ビジネス
2023/10/2 19:30

ノー残業でサビ残が増える組織のイヌが知るべき「ワークライフバランス」の整え方とは?『組織のネコという働き方』著者が解説

「組織のイヌ」であることに疲れた人、違和感がある人へ。「組織のネコ」という存在を知っていますか? これは令和時代のサラリーマンに贈る、もっと自分に忠実に、ゴキゲンに働くためのヒント集。楽天創業期からのメンバーにして、同社唯一の兼業自由・勤怠自由な正社員となった仲山進也氏に学ぶ「組織のネコ」トレーニング、略して「ネコトレ」!

 

ネコトレVol.12「ネコとワークライフバランス」

 

制度はホワイト企業モデル。でも現実は……?

吾輩はイヌである。

 

名はポチ川アキ男、31歳。趣味は推し活。犬山電機10年目の中堅にして、未だ営業チームの副主任どまり。会社の指示には忠実に従っているので、もっと正当に評価されたいと思ってはいるものの、出世のレールは先輩社員の行列で大渋滞中……。

↑「我が輩はイヌである」(ポチ川アキ男)

 

会社の新たな取り組みとして「週3日のノー残業デー」が導入された犬山電機。社内には「整えよう! みんなのワークライフバランス」「ノー残業で人生を楽しく」など標語が掲げられるようになった。「週3日ノー残業デー」の曜日は各部署に委ねられることになり、営業部は月・水・金曜がノー残業デーに決まった。これらを管理するためにそれぞれの部署から「ワークライフバランス推進委員」が選出されることになったのだが……。

 

ハチ村「ポチ川くん、ちょっといい?」

ポチ川「なんでしょう、課長」

ハチ村「週3日のノー残業デーが始まった件で、君にもワークライフバランス推進委員になってもらうから」

ポチ川「(え、すでに仕事があふれてるんですけど……)わ、わかりました。具体的に何をしたらいいんですかね?」

ハチ村「それは、君が考えることだろう。明日の朝10時までにまとめておいて。さ、今日もノー残業デーだぞ。帰った、帰った!」

ポチ川「(え、明日10時って……実質、サービス残業なんだけど)」

ミケ野「お疲れ様でーす! お先に失礼しま〜す」

 

なんだよ。ミケ野のヤツ、ほぼ週5日ノー残業デーだな。なにやら毎晩のようにオンライン勉強会だかオンライン飲み会をやっているとか。そんな余裕があるなら、アイツに推進委員をやらせたらいいのに! っていうか、こういうのって、ふつう課長がオレの仕事を巻き取って自分の負担が増えることに悩む、とかが相場なのでは?

 

そんなことを思いながら、仕方ないので近場のカフェで仕事をやっつけた。このカフェには、「週3ノー残」が始まってから何度もお世話になっている。残業代は出ない、コーヒー代はかさむ、だから推し活に使えるお金が減る……これの一体どこがワークライフバランスだってんだ!?

 

だんだん腹が立ってきたオレは、カフェを出ていつものニャンザップに向かっていた。

↑今日もポチ川は、ニャンザップに向かっていた

 

ノー残業デーで、サービス残業は増すばかり?

ポチ川「こんばんは……」

 

ニャカ山トレーナー(以下、ニャカ山T)「おや、ポチ川さん。ずいぶんと遅い時間にいらっしゃいましたね」

 

ポチ川「もうサービス残業ばかりで、心も体も疲弊しちゃって」

 

ニャカ山T「サービス残業?」

 

ポチ川「うちの会社で『ワークライフバランスだ!』と、週に3日ノー残業デーが設けられたんです。通常業務だけでも忙しいというのに、僕はその推進委員に抜擢されたので、会議の資料を作ったりノー残業を続けていくための施策を考えたりしなければいけないんですが、それをやるためにサービス残業しているんですよ。しかも、同じく推進委員のハチ村課長は僕に仕事を丸投げするだけ。ワークライフバランスって、一体なんなんでしょう?!」

 

ニャカ山T「サービス残業しているのは、ポチ川さんだけなんですか?」

 

ポチ川「会社の近くのカフェで、たくさん社員を見かけますよ。だいたい、これまで毎日残業してたのに、いきなり週3日もノー残業デーなんて、仕事が終わるわけがないんですよ! そうでしょう?」

 

ニャカ山T「みなさんサービス残業をしているわけですね?」

 

ポチ川「ミケ野は毎日、定時に帰ってますけどね……」

 

ニャカ山T「ああ、“組織のネコ”のミケ野さんですね。量販店さんをつなぐコミュニティを立ち上げたということでしたから、夜な夜なオンラインで勉強会や飲み会でもやっているんじゃないでしょうか」

 

ポチ川「なんでわかるんですか!? そう言ってました!」

 

ニャカ山T「やはりそうでしたか。よいことですね」

 

ポチ川「全然よくないですよ! 職場のみんながサービス残業をしている中で、一人だけ週5日ノー残業ですよ? そんな余裕があるのなら、アイツが推進委員をやったらよいと思うのですが!?」

 

ニャカ山T「なるほど……、今日もなかなか凝っていますね。では、今回のネコトレのテーマは、『ライフワークバランス』にしましょうか」

 

「ワークライフバランスから「ライフワークバランス

ポチ川「ライフワークバランス? ……ワークライフバランスじゃなくて?」

 

ニャカ山T「そうです。ワークライフバランスは、ワークとライフを分ける考え方ですよね?」

 

ポチ川「そうですよ。定時まで働いて、あとはプライベートを充実しろということですよね。すなわち、推し活に励めと!」

 

