IFAは世界最大級の家電見本市。IFAの昨年実績では来場者数が約21万5000人、出展社数は約1800社と極めて大きな規模を誇っています。
さて今年の「IFA2025」は9月5日〜9日、ドイツの首都・ベルリンで開催されますが、こちらにロボット掃除機業界をけん引するメーカーのひとつ、エコバックスが出展。その大舞台で、業界初の機能を搭載した自信作を発表するとのこと。
エコバックスといえば、最新テクノロジーを追求するメーカーだけに、どんなモデルを出すのか。気になる……というわけで、IFAの会場で行われた発表の場に参加しましたので、その様子をレポートします!

IFAが開幕する前日の15:00、エコバックスはプレス向けの特別イベントを自社のブースで開催。欧州だけでなく、世界各国の報道陣が詰めかけているのがわかります。エコバックスのCEO・David Qian氏が登場すると、会場は拍手に包まれました。
同氏が英語でプレゼンテーションを始めて、満を持して紹介されたのが、新製品「DEEBOT X11」シリーズです。


この最新シリーズには数種類のモデルがありますが、フラッグシップモデルとなっているのが「DEEBOT X11 OmniCyclone」です。「DEEBOT X11 OmniCyclone」は9月26日発売で、9月5日から予約販売を開始しています。実売予想価格は22万9900円(税込)。

この中でもQian CEOが熱く説明していたのは「OmniCycloneステーション」です。その最大の特徴は、PureCyclone 2.0を統合した業界初のバッグレス設計を採用したこと。
これまでのステーションでは紙製のダストバッグの交換が必要でした。交換の際は、新しいバッグを買う必要がありますし、交換しているときにゴミに触ってしまったり、集めたゴミが床に落ちてしまったり……。DEEBOTを使っているうちに、ステーションの吸引力が低下してしまうなど、いろいろな課題がありました。
しかし、バッグレス設計のOmniCycloneステーションはこうした課題をすべてクリア。1.6リットルの大容量のダストボックスを備えており、最大48日間のダストボックスのメンテナンスフリーを実現しました。
ゴミを捨てる際はダストボックスを外し、ゴミに触れることなくワンタッチでゴミが捨てられます。PureCyclone 2.0は吸引力の低下を抑える機能も備えており、効率の面でも優秀。


ユーザーのフィードバックで浮かんだ課題
同社は1998年に設立し、2009年にDEEBOTを発売。それから目覚ましい成長を続けてきました。Qian CEOは新製品のプレゼンの最後に「フィードバックをどんどんください」と報道陣に言っていましたが、同社のイノベーションと差別化を支えてきた大きな要因の一つは、ユーザーからのフィードバックに向き合った結果のようです。
そのなかで突きつけられた、悩ましい課題のひとつがバッテリー。
Qian CEOによると、「バッテリーへの不安」という声がユーザーから多く寄せられていたとのこと。つまりは、「電力の不足により、1回の掃除で掃除が完了しないのではないか?」という不安です。
そんな問題を解消するために、これまでエコバックスはバッテリーの容量を増やしてきました。しかし、それには限界があることに研究開発チームは気が付きます。バッテリーの容量を6400mAhからさらに増やすのは難しい。では、一体どうすればいいのか……?
そこで研究開発チームが辿り着いたのが、急速充電技術「PowerBoostテクノロジー」です。こちらは敵対性生成ネットワーク(GAN※)を使ったパワー供給プログラムを組み込むとともに、自己最適化アルゴリズムがパワーの供給を最適化するとのこと。
※相互に競合する2つのニューラルネットワークをトレーニングして、より本物に近い新しいデータを生成する深層学習アーキテクチャ。
その結果、モップ洗浄中のわずか3分間で6%という急速充電が可能となり、最大400m2もの広範囲の清掃を一度に完了することができるようになりました。
つまり、清掃中に短時間の急速充電を実現したことで、「稼働時間を伸ばせない」という課題を、まったく別の方法で解決したわけですね。「バッテリー容量=稼働時間」という従来の常識を覆してくるあたり、さすがはイノベーションを信条とするエコバックスといえるでしょう。

同じようなことは、AI音声アシスタント「AGENT YIKO(エージェント・イコ)」にも言えます。
近年のDEEBOTモデルは、スマートスピーカーを介さずに音声操作ができるAI音声アシスタント「YIKO」を搭載していましたが、「もっと改善してほしい」という声が一部のユーザーから上がっていました。そこで、YIKOと大規模言語モデル(LLM)をミックスすることに。これによって3つのことが簡単にできるようになったとのこと。
1: 箱を開けたらすぐに使い始められる。
2: 最もいいお掃除プランを深く考えられる。
3: 問題が起きてもリアルタイムで解決策をガイド。
LLMと合体したAGENT YIKOは「ロボット(DEEBOT)だけでなく、ユーザーのこともとてもよく理解する」とQing CEOはアピールしています。
AGENT YIKOはリアルタイムで音声フィードバックを送ったり、アプリで画像や動画を表示したりして、問題があった場合にはユーザーを適切にサポート。修理やメンテナンスが容易になったので、カスタマーサービスに問い合わせる手間も省けるとのこと。

モップローラーや吸引機能も大幅強化
このほか、ロボット掃除機の本質機能である清掃力も大幅に強化しています。
「OZMOローラー定圧式常時洗浄モップシステム2.0」を搭載し、高密度ナイロン製のモップローラーは、従来のデュアルプレートシステムの16倍の強さを誇る3800Paのモップ圧力と、毎分200回のスクラブ洗浄を実現。フローリングにこびりついた汚れを徹底的に除去します。
可変式エアクッションを搭載し、さらに進化したモップローラー技術「TruEdge 3.0」により、従来製品よりもモップを1.0cm長く伸ばすことに成功。これまで届きにくかった隅や壁際もより確実に清掃できるようになりました。

ゴミの吸引力も大幅アップ。高トルクモーターと大型・低抵抗ファンブレードの組み合わせにより、最大1万9500Paもの吸引力を実現しました。カーペットの細かなホコリ除去率は従来比で140%、毛髪除去率は262%向上したというから驚きです。
さらに、最大2.4cmの段差も乗り越える「TruePassアダプティブ4WD乗り越え機能」も新採用。障害物に触れると即座に反応する接触式トリガーと、補助クローによる強力な登坂機構を搭載することで、ちょっとした段差やカーペットの切れ目も確実に移動できます。

ダストバッグをなくし、急速充電で稼働時間を延長。最新の音声アシスタントを搭載し、「OZMOローラー定圧式常時洗浄モップシステム2.0」「TruEdge 3.0」などで清掃能力も大幅にアップしたDEEBOT X11 OmniCyclone。「TruePassアダプティブ4WD乗り越え機能」といった新機能を備えており、現段階ではDEEBOTのベストモデルです。
しかし、「私たちのモデルは変化し続けるので、すぐにベストモデルではなくなるかも」とエコバックスのマーケティング担当者はさらりと笑って話していました。そんな一言にイノベーションを第一に考えるエコバックスの企業文化が感じられました。
ロボット掃除機がどれほど進化しても、家はまだまだ複雑。課題は山積していますが、それでも「家の全ての空間を制覇することがエコバックスの夢である」とQing CEOは強く語りました。
確かに、IFAでDEEBOT X11 OmniCycloneの進化に対し、多くの人たちがワクワクしているのを見ると、それも夢ではないと感じます。家の掃除を全部ロボットに任せる将来は、意外とすぐにやって来るかもしれませんね。