いてます」って言ってくれたりとか。
ーー今後、やりたい企画はありますか?
R指定 俺らのラジオって、フリートークが長くなってコーナーがいろいろと飛ぶんですよ。だから久しぶりに、ちゃんとコーナーをやってみたいです。
DJ松永 「ラジオHIP HOP!」というコーナーがあるんですけど、俺、やった記憶ないんだよね。
R指定 ほんまに最初の何回かくらいと、あとゲストでラッパーの先輩が来てくれたときくらいしか……。そういうコーナープラスふたりのトークも入った、ちゃんと網羅する回をやりたいですね。
DJ松永 Rの「日本語ラップ紹介」も飛んだよね。
R指定 そう! それもぜーんぶ入った状態のことをやりたい!
DJ松永 これからは2時間だから、全部やれるかもしれないね。だから特に「新たな気持ちで挑戦!」というのはないんですよね。今まで通り楽しく、だけですね。
その人間がやれるラジオって、それ以上でも以下でもなく、限られているじゃないですか。その人の個性や人間性の範囲内でしかできないと思うので、だから俺たちが1部に昇格したからといってなにか変わるわけでもなく、自分たちの人間性でしかできないから、変わらないと思います。
ーー変わらず仲の良いトークが聴けるということですね!
DJ松永 そうですね。温度感も話す内容も、変わらないと思います。