日本発の食文化・寿司がアメリカで浸透し、アボカドを巻いた新種のカリフォルニアロールというメニューが誕生。日本でも認知、一部の寿司店でも親しまれるようになりました。この流れと同じくして近年「寿司ブリトー」「ポキ丼」といった逆輸入メニューが話題になっています。しかし、まだまだその中身や実体についてわからない方が多いのではないでしょうか? 今回はいち早く寿司ブリトー、ポキ丼に着目し、主に飲食店に向けて新メニューとして提案をしている寿司ロボットメーカー「鈴茂器工」に話を聞きました。
寿司ブリトーもポキ丼もほぼ同じ食材でできる料理だった!
――まず、最近よく耳にする寿司ブリトー、ポキ丼とはどういったものなのかを教えてください。
小野寺 広さん(以下:小野寺) 寿司ブリトーもポキ丼も使う食材はほとんど同じです。まず、ハワイで、海鮮丼としてポキ丼が流行りました。ポキ丼は載せられた海鮮素材をかき混ぜて食べるものでした。
――かき混ぜると言うと、ビビンバのような感じでしょうか?
小野寺 いやビビンバよりももっと海鮮丼の印象が強い食感ですね。一方、寿司ブリトーはこれをもっと食べやすくしたもので、のり巻きに近いものです。ただし、こちらはご飯が少なく、ポキ丼よりも野菜を多めに使うので、シャキシャキしています。
駒田早紀さん(以下:駒田) ポキ丼に比べると、具が多い印象ですね。また、醤油ではなくエスニック的なソースをかけて食べるので、そうするとまた食感が違うわけです。
小野寺 これが私たち日本人には真新しい味で、とても美味しいです。ただ、どうしても口を開けてガブッとするものですから、アメリカ人の女性のなかには「口を大きくあけることに抵抗がある」という人もいて、こういう女性はポキ丼を食べることが多いとも聞いています。
弊社の寿司ロボットは、アメリカ、シンガポールの子会社や、世界80か国以上の国の代理店を通して輸出していますが、そうなると、海外の情報もいち早く入ってくるんですよ。
寿司ブリトーやポキ丼も同じで、アメリカの小会社から「西海岸にあるお店で、連日行列ができているメニューがある」という話を聞いて知りました。
そこで弊社のシャリ弁ロボ、海苔巻きロボットを使って作れるメニューを考案し、顧客の方々に「こんな新メニューはどうですか?」と提案させていただいているというわけです。
――つまり、鈴茂器工さんが、海苔巻きロボットや寿司ロボットの顧客である飲食メーカーやお店にメニュー提案をして、その後、各社、各店が採用すればこれからメニューが広まっていくかもしれない……ということですね。
小野寺 そうです。ですから、基本的にはうちのロボットを使って作るメニューをご提案させていただいています。
酢飯に合うものなら、どんな食材を合わせても良い!
――寿司ブリトーもポキ丼も鈴茂器工の機械を使わないと作れない……というわけではないんですよね。
小野寺 もちろんです。ただ、すでに弊社の機械を使われている飲食メーカーさん、飲食店さんでしたら、簡単に作ることができるので、新提案として展示会などでご紹介させていただいています。
――そういった飲食店で口にすることができれば一番ですけど、まだ少ないのが現状です。家庭で作る場合はどうやって作れば良いのでしょうか?
駒田 寿司ブリトーもポキ丼も、酢飯と海鮮を使うという点は同じで、あとは割と自由なんですね。例えば、酢飯を玄米にしてみたりしても良いですし、中に中華風に味付けをした海老を入れても良いです。
ただ、これだけ自由で何を入れても合うので、逆にメニュー考案にはかなり迷ったというのが正直なところです。
――最近の展示会で人気だったのは、どんなレシピですか?
駒田 「チキンガドガド」というものです。インドネシアでポピュラーなサラダにかけるドレッシング「ガドガド」とアメリカのピリ辛のチリソースを合わせたソースで食べるものです。酢飯にとりささみ、きゅうり、アボガド、あげ玉などを混ぜます。これもポキ丼、寿司ブリトー、どちらでも大丈夫です。
小野寺 最初はちょっと甘いんですが、後からピリっとするという味付けが結構やみ付きになります。
寿司ブリトー、ポキ丼制作に使うマシンは、すでに市場での圧倒的信頼を誇っていた!
――プロの現場で寿司ブリトーを作る場合に便利な海苔巻きロボット、ポキ丼を作る場合に便利なシャリ弁ロボはどういった機械なのですか?
小野寺 海苔巻きロボットは、シャリをほぐし、手巻き感覚の巻物を作るものです。また、シャリ弁ロボは、ボタンを押すだけでフワッとした美味しいご飯の一定量を瞬時に盛りつける機械です。
海苔巻きロボットは回転寿司に多く使われていますし、シャリ弁ロボは9割以上で、牛丼チェーンはほぼすべて弊社の機械が使われています。カレー店、天丼店も同じですね。寿司ロボットは7割くらいになるかどうかです。
――すごいシェアですね。
小野寺 こういう経緯があって、寿司ブリトーやポキ丼だけでなく世界中の寿司やお米にまつわる最新情報が何かと入ってきやすく、実践・提案しやすいんですね。
ライスバーガーの新提案も鈴茂器工のロボットによるものだった!
――鈴茂器工のロボットはプロユースですので、一般消費者が目にする機会はあまりありませんが、知らない間にその効果を受けていることが多いようですね。
小野寺 そういうことになるかもしれません。弊社の寿司ロボットをはじめ、おむすび成型機、シャリ弁ロボ、海苔巻きロボットといった機械は、かつてはすべて人間の手でやっていたものです。しかし、手間がかかるうえ、握りや量も人によって不安定になるところを、機械化することで、圴一化と効率化を図ることができます。こういったところから弊社のロボットが人に代わって握りや盛りつけ、海苔巻きなどを担うようになりました。
この一方、お米を使っての新メニュー、お米の新しい食べ方の提案も行ってきており、某ハンバーガーチェーンのライスバーガーというメニューは、もともとは弊社のライスプレート成型器を使って作られたものでした。浸透には至らなかったものの、かつてはピザの生地部分をお米で作ったライスピザ、サンドウィッチのパンの部分をお米にした寿司サンドなども考案したことがあります。
――お米にまつわる料理は、定番だけでなく、常に考えているということですね。
小野寺 はい。寿司ブリトーやポキ丼もそうですが、これまで培ってきた技術や、ロボットを使ってどんなことができるかは常に考え、挑戦していっています。
目下は弊社の機械を使って簡単にできる寿司ブリトー、ポキ丼が日本市場に浸透してくれることを願うばかりですが、これからも新提案、新メニュー開発はロボットの技術進歩同様に注力していきたいと考えています。
話題の逆輸入メニュー、寿司ブリトー、ポキ丼ですが、お米にまつわる機械を数多く開発し、研究をし続けてきた鈴茂器工が注目しているとあれば、やはり日本での浸透の日は近いかもしれません。どこかのお店で寿司ブリトー、ポキ丼を見かけることがあったら、いち早く試食されてみてください!