なにかと話題が絶えないクラフトビール。グルメのトレンド中心地である東京や横浜では様々な専門店や取扱店が増え続けていますが、いま業界で最も注目を集めているエリアといえば京都でしょう。なぜなら、9月7日に「SPRING VALLEY BREWERY」(スプリングバレーブルワリー/以下:SVB)の3号店目が京都にグランドオープンしたからです。ただ、実際現地を訪れてみたところ、実はSVBだけではなく町全体のクラフト熱がかなり沸騰している模様。今回は、その最前線に迫っていきたいと思います!
「クラフトビール」の正しい飲み方って知ってる?「グランドキリン」で学ぶクラフトビールの基本
SVBは京都ならではの凛とした設えと滋味深い料理が最高!
まずは、既存店が代官山と横浜にあるSVB。同店はキリンビールが手掛けていることで知られており、各地の小規模醸造所とのコラボや寿司のフェスなど攻めた企画を連発しているのがひとつの特徴です。もちろんビールと料理がおいしいということもあって既存の2店舗は連日大人気。京都店はどんな内容になっているのでしょうか。
お店は、烏丸駅や河原町駅から徒歩数分の場所にある、京都のなかでも人通りの盛んなエリア。近くには「錦市場」という400年以上の歴史ある商店街があり、訪日外国人でにぎわっていました。もちろん日本人の観光客も多く、京都のクラフトビールを発信する店としてはうってつけといえる好立地です。
本館は2フロア制で、1階は醸造所やキッチンも兼ねたスペース。そして2階は、スペースのほとんどがダイニングとなっています。離れの別館や中庭のテラスなども合わせた総シート数は134席。個室もあって多様なシーンで重宝しそうです。
料理はここオリジナルの逸品ばかり。ビールとのペアリングを第一に考えながらも日本の食材を積極的に生かした「和クラフト料理」がテーマになっていて、奥行きのあるおいしさになっています。
メニューリストにはオススメのペアリングが載っているので、同店が重視するフードペアリングを簡単に楽しむことも。なお、SVB京都では東京や横浜に負けない勢いでイベントを実施するとともに、京都の農家や伝統産業とコラボするなど、この地ならではの企画も計画しているとか。特に西日本に住んでいるビールファンにとっては目が離せませんね!
【SHOP DATA】
スプリングバレーブルワリー京都
住所:京都府京都市中京区富小路通錦小路上る高宮町587-2
アクセス:阪急京都本線「河原町駅」徒歩5分
営業時間:11:00~23:00(フードL.O.22:00、ドリンクL.O.22:30)
定休日:なし(年末年始除く)
京都とビールは古くから密接な関係があった!
SVBの誕生で沸く京都ですが、クラフトビールという観点で街を見てみると、すでに多くの専門店や醸造所があることがわかります。京都はご存知のとおり、伝統的な寺社仏閣が点在して街歩きが楽しい観光地。この機会に醸造所とビアパブに1軒ずつ取材に行ってきました。
訪れたのは、今年で設立20年となる「京都町家麦酒醸造所」。文化遺産となっている町家「堀野記念館」の敷地内にあるとともに、かつて銘酒「キンシ正宗」が造られていた場所(現在のキンシ正宗の酒造拠点は伏見に移設)です。
同醸造所の最大の特徴は、設立当初から一貫して京都の女性がつくっているということ。製法や味についてなどを、立ち上げ時から責任者としてたずさわる三好ちづ子工場長に聞きました。
「現在、私と小谷菜津子ブルワーの2人体制ですね。1週間に約1000リットル、330mlのビンで換算すると3000本分ぐらいを私たちでつくっています。魅力は、なんといってもこの中庭から湧き出る、桃の井の名水で仕込んでいるところ。淡麗で清らかなこの水の味が、うちのビールの命になっているんです」(三好さん)
なお、ここでビールの販売は行っていませんが、併設された居酒屋「奥満笑屋」で一部の商品を飲むことが可能。また、京都の各酒屋や百貨店、お土産屋さんなどでも売っています。ただ要冷蔵なので、土産にするならクール便がオススメですね。
【SHOP DATA】
キンシ正宗堀野記念館京都町家麦酒醸造所
住所:京都府京都市中京区堺町通二条上ル亀屋町172
アクセス:地下鉄烏丸線「丸太町駅」徒歩10分
営業時間:11:00~16:30
定休日:火、水(4~5月、10~11月の水曜日は開館)
最後に訪問したのは「BEER PUB ICHI-YA」(イチヤ)。ここは京都・一乗寺ブリュワリーがプロデュースする地元初のブルーパブで、オリジナルに他社のゲストビールを加えた常時10種類以上のクラフトビールを飲むことができます。
料理は先斗町にある豆腐料理店「豆八」が監修した豆乳白味噌おでんやおばんざいなど、和風のおつまみが中心。つまり、京都を代表するようなご馳走とクラフトビールのペアリングを堪能できるということですね。まさに京都らしいクラフトビアレストランといえるでしょう。
今回、代表の伴 克亘さんに、京都のクラフトビール事情について話を伺うことができました。京都といえば洗練された伝統文化が根付く街であり、食に関してもハイレベル。そんなこの地のビールに共通する特徴はあるのでしょうか。
「醸造所によって考え方の違いはあるかもしれませんが、京都は清らかな水や豊かな農作物に恵まれた土地。伏見の日本酒が良質といわれるように、おいしいビールができると思います。うちに関しての特徴でいえば、奇をてらわずにまっすぐなビールをつくっているというところですね。醸造に直接かかわるのはブリュワーの子らですけど、とにかくいいIPA、いいゴールデンエールといった風に、シンプルにおいしさを追求していると思います」(伴さん)
そして話は歴史にまで。聞けば、京都とビールの関係はかなり深いものがあるようで、「それは京都ではじまった」という本によると、日本におけるビアホールは京都発祥(一般的には、アサヒビールの前身である大阪麦酒が1897年、大阪に「アサヒ軒」を開業したというのが通説。ただ、1895年に京都で行われた「第4回内国博覧会」で、すでに大阪麦酒はビアホールを設置していたとか)のようです。
しかも、1870年には京都府の理系機関でビールの醸造研究が行われたいたという文献があり、これは日本初のビール醸造所「スプリングバレーブルワリー」(現在のSVBはいわゆるオマージュです。)の設立と同じ年! なんという偶然でしょうか。いずれにせよ、紅葉を迎えるこれからの季節。京都は1年で特に観光がアツくなるシーズンです。ぜひ美しい景色とともに、おいしいビールも満喫しましょう!
【SHOP DATA】
BEER PUB ICHI-YA
住所:京都府京都市中京区御幸町通蛸薬師下る船屋町384 Casa INO’s 1F
アクセス:阪急京都本線「河原町駅」徒歩3分
営業時間:11:30~23:00(L.O.)
定休日:なし