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2018/10/26 10:00

GetNaviプロデューサー、宮崎の焼酎蔵で「熟成焼酎」の深みにハマる! 「究極のレモンサワー」のための焼酎を探す旅

GetNaviプロデューサー、松井謙介は考えた。

 

最近、レモンサワーって人気だよな。某イケメンボーカルダンスユニットも愛飲しているというし、最近Lemonという曲もヒットしてるし。やっぱレモンサワー、来てるよな。ただ、いま飲んでいるレモンサワーもうまいけど、特別感というか、スペシャルなフィーリングが足りない……。もっとスゴイやつは作れないのだろうか。例えば、最高の素材を最高の配合で組み合わせてみたら……? もしかしたら、『究極のレモンサワー』ができるんじゃないか? オレの人脈をもってすれば、不可能ではない! よし。知識ゼロの超初心者だけど、やってやるぜ!」

↑決意を固めた瞬間の松井

 

「究極のレモンサワー」を志し、「最高の焼酎」を求めて宮崎へ!

「まずはレモンサワーの核となるもの……そうだ、焼酎を探そう!」

 

聞くところによると、大手酒造メーカー・宝酒造が所有する宮崎県の「黒壁蔵」には、樽で貯蔵した熟成酒がなんと約2万樽もあるという。そこまでの規模の蔵ならば、きっと理想の焼酎に出会えるはず……! さらにいえば、宝酒造はレモンサワー=「チューハイ」のパイオニア。チューハイの語源は「焼酎ハイボール」を省略したもので、缶チューハイも「タカラcanチューハイ」として1984年に発売したものが日本初となっている。当然、レモンサワーに関する知見も豊かなはず。ついでに、わからないことをいろいろ聞いちゃおう!

 

…というわけで、来ちゃいました! 宮崎へ!

 

宮崎県・高鍋町の「黒壁蔵」に到着! その規模と歴史に圧倒される

さらに宮崎空港から電車で約40分、宮崎県高鍋町にある宝酒造の焼酎製造の要、「黒壁蔵」に到着! 一歩足を踏み入れた松井は、まずその規模に圧倒された。ビルのような高さの黒壁の建物がズラリと立ち並び、貯蔵タンクは見上げるほど大きい。聞けばこの蔵、もともとアルコールを製造する官営施設で、戦時中は敵軍に狙われたこともあり、弾痕が残る蔵もあるとか。戦後に民間払い下げが実施され、1952年に宝酒造が落札していまに至る。

 

なお、宮崎は温暖な気候で知られているが、この高鍋の地の利はそれだけではない。東に日向灘、北に尾鈴山を望む自然豊かな環境が、焼酎作りに欠かせない清らかな水を育んでいるのだ。さっそく構内に入ってみると、入口付近で焼きいもを思わせるあま~い香りが漂い、ついつい気分も高揚してしまう。

↑「何て規模だ!」黒壁蔵の規模に圧倒される松井。ちなみに、建物の壁が黒いのは塗装ではなく、経年変化による自然な着色だとか。それだけの歴史がこの蔵には詰まっている

 

「乙類焼酎」と「甲類焼酎」の違いとは?

まずは、黒壁蔵の製造施設を巡る前に、焼酎ができるまでの基本を教えてもらった。お酒の種類は、大きく分けて2つ。穀物や果実を酵母でアルコール発酵させた「醸造酒」と、醸造酒を「蒸留」(※)して造る「蒸留酒」がある。一般的に、醸造酒は複雑な味わいになるのに対し、蒸留によってアルコール度は高くなるものの、糖やアミノ酸などのエキス分が残らないため、蒸留酒は雑味が少なく、クリアな味わいになる。そして、焼酎はご存じの通り、蒸留酒の一種だ。

 

「へえ~焼酎って蒸留して造るのか。というか本当にオレ、何にも知らないな!

