お手軽RAW現像のススメ Part.3 キヤノンDigital Photo Professional 4の使い方 上級編
キヤノンの純正RAW現像ソフト「Digital Photo Professional 4(以下、DPP4)」の、基本的な現像作業の方法を解説していく本記事。初級編では、明るさの調整と色補正のやり方を紹介した。上級編では、レンズ補正とノイズ補正のやり方と、DPP4の注目機能「デジタルレンズオプティマイザ」の使用方法を解説する。
レンズ補正とノイズ補正のやり方
レンズ補正ツールパレットでは、レンズの特性が原因となって生じる、写真へのさまざまな影響を低減することができる。具体的には、「色収差」や「色にじみ」、「周辺光量の低下」、「歪曲収差」などを補正可能だ。
注意したいのは、これらの各種レンズ補正を適用できるのは、レンズデータが用意されている対象レンズで撮影した画像に限られること。パレットの中段にある「レンズデータ」の状態を確認してみよう。そこで「非対応」となっている場合は使用できない。
![20170612_y-koba_capa](https://getnavi.jp/wps/wp-content/uploads/2017/06/20170612_y-koba_capa.jpg)
一方、ディテール調整ツールパレットでは「輝度ノイズ」と「色ノイズ」の緩和、およびシャープネスの調整が行える。輝度ノイズとはざらざらとした粒状のノイズで、色ノイズとは赤や緑、青などのカラフルな斑点状のノイズだ。どちらも撮影時にISO感度を高く設定するほど目立つようになるが、このノイズ緩和機能である程度低減できる。
![↑ディテール調整ツールパレット。拡大表示を見ながら、ノイズの緩和とシャープネスの細かな調整が行える](https://getnavi.jp/wps/wp-content/uploads/2017/06/20170602_dcapa_24.jpg)
■レンズ収差補正ツールパレットの使い方
各種レンズ補正の使い方は、レンズ収差補正ツールパレットを表示したうえで、補正したい項目にチェックを入れるのが基本。すると、それぞれの効果が即座に画像に反映される。その際、「周辺光量」と「歪曲」の補正に関しては、画像の全体を見て効果を確認すること。「色収差」や「色にじみ」に関しては、画像上をクリックして拡大表示にしてから、細部を見て効果を確認するといいだろう。レンズ収差補正ツールパレットの最上段にある「小窓」に、部分拡大を表示させることも可能だ。
補正の微調整については、それぞれの項目の下にあるスライダーを動かすことで行える。スライダーを左に動かすと効果が弱くなり、右に動かすと強くなる。「色収差」では効果の強弱のほか、「R」のスライダーで赤色の収差を、「B」のスライダーで青色の収差を個別に補正することも可能。
![↑全体表示。周辺光量と歪曲の補正は全体表示で行おう](https://getnavi.jp/wps/wp-content/uploads/2017/06/20170602_dcapa_25.jpg)
![↑部分拡大表示。色収差と色にじみの補正は拡大表示で行う。表示倍率は、プレビューメニューから12.5~400%の間で調整できる](https://getnavi.jp/wps/wp-content/uploads/2017/06/20170602_dcapa_26.jpg)
■レンズ収差補正の効果
具体的にレンズ収差補正の効果を見ていこう。ここでは「色収差」、「色にじみ」、「周辺光量」、「歪曲補正」、さらに「魚眼レンズの歪曲」の適用前後の写真を見ながら解説する。
▼色収差の補正
![↑全体写真](https://getnavi.jp/wps/wp-content/uploads/2017/06/20170602_dcapa_27.jpg)
![↑赤や緑の色ズレが生じる色収差。レンズ補正ツールパレットのほぼ中央にある「色収差」にチェックを入れると、機体の輪郭部分に表れていた赤い色収差が補正された(上:元の写真、下:色収差補正ON)](https://getnavi.jp/wps/wp-content/uploads/2017/06/20170602_dcapa_29.jpg)
▼色にじみの補正
![↑全体写真](https://getnavi.jp/wps/wp-content/uploads/2017/06/20170602_dcapa_30.jpg)
![↑光源など明るい被写体のエッジがにじむ色にじみ。レンズ補正ツールパレットの「色にじみ」にチェックを入れると、紫色の色にじみが目立たなくなった(上:元の写真、下:色にじみ補正ON)](https://getnavi.jp/wps/wp-content/uploads/2017/06/20170602_dcapa_32.jpg)
▼周辺光量の補正
![↑写真の四隅が暗く写ってしまう周辺光量の低下。レンズ補正ツールパレットの「周辺光量」にチェックを入れると、暗かった画面周辺(この写真では特に四隅)が明るくなった。補正が明るすぎたり、まだ暗かったりしたら、スライダーを使って手動で微調整することも可能だ(上:元の写真、下:周辺光量補正ON)](https://getnavi.jp/wps/wp-content/uploads/2017/06/20170602_dcapa_34.jpg)
▼歪曲の補正
