数年前は探さなければ飲めなかったクラフトビールが、いまやコンビニで買える時代に。ブルワリー(醸造所)の数は国内600か所を超え、海外銘柄も続々上陸。ますますアツいこの世界の扉を開くなら、いまです!!
※こちらは「GetNavi」 2023年9・10月合併号に掲載された記事を再編集したものです。
開かれたビールの門戸は進化し続けて新たな時代へ
すっかり定着したクラフトビールだが、本記事では改めてその歴史を押さえていこう。
日本では1994年の酒税法改正で、少量生産でもビールの醸造免許が取得可能になり、各地に「地ビール」が誕生。しかし当時は造り手の知見や技術にバラツキがあり、品質が玉石混交。ファンを獲得できずに消えた銘柄も多かった。
ただ、志の高いブルワリーとそのビールを愛飲するファンの関係は水面下で継続。そして2010年ごろ、すでに米国で爆発的人気となっていた“本格”クラフトビールが日本にも伝播するなどして専門店が増えていった。
クラフトビールを語るうえで外せないのが、ビアスタイルだ。原料や製法によって分類されるビールの種類のことで、使う酵母と発酵方法によりラガー、エール、その他に大別される。さらにそこから醸造地域や原料で細分化され、その数、なんと100以上に。クラフトビールブーム前の日本と言えばラガーが大半を占め、「ビール=スッキリ爽快な喉越し」のイメージが定着していた。
しかしブームを受け日本でも、英国発の苦味の強いビアスタイル「IPA(インディア・ペールエール)」など、香りが豊かで複雑な味わいのものが多いエールを中心に、味の多様化が進んだ。なかでも「IPA」を独自に進化させるなど独創的な発想でシーンを盛り上げていた米国を意識するブルワリーの増加が目立った。このようにして「地ビール」は「クラフトビール」と呼ばれ市民権を得るようになった。
2010年代中ごろになると、醸造所を併設した飲食店「ブルーパブ」やクラフトビール専門の酒販店が次々に誕生し、欧州の実力派新興ブルワリーの銘柄も多く輸入されるようになる。続く2010年代後半には、ジューシーな苦味の「ヘイジーIPA」や「サワービール」が流行。そしていま、両者の特徴を生かした「サワーIPA」や果実味豊かな「スムージーサワー」が人気を集めるなど、さらに多彩になっている。加えて、新興勢力としてアジアのブルワリーも台頭。まさにいま、クラフトビール市場は新時代を迎えている。
【GetNavi流 クラフトビール3大定義はコレだ!】
1 造り手のパッションがあふれている
マイクロ(小規模)ブルワリーから世界的なブランドになった例も数多。規模の大小以上に、ブルワー(醸造家)が己の信念を貫き、創造性やパッションをみなぎらせて造っていることがクラフトビールの絶対条件と言えるだろう。
2 素材や製法が多様で味わいに個性がある
クラフトブルワーが持つ情熱のひとつが、過去に例がない絶品ビールを造ること。だからこそ、ときに奇想天外な素材を入れたり、大胆な手法で発酵や熟成をさせたりする。そんな自由な発想から生まれる個性的な味も魅力だ。
3 ビールの楽しさを広げてくれる
爽快感や苦味のほか、甘味や酸味、旨みや果実味など多彩なおいしさを味わえるのが醍醐味であり、適温やグラス、料理との合わせ方など嗜み方も千差万別。未知なる味に出会えることも多くて楽しい酒、それがクラフトビールなのだ。
構成/鈴木翔子 文/中山秀明 撮影/高原マサキ(TK.c)