※「蒸留」…アルコールの沸点が低い(約78.3℃)のを利用し、純度の低いアルコールを熱して気化させ、その気体を冷却してより純度の高いアルコールを得る工程のこと

 

蒸留を行う蒸留機には、「単式蒸留機」と「連続式蒸留機」がある。単式蒸留機は1回のみ蒸留を行う単純な仕組み。単式蒸留機によって造られた焼酎が乙類(おつるい)焼酎で、原料の風味が残るため、「本格焼酎」とも呼ばれる。一方、連続式蒸留機は単式蒸留機を連ねた複雑な構造。連続的にもろみを投入することができ、機械のなかで何度も蒸留ができる。この連続式蒸留機で造られた焼酎は甲類(こうるい)焼酎と呼ばれ、よりピュアな味わいになるのだ。

↑連続式蒸留機の模式図の解説を受ける。連続式蒸留機はタテに長く、竹の節のような仕切りで区切られていて、上に行くほど沸点の低いアルコールが取れる。反対に、下のほうには沸点の高いフーゼル油などの成分が多くなる。このように、沸点の違いを利用してアルコール成分を分離し、目的とする酒質を設計できる

 

なお、「⿊壁蔵」では乙類、甲類どちらも手掛けているが、今回、求めているのはレモンサワー用の焼酎。焼酎単体の味わいが主張するより、レモンのフレッシュ感を損なわず、高めてくれる焼酎がいい……つまり、選択肢は必然的に甲類焼酎に絞られるわけだ。ただし、ひとくちに甲類焼酎といっても、実に多くの個性があることを、このあと、松井は身をもって知ることとなる……。

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実物の蒸留機の見学で新たな発見が

座学が終わると、いよいよ実物の蒸留機を見学。頭上のはるか向こうまでそびえる連続式蒸留機を前に、興奮を隠せない。案内してくれた宝酒造の生産課・堀江俊輔さんによると「上に向かって一定間隔でいくつもバルブがついているでしょう? 実は、このバルブの位置に棚があって、その棚によって取れる焼酎の味が違うんですよ」とのこと。なんでも、ブレンドに必要な味わいのある焼酎を狙って、最適な棚から製品を取り出すのだとか。

 

「ええっ! ピンポイントで味を狙って造ってるわけ? しかもブレンドするって? ただ機械で造っておしまい、ってわけじゃないんだ…」。こだわった造りに、驚くばかり。

↑連続式蒸留機の説明をする堀江さん

 

↑複数のバルブが付いた連続式蒸留機

 

↑こちらは、別の棟にあった単式蒸留機。見学時も稼働中で、周囲には甘い香りが漂っていた

 

宝酒造のこだわりが詰まった聖地、樽貯蔵庫へ

続いて、熟成酒が眠る樽貯蔵庫へ。実は宝酒造、クセのない甲類焼酎の銘柄でも、樽で寝かせた熟成酒をブレンドして発売することが多い。それが宝焼酎のおいしさのヒミツであり、多彩なラインアップが用意できる理由でもある。そして、樽貯蔵庫は同社のこだわりが詰まった聖地ともいえる場所。ふだん、外部の人間に公開することはないというが……。中に入ってみると、一瞬で芳しい香りに包まれて、ああ、これはもうたまらない……。そして、はるか上まで積み上げられた樽、樽、樽! 圧巻の光景を目にして息を飲む松井であった。

↑堅固なラックが組み込まれた自動倉庫。1棟に約4000本が貯蔵されている。手動倉庫よりも多くの樽を格納でき、機械を使ってスピーディに移動や入れ替えができる

 

↑この樽は、アメリカンホワイトオーク製。1本に約450リットル入る大きさだ

 

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桜樽の中身を採取し、特別に香りを嗅がせてもらう

「⿊壁蔵」には、アメリカンホワイトオークを使ったタイプのほか、主に同社の宝焼酎「NIPPON」という革新的な甲類焼酎に用いる桜樽(1本220約リットル)も貯蔵されている。今回、手動倉庫と呼ばれるやや小規模な倉庫では、桜樽の中身も見られるということで、そちらへ移動。

↑手動倉庫。自動倉庫ほどではないが、十分な広さと高さがあり、樽に触れることもできた

 

手動倉庫では、スポイトのようなツールを使い、樽から貯蔵酒を採取して香りをかがせてもらった。今回は約6年貯蔵した熟成酒をサンプリング。「アロマが強い! オレくらいになると、この香りだけでボディのまろやかさがわかるね」

↑スポイトのような器具で樽から熟成酒をサンプリングする様子

 

官能検査室で熟成による香りの違いを比べてみたら

その後、実際に官能検査室で熟成による⾹りの違いを⽐べてみた

 

香りが……香りが丸いッ! 若い酒とはまったく違う!」

 

