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2024/7/8 18:11

ビールがスイーツにも合う!?7皿×10種のペアリングをプロの解説付きで楽しめる贅沢な新クラフトビール体験が驚きの連続だった

キリンが手掛けるクラフトビール醸造所併設のレストラン「スプリングバレーブルワリー東京」が、2024年5月30日に全館リニューアルを果たした。1階は、エントリー層でも気軽に楽しめるビアパブに。そして2階は、落ち着いた空間でコースを楽しみながら様々なクラフトビール体験ができる空間に進化したのだ。

↑開業初の大幅リニューアルが実施された「スプリングバレーブルワリー東京」。「代官山駅」から徒歩4分、「恵比寿駅」から徒歩8分の場所にある

 

コース主体の2階では、パーティー向けのプランと、専属スタッフがコンシェルジュとなるプランが提供されているが、今回紹介するのはその後者。「ペアリングカウンターコース」を実体験し、全容を明らかにしたい。

 

ビール10種×7皿コースを解説付きでペアリング

「ペアリングカウンターコース」は、コの字型の専用シートで。ひとり1万5000円(税込)の完全予約制だ。店舗限定醸造ビールを含む計10種のクラフトビールを、7皿のコース料理に合わせてスタッフが提供する。

↑担当するのは、ビアコーディネイターの資格を持つプロフェッショナル。この日は2015年の開業当時から同店で働いている、副店長の大和 傑(すぐる)さんが担当

 

提供される料理は、食材の旬に合わせて年4回刷新。今回紹介する夏季メニューは6~8月のシーズナルとなり、9~11月は秋の味覚が登場するという。

 

ちなみにペアリングとは「フードペアリング」のことであり、料理とお酒の美味なる相乗効果を指す。ワインの世界ではマリアージュともいわれる。「スプリングバレー」ブランドでは以前からペアリングの醍醐味を訴求してきた。なぜなら、味わいが個性的かつ多様的なクラフトビールは、ペアリングに着目することでより楽しめるから。

↑1階のメニュー例(発表会用の試食プレート)。「磯のりと山椒の焼鳥ビスマルク」や、市場で商品にならなかった未利用魚を使う「本日の魚介マリネ 3種盛り」など、こちらでもビールとのペアリングをプッシュ

 

「ペアリングカウンターコース」は、この“哲学”をプロの視点から提案するプランといえるだろう。そのうえでのポイントが、コース料理もビールありきで考案されているところ。先に10種の“推しビール”と構成を決め、そこからリストを元にシェフが7皿をクリエイションするのだという。

↑「スプリングバレーブルワリー東京」の統括料理長、斉藤正博シェフ。初代統括料理長である大高英樹シェフの右腕として、長年クラフトビールのペアリングメニューを考案してきた

 

「よく“口内調味(こうないちょうみ)”といわれますが、ビールを飲み込む前に料理をじっくり味わうことで、よりペアリングの面白さがわかりやすくなります」と大和さん。ではどんなビールと料理が組み立てられているのか、一皿ずつ紹介していこう。

 

ビールが複雑な味を面白いハーモニーへと昇華する

まずは3杯のビールが登場。“初めの1杯、飲みやすい、低負荷”がテーマで、パッションフルーツやグレープフルーツのような果実味とアルコール度数4%のライトな「代官山セッションエール」、缶でもおなじみのまろやかなホワイトビール「シルクエール<白>」、あたたかみのある甘みと酸味が調和した「磯崎さんちの小田原みかん」がサーブされた。

↑左から、「代官山セッションエール」「シルクエール<白>」「磯崎さんちの小田原みかん」。なお、磯崎さんとはキリンホールディングスの磯崎功典会長のこと

 

スターターとなる先付は「空豆ポタージュと豆乳エスプーマ」。空豆のコク深い甘みにクリーミーなニュアンスが加わったポタージュは、ほっこりとした口どけと相まって絶品。皿にはドライ、焼き、蒸しと3種の調理で仕上げた空豆ものり、枝豆とは一風異なるリッチなビールペアリングに。

↑「空豆ポタージュと豆乳エスプーマ」。エスプーマとは、素材と亜酸化窒素ガスを混ぜた泡状ムースのこと(または、その調理機器)

 

2皿目は「たらば蟹と日向夏のサラダ仕立て 白インゲン豆のバニラピュレとキャビア添え」。サラダの野菜にはホワイトセロリが主に使われ、レモンベースのドレッシングとともに清々しい爽快感を演出する。

↑「たらば蟹と日向夏のサラダ仕立て 白インゲン豆のバニラピュレとキャビア添え」。バニラピュレを合わせると、どこかファンタジックな味わいになるのが面白い

 

ここでビールは次のテーマ“和食(海鮮など)とよく合う”に。注目は、同店でもこのコースでしか飲めないセゾン(ベルギー生まれの夏ビール。セゾン酵母由来のフルーティーな香りが美味)「特醸〜白麹和え〜」。さらに「ジャパンエール<香>」と、ゆず&山椒で日本ならではのホワイトビール(オレンジ&コリアンダーのベルジャンホワイトに対して)を目指した「デイドリーム」の計3種を味わう。

