2023年はジャパニーズウイスキーが100周年を迎えて盛り上がっています。着工から100周年を迎えるサントリーの山崎蒸溜所と双璧をなす白州蒸溜所も、実は50>周年のアニバーサリー。施設のリニューアルが行われるとともに新たな見学ツアーの受付が始まりました。その概要や見どころを現地で取材してきたのでレポートしましょう。
白州は世界的にも稀有な蒸溜所
白州蒸溜所最大の特徴が、そのロケーション。海抜約700メートルの高さにあり、雄大な森に囲まれた立地は世界的にも珍しく、なおかつ敷地面積も実に広大。また、隣に「サントリー天然水 南アルプス白州工場」が設えられている(しかも無料で見学可能/事前予約制)という環境はきわめて希少といえるでしょう。
「白州」とは、この蒸溜所のモルト原酒だけでつくられるシングルモルトウイスキーのこと。そもそもシングルモルトは、ブレンデッドウイスキー(モルトウイスキー原酒とグレーンウイスキー原酒をブレンドする)に比べて個性的な味が特徴で、その個性はいわば、“土地の個性”です。本記事のラストでテイスティングの模様をレポートしますが、この雄大な森をイメージさせる味わいこそ「白州」独自の個性であるといえます。
なお、この先にあるのが見学エリアにあたる蒸溜所や天然水工場ですが、入場するには事前予約が必要となります。ただ、このビジターセンターまでは予約不要。旅行途中などにふらっと立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
ツアーは有料ながら金額以上の価値がある!
ここからは有料見学ツアーを紹介していきましょう。内容には希少な白州のテイスティングやオリジナルグラスの贈呈も含まれており、プライス以上の価値があることは間違いありません。ツアーは所要時間約90分で3000円(税込)の「白州蒸溜所 ものづくりツアー」と、約130分で5000円の「白州蒸溜所 ものづくりツアー プレミアム」を用意。ともにガイドが案内し、質問にも答えてくれます。
「白州蒸溜所 ものづくりツアー」は、仕込槽、発酵槽、単式蒸溜器(ポットスチル)、樽の貯蔵庫など、製造の順を追って見学し、新設された「セントラルハウス」内のテイスティングルーム「バー 白州」で「サントリーシングルモルトウイスキー白州」と「白州森香るハイボール」のほか、希少なモルトウイスキー原酒も試飲できるという内容。
一方「白州蒸溜所 ものづくりツアー プレミアム」は、通常のツアーに加え、貯蔵庫内でのテイスティングや、これまで公開していなかったグレーンウイスキーの施設見学、樽詰め作業の見学などがプラス。また、テイスティングでは「白州12年」が試飲でき、グラスに加えグラスホルダーも持ち帰れます。
五感で満喫できる見学ツアーの醍醐味
では、見学ツアーの一部を紹介しましょう。冒頭で触れた蒸溜棟に入ると、ウイスキーの原料を展示したコーナーが出迎えてくれます。その先には製造工程をプロジェクションマッピングとともに解説するコーナーとなり、ここだけでもつくり方の概要を学べます。
この発酵における白州蒸溜所の独自性は、すべて木桶を使っていること。木桶はステンレス槽に比べて洗浄や管理が大変ですが、保湿性の高い木を使うことで微生物がより活性化し、土地の個性が酒質にいっそう生かされるというメリットがあります。
■蒸留
お次は、蒸溜所のシンボルともいえる蒸溜室へ。ここにドーンと並ぶ巨大な釜がポットスチルと呼ばれる単式蒸溜器で、このなかにもろみを入れて蒸溜を行います。多彩な原酒をつくり分ける狙いがあるため、様々な形のポットスチルを使用することも特徴。
■貯蔵(熟成)
そして、これまた見学のハイライトといえる、樽の貯蔵庫へ。見学できるのは巨大なラック式ですが、施設内には木製のラックで組み上げるダンネージ式という伝統的なウェアハウスもあります。
ツアー参加しなくても場内見学を予約すれば博物館見学や有料試飲はOK
なお、有料ツアーに参加しなくても、前述の「セントラルハウス」やその横にある「ウイスキー博物館」は場内見学を予約(先着順)すれば無料で入館可能。また「セントラルハウス」内にはテイスティングラウンジがあり、ここでは「白州」ブランドをはじめ希少なウイスキーのテイスティングや、「サントリーシングルモルトウイスキー白州」と合わせたフードペアリングなどを楽しめます。
「ウイスキー博物館」も学べる要素が満載。白州の歴史を映像や展示で知れるほか、日本初の本格ウイスキー「サントリーウイスキー(白札)」や、デビュー当時の「角瓶」「サントリーオールド」といった銘酒のボトルがズラリ。また、かつて稼働していたポットスチルやウイスキー樽なども展示されています。
バースプレイスで嗜む白州は森の妖精がくれた宝物
最後にあらためて、白州はどんな味わいなのかをテイスティングレビューとともにお伝えしましょう。まずは独自のレシピが存在する「白州 森香るハイボール」から。
こちらは、仕上げに軽く叩いたミントの葉を入れることがポイントです。ほのかな甘みや酸味が浮かび上がり、やさしい燻香が調和します。まさにこの森を彩る若葉のような、心地いいフレッシュ感がたまりません。
そしてもう一杯は、今回の取材会で特別に提供された25年もの。これは香りからして堂々とした重厚感があり、赤身がかった琥珀色も円熟の極み! 干し柿やドライフルーツを思わせる果実味に、ダークチョコやバタースコッチのような深い甘みも印象的です。
濃密な甘さをフルーティーなニュアンスがエレガントに昇華。余韻にはスモーキーフレーバーをまとった果実味が長く続き、ひときわ贅沢な気分に。
世界的なシングルモルトブーム、ジャパニーズウイスキーブームによって「サントリーシングルモルトウイスキー白州」も人気ですが、それが、お膝元である白州蒸溜所の見学を予約すれば飲むことができます。アクセスはJR「小淵沢駅」から無料のシャトルバスも運行されているので、まずは公式サイトをチェックしてみてください。
【PLACE DATA】
サントリー白州蒸溜所
住所:山梨県北杜市白州町鳥原2913-1
営業時間:9:30~16:30(最終入場16:00)
休館日:年末年始、工場
休業日(臨時休業あり)
アクセス:JR「小淵沢駅」から無料シャトルバスで約20分(運行していない時期、日程もあります)
https://www.suntory.co.jp/factory/hakushu/
撮影協力/松村広行