蒸留したての焼酎にはガスのような刺激臭を感じるが、熟成から3か月ほど経つにつれて刺激臭が減少し、やがて落ち着きのある風味となる。さらに数年をかけると樽貯蔵によるタンニンやバニリンなどの木の成分が加わり、芳ばしく甘い香りが生まれる。さらにまろやかさや甘さなどの複雑味が増加し、独特の味わいが形成されるのだ。

 

これはすごい。一見無個性に見える甲類焼酎でも、熟成することでここまで特徴を引き出せるのか……。松井は改めて熟成の奥深さを知り、この地を訪れたのが間違いではなかったと確信した。

↑左が「たれくち」と呼ばれる、熟成前。中央が数か月、右が数年もの

 

樽の内側を焦がして再生加工する現場も訪問

「樽のことをもっと知りたい!」樽の神秘に触れた松井は、続いて樽再生加工の現場へ。宝酒造では樽も「貴重な資源」と考え、「⿊壁蔵」では約10年熟成に使用して熟成効果の薄れた樽の再生加工を行っているのだ。何でも、樽を削って内部を焦がすことにより、さらに30~40年ほど使用することが可能になるという。ここまで1つ1つの樽を大切にする姿勢に、リスペクトを覚えた。

↑内側を焦がす「チャー」という作業のラスト。火力を上げて、焦げ具合を調整。その焦がし加減によって、のちの熟成度合いが変わる。チャーの作業が終わると、周囲には蘇った樽の甘い香りが漂っていた

 

↑樽の⾦具を外したり、締め直したりする機械もある

 

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15種類の焼酎をストレートとソーダ割りで試飲し、4種類の焼酎を決定!

では、いよいよ「究極のレモンサワー」にふさわしい焼酎を選ぶことに。今回は、宝酒造の知見に基づいた15種類の甲類焼酎が用意された。これらの銘柄は、「黒壁蔵」に眠る約85種類の樽貯蔵熟成酒を厳選し、それぞれ銘柄のコンセプトに応じて最適な配合でブレンドしたもの。そのこだわりを少しでも理解できるよう、松井も気を引き締めて試飲に臨む。

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↑定番の宝焼酎25°をはじめ、15種類の銘柄がズラリと並ぶさまはまさに圧巻!

 

松井はストレートのほか、ソーダでも割って試飲。宝酒造の担当者ともディスカッションしながら、候補を絞りこんでいく。その結果、選び出した銘柄とは……?

 

『宝焼酎25°』は、焼酎の甘みがストレートに来るね。思わず顔がほころぶウマさ。これは酒好きにはたまらないよ。『レモンサワー用25°』は、ソーダと合わせると、ハーブの香りが立って超爽やか。その名の通り、レモンサワーには絶対合うでしょ」

↑試飲によって銘柄を絞りこんでいく松井

 

↑レモンサワーにしたイメージを探るべく、ソーダでも割って試飲した

 

熟成酒を多く配合した焼酎も、強く印象に残った様子。

 

「この『純 25°』、ちょっと衝撃のウマさだね! わずかに苦味を含んだ複雑な味わいで、ソーダで割るとキリッと締まった印象になる。『レジェンド25°』は、個人的にはロックやストレートで楽しみたいところだけど、ソーダで割ったときの、この華やかな香りは捨てがたい。果たして、レモンと合わせたらどう化けるのか……想像もつかないのが逆に面白そうだ。よし、『宝焼酎25°』『レモンサワー用25°』『レジェンド25°』『純 25°』、この4種類に決めた! この4本のどれかが、必ず『究極のレモンサワー』の礎となるに違いない!

 

【松井が選んだ焼酎はコチラ】

左から定番の「宝焼酎」25°、レモン系の香り成分を含むハーブ等を使った宝焼酎「レモンサワー用」25°、11種類の樽貯蔵熟成酒を13%使用した宝焼酎「純」 25°、樽貯蔵熟成酒を20%使用した宝焼酎「レジェンド」25°。

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こうして納得のいく焼酎を手に入れた松井。だが、最高の素材を探す旅は始まったばかりだ。蔵を去る際、敷地の片隅にあった祠に向かい「どうか究極のレモンサワーが完成しますように……」と祈るのも忘れなかった。

撮影/我妻慶一

 

次回は本企画の番外編をお届け。カープのリーグ三連覇に湧く広島を訪れ「カープ女子」と本格レモンサワーでカンパイします。お楽しみに!

 

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