![↑まっすぐな被写体が曲がって写ってしまう歪曲収差。レンズ補正ツールパレットの「歪曲」にチェックを入れると、自動的に建物上部と地面のゆがみがとれてまっすぐに描写できた(上:元の写真、下:歪曲補正ON)](https://getnavi.jp/wps/wp-content/uploads/2017/06/20170602_dcapa_36.jpg)
▼魚眼レンズの歪曲の補正
![↑対応する魚眼レンズで撮影したRAW画像の場合、歪曲の補正の際に、射影方式の変更ができる。射影方式とは、立体を平面的に変換する際の方式のこと。「撮影時設定/直線を重視/距離を重視/周辺部を重視/中心部を重視」の5モードから選択できる(上:元の写真、下:歪曲補正ON/直線を重視)](https://getnavi.jp/wps/wp-content/uploads/2017/06/20170602_dcapa_38.jpg)
■ノイズリダクションを適用する
高感度撮影によって生じた輝度ノイズや色ノイズは、ディテール調整ツールパレットにある「輝度ノイズ緩和」と「色ノイズ緩和」を適用することで目立たないように補正できる。初期設定の場合、カメラ内で設定した「高感度撮影時のノイズ低減」に応じた値が入力されているので、必要に応じてスライダーを動かしてノイズ緩和の強弱を調整しよう。効果を正確に確認するため、画面表示を拡大しながら作業を行うのがおすすめだ。
![↑ディテール調整ツールパレットのノイズリダクション調整箇所](https://getnavi.jp/wps/wp-content/uploads/2017/06/20170602_dcapa_39-1.jpg)
注意点は、輝度ノイズを低減しすぎると、写真の細部がぼやけてしまうこと。また色ノイズを低減しすぎると、写真の鮮やかさが損なわれたり、色にじみが生じたりする場合がある。これらに気を付けながら、効果のバランスを考えて設定値を決めたい。
また、ディテール調整ツールパレットの下段にある「シャープネス」を適用することで、輝度ノイズ低減による解像感の低下をある程度目立たなくできる。
![↑元の写真。ISO25600で撮影](https://getnavi.jp/wps/wp-content/uploads/2017/06/20170602_dcapa_40.jpg)
![↑「輝度ノイズ緩和:19」に設定。だいぶノイズは緩和されたが、赤と緑の色ノイズがやや目立つ](https://getnavi.jp/wps/wp-content/uploads/2017/06/20170602_dcapa_41.jpg)
![↑「輝度ノイズ緩和:19」「色ノイズ緩和:19」に設定。ノイズのないきれいな画像になった](https://getnavi.jp/wps/wp-content/uploads/2017/06/20170602_dcapa_42.jpg)
DPP4の注目機能「デジタルレンズオプティマイザ」
DPP4には数多くの機能が備わっているが、なかでも目玉といえるユニークな機能が「デジタルレンズオプティマイザ」だ。この機能の基本原理は、レンズの設計データや撮影時の情報に基づいて、レンズ収差や回折現象といった画質に影響を与える要素を関数化し、その結果を逆関数として写真に適用することで、収差や回折による画質劣化を補正するというもの。前述したレンズの収差補正機能では処理できない、より複雑な収差(コマ収差や非点収差、球面収差など)も自動的に補正できる。
使い方は、レンズ補正ツールパレットの上段にある「デジタルレンズオプティマイザ」の項目にチェックを入れるだけだ。ほかのレンズ補正機能と同じく、デジタルレンズオプティマイザを適用できるのはレンズデータが用意されている対象レンズでの撮影画像に限られる。「レンズデータ:なし」と表示されている場合は、円を描く矢印をクリックしてレンズデータをダウンロードしよう。必要に応じて下段のスライダーを動かし、効果の度合いを調整することも可能だ。
![↑「輝度ノイズ緩和:19」「色ノイズ緩和:19」に設定。ノイズのないきれいな画像になった。](https://getnavi.jp/wps/wp-content/uploads/2017/06/20170602_dcapa_43-760x248.jpg)
![↑円を描く矢印ボタンをクリックすると、ウェブ経由でレンズデータの追加と削除が行える](https://getnavi.jp/wps/wp-content/uploads/2017/06/20170602_dcapa_44.jpg)
デジタルレンズオプティマイザは、レンズ性能を高めるような補正ができるので、この機能を適用することを前提にすれば、撮影時の自由度はいっそう高くなる。例えば、レンズ収差を防ぐには絞りを開けすぎない、回折現象を避けるには絞り込みすぎない、といったことが撮影のセオリーとして一般的にいわれているが、デジタルレンズオプティマイザを前提に撮影するなら、収差や回折の影響を気にすることなく、絞りの開放値も最小値も積極的に利用できる。
![↑全体画面](https://getnavi.jp/wps/wp-content/uploads/2017/06/20170602_dcapa_45.jpg)
![↑絞りF18に絞り込んで撮影したチューリップの画像を拡大表示。デジタルレンズオプティマイザを適用すると、回折現象によって若干あまかった描写が鮮明になり、茎の毛まで見えるようになった。また、色の鮮やかさも増している(上:元の写真、下:デジタルレンズオプティマイザを適用)](https://getnavi.jp/wps/wp-content/uploads/2017/06/20170602_dcapa_47.jpg)