グルメ
お酒
2023/2/28 21:10

ビール復権の2023年、ビールに注力し続けてきたキリンが打ち出した策とは?

2023年のお酒トレンドでほぼ間違いないと予言できることは、「ビールの復権」。なぜなら、秋の酒税改正によりビールに追い風が吹く(ざっくり言うと、ビールが安くなる)からです。その見立てもあり、ビール大手が年初に行う発表会はどれもアツい内容でしたが、今回はキリンビールの事業方針発表記者会見の情報をもとに、商品周りの戦略を筆者の見解を踏まえてレポートします。

↑目玉施策のひとつがブランド力の強化。「一番搾り」と「スプリングバレー」シリーズを筆頭に、リニューアルなどを行いさらなる成長を目指すという

 

ブランドと人材を磨き、成長カテゴリーも強力プッシュ

2023年におけるキリンビールの戦略テーマは「ブランドと人材を磨き上げる」。「一番搾り」や「氷結」などボリュームゾーンの大きな商品はより強固に、「スプリングバレー」をはじめとするクラフトビールや自社のウイスキーなどは、新たな成長カテゴリーとして後押ししていくと打ち出されました。

↑キリンビールの堀口英樹代表取締役社長(右)と、山田雄一執行役員 マーケティング部長(左)

 

なお、お酒のカテゴリーとして追い風が吹くのはビールですが、「氷結」などの缶チューハイも引き続き伸長が見込まれるジャンルであり、ウイスキーもキリンビールが手掛ける「富士」や「陸」は、特に成長著しい銘柄です。

↑2022年の「氷結」ブランドは過去最高販売数量を更新。特に「氷結 無糖」は過去20年に発売したキリンブランド最速で5億本を突破するヒットに

 

なかでも具体的な施策が発表されたのは、やはりビールでした。ここでいう「ビール」とは、発泡酒や新ジャンル(第3のビール)ではないガチなビールのことを指しており、酒税改正で追い風が吹くのも、このガチなビールのことです(そのぶん発泡酒や新ジャンルは不利となります)。

 

どのように注力していくのか、詳しくレポートしていきましょう。まずは同社のフラッグシップ銘柄「キリン一番搾り生ビール」から。

 

主力銘柄を中心に、味とデザインが刷新される

「キリン一番搾り生ビール」は、近年では2017年、2019年、2021年とリニューアルを実施。ストレートに「おいしい」を訴求するコミュニケーションなども連動し、ビール離れがささやかれる昨今にあってもファンを増やしてきました。結果、直近の2021、2022年でも成長しているブランドです。そのうえで2023年もリニューアルが行われます。

↑リニューアルは、味とパッケージデザインともに行われる

 

味わいのポイントは、麦のうまみ向上と、仕込み工程の最適化。素材のポテンシャルを最大限に引き出すことで飲み飽きない味わいを実現し、さらに雑味や渋味を軽減することで、飲みやすい後味も実現したとか。

↑パッケージは右が進化版。ロゴやしずくが少し大きくなったり彩度が高められたり、全体の印象が明るくなったことで、よりおいしそうなデザインに

 

この新しい仕様へは、缶がこの1月から、ビンと生樽は2月製造品より順次切り替えられるとか。では次に、キリンのクラフトビールにおけるフラッグシップブランド「スプリングバレー」のポイントも紹介します。

↑左の豊潤<496>は味とパッケージが、右のシルクエール<白>は、パッケージがリニューアルされます

 

ビール離れといわれるなかでも、クラフトビールは全体的に好調なカテゴリー。かつては大型商品がなかったマーケットですが、2021年3月に「スプリングバレー 豊潤<496>」がデビューしたことで活性化され、以降の市場をけん引する存在となりました

↑パッケージは右のように刷新。シルクエール<白>も同様で、上部の3つのメダルをより大きく配し、ブランド名の印象が強く伝わるようにリニューアルされます

 

さらに2022年は9月に「スプリングバレー シルクエール<白>」が仲間入りし、クラフトビールカテゴリーの間口は過去最高水準に。とはいえ、クラフトビールの未飲消費者はまだ約4000万人いるそうで、2023年はさらなる認知と理解促進に向けて広告を売ったり、クラフトビールフェスを開催したり、家庭向けに「ホームタップ」・飲食店向けに「タップ・マルシェ」(後述)を展開するなど、包括的なアプローチをしていくそうです。

↑左が「ホームタップ」、右が「タップ・マルシェ」

 

また、厳密にはビールではないノンアルコールですが、この分野で注力していくビールテイストブランドが「キリン グリーンズフリー」。同銘柄は、2022年4月のリニューアル発売以降に販売数量が3800万本を突破し、前年同期比約2.7倍と、好調に推移しました。

 

また、自社のノンアルコール・ビールテイスト飲料商品と比較してノンアルビールを初めて飲む層や、しばらく飲んでいなかった層を多く獲得できており、カテゴリー全体の活性化に貢献したそうです。そこで2023年は前年比約2倍となる約210万ケースを目標に、中身とデザインリニューアルを実施する(1月製造品から順次切り替え)ほか、飲食店向けに336mlの小ビンが新発売されました。

↑デザインリニューアルと、小ビンはこの通り

 

「キリン グリーンズフリー」の販売強化により、ビールの代替として楽しむ消極的な飲用から、“リフレッシュしたい時に、飲み物の選択肢として好んで飲む”といった積極的な飲用のカテゴリーに進化させていくそうです。

 

個人的にはスプリングバレーの新作に期待!

個人的に今回の発表会で気になったのは、質疑応答時の「『スプリングバレー』ブランドの新フレーバー発売の可能性も模索している」との回答。というのも、「スプリングバレー」は缶としての銘柄は前述の豊潤<496>とシルクエール<白>のみですが、ビンでは黒ビールやフルーツビールなども展開されており、缶で商品化すること自体は難しくないはずなのです。

↑小瓶タイプの「スプリングバレー」は、キリン公式オンライン通販DRINXなどで販売中

 

なにはともあれ、まずは今春の各商品リニューアルに注目。そして本番となる、2023年10月1日の酒税改正に向けて、いっそうアツくなることでしょう。目が離せない2023年のビールシーン、GetNavi webでは今後も新商品発表などの際、積極的にレポートしていきます。

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】