最近のデジカメ市場ではフルサイズミラーレスが大人気。その火付け役となったのは、昨年3月発売のソニー「α7 III」でしょう。20万円台前半というスタンダードモデルながら、小さなボディにハイスペックを凝縮し、愛好家層を中心に高評価を獲得。1年以上も販売ランキングの上位を維持し続けています。
そして今年3月、キヤノンからフルサイズミラーレスとしては画期的な低価格を実現した「EOS RP」が登場。ボディ単体で20万円を切る初期投資の容易さで、フルサイズミラーレス市場をさらに押し広げるのでは? と期待されています。
フルサイズミラーレス界における鉄板モデルα7 IIIと期待のホープEOS RP。今後しばらく市場を牽引していくであろうこの2台の使い勝手や画質を比較してみました。
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製品概要と基本スペック
まずは製品概要と基本スペックを確認していきましょう。
キヤノン「EOS RP」
EOS Rに続いて登場した同社のフルサイズミラーレスの第2弾となる製品。撮像素子は有効2620万画素のCMOSセンサーで、処理エンジンにはDIGIC 8を搭載。感度は最大ISO102400(拡張)に、連写は最高5コマ/秒に、動画は4K/24P記録にそれぞれ対応しています。ボディの実売価格は17万3340円(税込)。
ソニー「α7 III」
ソニーのフルサイズミラーレス「α7シリーズ」のなかでは、第3世代のスダンダードモデルに位置する製品。発売は2018年3月。撮像素子は有効2420万画素のCMOSセンサーで、処理エンジンにはBIONZ Xを搭載。感度は最大ISO204800(拡張)に、連写は最高10コマ/秒に、動画は4K/30P記録にそれぞれ対応しています。ボディの実売価格は24万3220円(税込)。
EOS RPのほうが約1年あとに発売されているとはいえ、約7万円の価格差があるぶん、基本スペックとしては連写や感度設定など多くの点でα7 IIIが上回っています。今回の比較ではあまり触れませんが、ボディ内手ブレ補正を搭載している点もα7 IIIの優位点です。
外観と使い勝手を比較
ボディの外形寸法は、α7 IIIが幅126.9×高さ95.6×奥行73.7mm、EOS RPが幅132.5×高さ85×奥行70mm。手にしたときのサイズ感に大きな違いは感じませんが、EOS RPは天面の出っ張りが小さく、ボディの高さが低いことが特徴です。
ボディの重量はバッテリーとカードを含めて、α7 IIIが約650gで、EOS RPが約485g。EOS RPは、数あるフルサイズミラーレスのなかでも非常に軽い部類のボディといえます。
操作性については、ボタンやダイヤルの数が比較的多く、そのカスタマイズも柔軟に行えるα7 IIIのほうが細かい機能へのアクセス性に優れると感じます。例えばAF測距点の選択は、α7 IIIでは背面のマルチセレクター(ジョイスティック)でダイレクトに切り替えができますが、EOS RPでは十字キーまたは液晶タッチパネルでの操作になります。
一方のEOS RPは、ボタンやダイヤルを少なくすることで、よりシンプルで初級者にも取っつきやすいように配慮されていると感じました。
標準ズームを使って屋外の写真を比較
続いて同一のシーンを撮り比べてみましょう。最初の写真は、それぞれの標準ズーム(24-105mm)を使用してワイド端の開放値で撮影したものです。
【α7 III】
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<上の画像を部分拡大>
【EOS RP】
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<上の画像を部分拡大>
結果は、両機とも細部までシャープに再現する優れた解像性能を確認できます。特にα7 IIIは、絞り開放値にもかかわらず画面四隅まで高解像を維持できています。EOS RPは、中央部に比較すると画面の隅はやや甘くなっています。
“同じレンズを使って”屋外の写真を比較
次は、同じレンズを使って屋外の同一シーンを撮り比べてみました。使用レンズは、キヤノン「EF50mm F1.8 STM」と「EF70-300mm F4-5.6 IS II USM」です。α7 IIIには、シグマのマウントアダプターMC-11を介して装着しています。
【α7 III】
<EF50mm F1.8 STM>
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<上の画像を部分拡大>
<EF70-300mm F4-5.6 IS II USM>
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<上の画像を部分拡大>
【EOS RP】
<EF50mm F1.8 STM>
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<上の画像を部分拡大>
<EF70-300mm F4-5.6 IS II USM>
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<上の画像を部分拡大>
結果は、両モデルとも優れた細部表現力を実感できますが、解像力ではα7 IIIが一段上な印象。一般的なデジカメはモアレや偽色の発生を抑えるため、細部をぼかすための「ローパスフィルター」が組み込まれていますが、α7 IIIはその効果が弱く、そのぶん高解像になっています。
一方のEOS RPは、これまでの他の同社製品と同じく、しっかりとしたローパスフィルターの効果が見られます。例えば上の300mmの写真では、α7 IIIではビルの外壁のところどころに実際にはない赤や緑の偽色がわずかに生じていますが、EOS RPではあまり目立ちません。
両モデルともフルサイズらしい高画質ですが、あえて違いに言及するならば、高解像を重視する人にはα7 III、建造物や特定の衣服などの撮影などで生じやすいモアレや偽色を抑えたい人にはEOS RPが適しているといえます。
高感度画質を比較
最後に、高感度の画質を比較してみましょう。ノイズリダクションは初期設定の標準を選択し、感度ISO12800、25600、51200、102400で撮影しています。
【α7 III】
※上から順にISO12800、25600、51200、102400で撮影
【EOS RP】
※上から順にISO12800、25600、51200、102400で撮影
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<上の画像を部分拡大で比較>
結果は、どちらもノイズが目立たないように低減されており、ISO12800でも実用的な高画質が得られるといっていいでしょう。特にα7 IIIは、ノイズを抑えつつもディテールがきちんと維持できている点に好印象を受けます。EOS RPは、ISO51200や102400になると細部がややつぶれ気味になります。
【まとめ】価格と機能のバランスで選ぶべし
ボディ単体の実売価格(税込/2019年6月末時点)は、α7 IIIが24万3220円で、EOS RPが17万3340円。α7 IIIのほうが高価ですが、そのぶん、ボディ内手ブレ補正や最高10コマ/秒の高速連写、最高1/8000秒の高速シャッター、大容量バッテリーなどスペック面で上回る点が少なくありません。EOS RPは、一部のスペックを抑えることで、低価格を実現しています。
α7 IIIは、高解像や多彩な交換レンズ、ボディ内手ブレ補正を求める人におすすめです。一方のEOS RPは、小型軽量ボディと扱いやすい画像、求めやすい価格を重視する人におすすめできます。
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