ニャカ山T「はいはい。それに対して、ライフワークバランスは『いまやっている仕事のうち、どのくらいの割合がライフワークといえるか』ということです」

 

ポチ川「ライフワークの割合? えーと、そもそもライフワークってどういうことですか?」

 

ニャカ山T「仕事のステージには3つある、という考え方があります。『ライ“ス”ワーク』『ライ“ク”ワーク』『ライ“フ”ワーク』の3ステージです」

 

ポチ川「ライスワーク? お米??」

 

ニャカ山T食べるために働くのが『ライスワーク』、仕事が好きで没頭して働くのが『ライクワーク』、そして自分の使命に従って働くのが『ライフワーク』です」

 

ポチ川「……僕はどのステージなのでしょうか?」

 

ニャカ山T「ポチ川さんは、仕事が好きで没頭していますか?」

 

ポチ川「いいえ、まったく!」

 

ニャカ山T「では、ライスワークですね。もしかしたら、それ以下かもしれません」

 

ポチ川「それ以下?! どういうことですか?」

 

ニャカ山T「この図を見てください。【自己犠牲的←→自己中心的】【お金にならない←→お金になる】の2軸の4象限で考えると、“仕事してる風”という状態があります」

 

 

ポチ川「ムダな会議や資料づくり等って……僕の日常業務なんですけど……」

 

ニャカ山T「はい、仕事してる風ですね。自分を犠牲にしつつ、なんの価値も生み出さない作業をしている状態です。ここに該当する作業は、全力でゼロにすることが大事です

 

ポチ川「ゼロですか? もしそこがゼロになったら……週3ノー残でも余裕ですね」

 

ニャカ山T「その取り組みは、そういう業務の見直しをするために行なわれているのでは?」

 

ポチ川「そうなのか……。じゃあ、カフェでサービス残業してる僕って、ムダの極地じゃないですか??」

 

ニャカ山T「そういうことになりますね」

 

ポチ川「(ガーン!)ち、ちなみにミケ野がやってることはこの図でいうとどうなるんでしょうか?」

 

ニャカ山T「どう思われますか?」

 

ポチ川「会社から指示もされていない、お金にならないことをやっているわけですから、仕事をせずにただ遊んでるだけだと思ってたのですが……」

 

ニャカ山T「定時後に量販店コミュニティの活動をしていて、まだお金になっていないのであれば、ライフワークの種をまいていることになりそうですね。そのうち、そこに参加している量販店さんで犬山電機製品の売り上げが伸びたり、企業間でコラボが生まれたりするようになると、立派なライフワークになります

 

ポチ川「ううう……。なんかものすごい差をつけられている気がしてきました。僕はどうすればよいのでしょうか?!」

 

ニャカ山T「まずはワクワクする仕事の割合を2割にすることを目指してください。そうすれば、仕事が楽しいと感じられるようになるはずです」

 

ポチ川「……。具体的にどうすればよいか、まったくイメージがわかないのですが、何をすればよいでしょうか?!」

 

ニャカ山T「では、今日のネコトレをやってみましょうか。今回のトレーニングは『ハッピーメールを送る』です」

 

用件のないときに連絡をする「ハッピーメール」

ポチ川「はっぴーめーる?」

 

ニャカ山T「ポチ川さんは、特に用件もないのに量販店さんへメールをすることはありますか?」

 

ポチ川「は? そんなことはしませんよ。用事もなくメールするなんて非効率なことは」

 

ニャカ山T「では、それを1日3件やってみてください」

 

ポチ川「え! でも、内容は?」

 

ニャカ山T「なんでもいいんですが、ポイントは、こちらが先方のことを気にしていたり、先方の情報を見ていたりするのが伝わるような内容がよいですね」

 

ポチ川「あれ? それって……推しのSNSで毎日やってる気が。投稿にはすべて“いいね”を押しますし、推しが興味を持ちそうな情報をコメント欄に共有することが重要なんですよ!」

 

ニャカ山T「そうでしたか。では、同じことを量販店さんにやればよいだけですね。もちろんメールに限らず、SNSでもかまいません」

 

ポチ川「SNSでいいんですね! SNSで推しとの距離を縮めるためのノウハウ、まだまだありますよ! 聞きたいですか?!」

 

ニャカ山T「えーと、今夜はもう遅い時間ですから、ここまでにしましょう。また、いつでもいらしてくださいね」

 

今日のネコトレ

Vol.12
【1日3件『ハッピーメール』を送る

・お金にならず、ワクワクもしない『仕事してる風』をゼロにする
・残業をなくすではなく、ライクワーク・ライフワークを増やそう
・お客さんへのハッピーメールで、ライフワークの種をまこう

Vol.00から読む
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仲山進也

仲山考材株式会社 代表取締役、楽天グループ株式会社 楽天大学学長。
北海道生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。創業期の楽天に入社後、楽天市場出店者の学び合いの場「楽天大学」を設立。人にフォーカスした本質的・普遍的な商売のフレームワークを伝えつつ、出店者コミュニティの醸成を手がける。「仕事を遊ぼう」がモットー。

 


『組織のネコという働き方 〜「組織のイヌ」に違和感がある人のための、成果を出し続けるヒント〜』
1760円(翔泳社)
仲山進也氏による、組織の中で自由に働くためのヒント。組織で働く人をイヌ、ネコ、トラ、ライオンの4種類の動物にたとえながら、ネコと、その進化形としてのトラとして、幸せに働きながら成果を上げる方法を説く。

 

取材・構成/つるたちかこ イラスト/PAPAO