「本質重視」の昨今、日本の家電は本来必要な機能の進化に重点が置かれている。しかし過去には、「おもてなし」精神の延長からあらゆる付加価値を盛り込むことに情熱を注いだ時代もあった。ここでは、そんな“やりすぎ”感も魅力だった懐かしの多機能家電を振り返る。
【教えてくれたのは】
家電ライター 小口 覺さん
IT・家電を中心に執筆。SNSなどで自慢したくなる家電製品を「ドヤ家電」と命名したほか、今昔のユニークな家電にも精通する。
【1964年】憧れのモーニングセットを同時に調理できる時短家電

東芝
スナック3
トースト、目玉焼き、ホットミルクを同時に調理できる、時短家電の先駆け的存在。3品の加熱時間が異なるため使い方には少しコツが必要だったが、洋風の朝食が憧れだった時代の空気を感じるアイデア家電だ。発売当時の価格は約3500円。
COMMENT
「東芝が現代のサンコーのような製品を作っていた1960年代。その実用性はさておき、ごっこ遊び用の玩具にありそうなかわいらしいビジュアルがたまりません」(小口さん)
【1979年】コンピュータを内蔵した幻のテレビラジカセ

シャープ
ラテカピュータ
当時すでに開発されていたラジオカセットテレビとPCをシステム化した製品。電子計算機の開発チームが、電卓に限らず、新たな製品を模索するなかで生まれた。生産台数はわずか200台で、発売当時の価格は約24万8000円。
COMMENT
「シャープといえば、電卓+そろばんの「ソロカル」が有名ですが、こちらは社内ですら知らない人が多かったそうです。発想は後のスマホをかなり先取りしています」(小口さん)
【1985年】3台のデッキを搭載し、2本同時録音が可能に!

ナショナル
トリプルラジオカセットプレイヤー RX-F333
再生専用デッキ1台+録音・再生デッキ2台を備えたポータブルラジカセ。典型的なラジカセ機能に加え、カセットテープの3本連続再生や、再生中の2本同時録音、編集中の再生・録音が可能だ。発売当時の価格は約3万7800円。
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「1980年頃からダブルラジカセが流行りましたが、さらに一歩先へ進めたのがこちら。ダビングがはかどりすぎるからか、発売期間は短く、後継モデルも登場しませんでした」(小口さん)
【1986年】テレビを見ながら通話ができる昭和のタイパ家電

ナショナル
てれ・ほん11
電話機一体型のカラーテレビ。通話相手の顔が見えるテレビ電話ではなく、テレビを見ながら電話をかけられるタイパ家電として開発された。テレビ視聴中に着信があると、音声が自動でミュートになる機能も備えていた。
COMMENT
「当時、エンタメの王様はテレビで、恋人とのコミュニケーションは電話が主流。相手がテレビに夢中で、こちらの話をロクに聞いていなかった黒歴史が蘇りました」(小口さん)
【1988年】スマホの原点!? タッチパネル式の卓上型複合OA機器

キヤノン
パーソナルステーションNAVI
電話、ファクシミリ、ワープロなどを一体化し、インテルi80286を搭載したPCも内蔵した卓上型の複合OA機器。当時としては先進的なタッチパネル方式を採用している。発売当時の価格は約59万8000円。
COMMENT
「むちゃくちゃ憧れた製品ですが、高すぎて手が出ませんでした。スティーブ・ジョブズが、本機に触発されてiPhoneの開発につながったという説もあるみたいです」(小口さん)
【1990年】ゲーム機本体が内蔵されたブラウン管テレビ

シャープ
スーパーファミコン内蔵テレビ<SF1>
任天堂よりライセンスを受けて開発した「スーパーファミコン」内蔵のテレビ。専用ソフトを差し込めばそのままゲームを楽しめる。もちろん、テレビ視聴も可能だ。発売当時の価格は14型が約10万円、21型が約13万3000円(税別)。
COMMENT
「後のディスプレイ一体型PCに近いですね。現在でも動作品はオークションサイトにて10万円前後で取引され、本機のレア度と根強い人気がうかがえます」(小口さん)
【2006年】冷風・除湿で快適に! クーラー機能付き洗濯機

東芝
エアコンサイクルドラム TW-2500VC
ヒーターを使わず、熱交換による除湿乾燥を行う「エアコンサイクルエンジン」を搭載。節電・節水による高い省エネ性能に加え、衣類の縮みやシワの軽減、室内に冷風を送るクーラー機能も実現した。発売当時の価格は約34万6500円。
COMMENT
「現在普及が進むヒートポンプ式を採用。クーラー機能は浴室周りの高温多湿対策に良さそうですが、洗濯中は使えず、冷却に水を使うため水道代もかかりました」(小口さん)
【2012年】「ナノイー」技術でテレビを見ながら空気まできれいに!

パナソニック
ナノイー搭載テレビ VIERA CF5
微粒子イオン「ナノイー」発生装置を搭載した19型液晶テレビ。ダニやカビ菌、花粉の抑制や脱臭、美肌効果が期待できるとされ、視聴していないときでもナノイーの単独運転が可能だ。発売当時の価格は約4万6000円前後。
COMMENT
「ナノイーをもっと普及させるぞ」という同社の強い意志を感じる製品。テレビ自体の機能も高かったのですが、ナノイー搭載が話題になることはなかったですね。(小口さん)
【2017年】未完成のまま消えた全自動衣類折りたたみ機

セブンドリーマーズ
ランドロイドワン
「画像解析」「AI」「ロボティクス」の3つの技術を融合した全自動衣類折りたたみ機。乾いた洗濯物を入れるだけで、ロボットアームが衣類をきれいにたたみ、種類や持ち主ごとに仕分ける。価格は185万円(税別)~と発表されたが、一般販売には至らなかった。
COMMENT
「100億円以上の資金を調達したものの、広げすぎた夢と計画がともなわず、一般販売前に会社をたたむことに。でも、挑戦する会社が日本にも増えてほしいものです」(小口さん)
※「GetNavi」2026年1月号に掲載された記事を再編集したものです。