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イヤホン
2021/10/28 18:45

シングルドライバーにこだわった約14万円のイヤホン! FAudioのフラッグシップモデル「Dark Sky」を聴いた

イヤホンといえば、昨今では“完全ワイヤレスタイプ”が人気ですが、音質最優先で考えれば、まだまだ従来の有線方式にアドバンテージがあります。さらに高音質を目指すなら、左右の音声信号を分離して伝送する「バランス接続」が欠かせません。バランス端子には2.5mm、4.4mm、XLRがありますが、ポータブルは4.4mmが主流になりつつ、据え置き型のヘッドホンアンプはXLRが定番になっています。今回は、音質重視派にオススメなバランス対応イヤホンとして、FAudio(エフオーディオ)のフラッグシップモデル「Dark Sky」を紹介したいと思います。

↑ FAudio「Dark Sky」は実売価格約13万9400円

 

イヤホン専用メーカーFAudioとは

FAudioは香港発のイヤホンメーカーです。創立は2014年で、カスタムIEMのリモールドとリシェルというユニークなサービスを開始して注目を集めました。2016年にカスタムIEMのKFシリーズを発売しており、近年ではユニバーサル型イヤホン「Major」を製品化しています。このMajorに採用されたのが、自社開発のダブルレイヤー構造のダイナミック型ドライバーを、空気室が3つあるアルミ合金製ハウジングに収めた高性能シングルドライバーです。

 

そのMajorをさらに発展させたのが「Dark Sky」です。本機のために新開発されたφ10.2mmのダイナミック型ドライバーを搭載。もちろん同社の得意なダブルレイヤー構造です。これは素材の異なる2枚の振動板を重ねることで同軸2Wayスピーカーのような効果を狙っています。レスポンスのいい低音を再生するためのファイバー素材を使った振動版と、解像度が高く高音の伸びがいいD.L.C.コーティングの振動板を重ねて使い、理想の特性を追求しています。

↑ハウジングはアルミ合金製で深いブルーにアルマイト処理されている

 

ドライバーを収めるハウジングはアルミ合金が使われ、3つの空気室が設けられています。2つの空気室でハウジング内の容積を最適化、空気の流れを制御することでドライバーの性能を引き出します。さらに最後の空気室は音導管と呼ばれるイヤーチップを装着する部品にあり、空気圧を制御して低域の解像度を向上させるとしています。

↑音導管にある空気室の穴をイヤーチップで誤って塞がないように注意が必要

 

専用ケーブルは3種類の端子に対応

「Dark Sky」はカスタム2ピン方式のリケーブルに対応。3種類の素材を使った「S.S.S.」と名付けられた専用ケーブルが付属します。ケーブルジャケットにはしなやかなPVCを使っているため、取り回しも良好。

↑ケーブルは編み込みタイプで1.2m、各部品はCNC切削で削り出している

 

デフォルトのプラグは2.5mmバランスを採用していますが、付属の変換コネクタを利用することで4.4mmバランスと3.5mmアンバランスにも対応可能。ポータブルオーディオで使われる端子はこの3つのいずれかなので、プレーヤーを買い換えて出力端子が変わっても、イヤホンを使い続けることができます。

↑変換コネクターを使って4.4mmバランス、3.5mmシングルエンドにも対応

 

さらに、シリコン製イヤーピース2種(各3サイズ)とフォームタイプ1種(1サイズ)が付属しており、好みに応じて使い分けることが可能。シリコンタイプは、ボーカルにフォーカスする「FA Vocal+」と、楽器の音を際立たせる「FA Instrument+」の2種類から選ぶことができます。

↑3種類のオリジナルイヤーチップが付属。試聴は中央の「FA Instrument+」を使用した

 

↑専用ケース、プラグアダプター、専用イヤーチップなど付属品も充実している

 

低音の量感と高解像な高音を両立したサウンド

カスタムIEMの主流がマルチドライバーである理由は、ワイドレンジで大音量を追求した結果といえます。広い帯域を再生しようとすれば、スピーカーと同じように低音用、中音用、高音用のドライバーを使ってマルチウェイ構成として、音の帯域を分けるためネットワークも必要になります。そうなるとハウジングは大型化され、重量も増えるというデメリットも出てきます。また、ドライバーが増えれば帯域ごとの位相を揃えるのが困難になり、音像定位や音場感の再現も難しくなります。

 

これに対してフルレンジのシングルドライバーは音像定位と空間表現が得意ですが、マルチドライバーと比較して再生できる音の帯域が狭くなります。まあ、理屈上はそうですが、スピーカーと違ってイヤホンは耳の近くで直接音を聴くため音のロスが少なく、ダイナミック型であればシングルドライバーでも充分な帯域が再生可能だと思います。

 

「Dark Sky」はシングルドライバーですが、2枚の振動板を重ねて使うダブルレイヤー構造を採用して、低域の量感を確保しつつ、解像度が高く伸びやかな高音を再生できます。もちろん、音像定位と音場感に優れるというメリットも加わります。

 

それではハイエンドDAPのA&ultima「SP1000」にバランス接続して、米津玄師「感電」を聴いてみましょう。イントロから50Hz付近の重低音が流れますが、それがダブ付かずにしっかり再生されます。空間にちりばめられたように広がるシンセの音が、粒立ちよく現れ、ボーカルは耳元でハッキリと聴こえ、音が前に出るタイプのイヤホンであることが分かります。

 

藤田恵美「Headphones Concert 2021/Let it Be」はアコースティックギターと女性ボーカルで始まるシンプルな構成で、録音にはTELEFUNKEN U47 Tubeという真空管を使ったビンテージマイクが使われています。コンサートホールを使ってスタジオ録音と同じ手法でレコーディングすることで、ボーカルのニュアンスをきわめて高音質で記録しているのも特徴です。このハイレゾ音源を「Dark Sky」で聴くと、ボーカルが耳元というか、頭の中に語りかけてくるような鮮明な音が再現されます。唇の動きが感じられるほどの至近距離で歌っているかのようです。途中から、アコーディオン、ベースも加わりますが、これらの楽器の音もとてもクリアーで、細かい響きまで伝わります。

 

据え置き型のフルバンス構成でクラスA動作のヘッドホンアンプSingxer「SA-1」に4.4mmアダプターを使って接続すると、低域はさらにタイトで低い方まで伸びてきます。高域はやや硬質でクリスタルガラスを思わせる透明感がありますが、BA(バランスドアーマチュア)型のイヤホンと比較するとボーカルが近い印象。音楽全体を俯瞰するのではなく、コンサート会場の最前列にいるようなライブ感が味わえるイヤホンといえるでしょう。

↑ヘッドホンアンプはSingxer「SA-1」をバランス接続で使用した

 

「Dark Sky」はその音質だけでなく、デザイン、質感、仕上げも上質で、同社のフラッグシップに相応しい完成度に達したモデルです。ただし、接続端子は4.4mmをデフォルトにし、アダプタで2.5mmに対応した方がいいかと思いました。また、ケーブルの接続方式も2ピンは強度に不安が残るため、独自規格でもいいのでもっと強固な接続方式にしてくれるとありがたいですね。

 

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