↑「特醸〜白麹和え〜」。白麹は爽やかなクエン酸を生成するのが特徴で、酒では焼酎で頻用されてきた。ビールで用いるのはなかなか珍しい

 

料理の3皿目は「炙り甘鯛と3種の香り 南高梅/バジル/新ごぼう」。塩を振ってねっとりさせた甘鯛を炙り、3種のプレゼンテーションで味付けを変え、3タイプのビールと組み合わせて多様なペアリング提案を試みている。

↑ソースによる味の変化だけではなく、南高梅には大葉やきぬさや、バジルにはビーツ、新ごぼうにはディルなど、あしらいも工夫されている

 

3種のビールは、どれも和風な味わいを狙って造られているだけあって、食材の繊細なタッチやうまみと調和する。そして4皿目は、「グリーンアスパラガスとパンチェッタベジョータ 鵠沼魚醤のブールノワゼット」。イベリコベジョータのバラ肉塩漬けや、焦がしバターで香り付けした和風フレンチである。

↑「グリーンアスパラガスとパンチェッタベジョータ 鵠沼魚醤のブールノワゼット」。クミンを用いたエスニックオイルも、香り高いアクセントに

 

味は青みをはらんだアスパラのうまみにパンチェッタの甘みが加わり、贅沢なふくよかさ。そこにエスニックオイルを合わせると、ガラリとオリエンタルな表情に。この複雑さを面白いハーモニーへと昇華するのがビールだ。特に「特醸〜白麹和え〜」のスパイシーな果実味は、食材とソースの個性を得意げにまとめ上げる懐の広さを感じられた。

 

メインから締めまでもビールによる驚きと発見が連続

料理はいよいよメインディッシュに。その前に登場した3種のビールは“メイン(肉など)に負けない力強さ”がテーマ。「豊潤<496>」「ジャズベリー」「ジューシーホップ」がサーブされた。

↑左から、「豊潤<496>」「ジャズベリー」「ジューシーホップ」

 

缶商品でもおなじみの「豊潤<496>」は、麦のうまみとホップの上品な香りが特徴。「ジャズベリー」は、ラズベリーの甘やかな香りと酸味がホップの果実味と調和した個性的な銘柄である。

 

そして「ジューシーホップ」は、昨今のクラフトビールで人気のビアスタイルHAZY IPAを思わせる、トロピカル調の風味とエネルギッシュな苦み、濁りのあるスムースな口当たりが魅力。合わせる5皿目は、メインにふさわしい肉料理が登場した。

↑メインの「岩手短角牛のみりんマリネ ペドロヒメネスとみょうが麦みそ」。ペドロヒメネスとは、甘く濃厚なシェリー酒のこと(または、その醸造用ぶどう品種)

日本短角種(和牛品種のひとつ)の名門ブランド「いわて短角和牛」は、高い希少性とうまみ豊かな赤身肉が特徴。グリルする前にマリネされているためよりジューシーかつしっとりした食感で、かむごとに広がる肉のおいしい多幸感もひとしお。

↑付け合わせの野菜グリルや、パートブリック(パリパリとした丸型クレープ状の生地)、ソース類も見事なアクセントに

 

ステーキが、ソースの組み合わせで和風にも洋風にも味が変化するように、合わせるビールも感じ方は三種三様。「豊潤<496>」には香ばしいパートブリックもよく合い、「ジャズベリー」のキュートな果実味は肉の甘みと調和。また、みょうが麦みそはそのままでもビールのアテになる魔性のおいしさを秘めていた。

↑締めでお目見えした6皿目。「雲丹とグリュイエルチーズの焼きリゾット コンソメとトリュフ」

焼きリゾットはジャポニカ米を使っていることもあり、洋風おにぎり茶漬けのような遊び心を感じる一品。チーズのクリーミーなタッチが米と調和し、焼かれた部分は香ばしさを演出。うにの贅沢で力強いうまみはチーズの濃厚なコクとマッチし、ビーフコンソメのふくよかな肉のダシ感が全体をしっかり包み込む。トリュフの香りがさらに贅沢感を醸し出し、ビールとの調和もよりリッチに。

 

そしてラストのビールは、“締めの1杯、甘いデザートなどと調和する”をテーマに、昨冬缶でも限定発売された「アフターダーク」。7皿目の「黒胡麻ムースぎゅうひ包み 黒糖とビターチョコレート」とともに提供されました。

↑「アフターダーク」(右)と「黒胡麻ムースぎゅうひ包み 黒糖とビターチョコレート」(左)

 

「アフターダーク」はラクトース(乳糖)とロースト麦芽を活用した黒ビールで、エレガントな甘みや酸味と重厚な香ばしさが、エスプレッソラテを思わせるおいしさ。もちもち、ほわんとした食感のスイーツはねっとりした口どけと甘さが絶品で、その味わいをコーヒーのようなビールが新感覚のデザートタイムとして体感させてくれる。

 

なお個人的な「アフターダーク」との推しペアリングに、オープン時から「スプリングバレーブルワリー」で人気の「特製焼きチョコレートケーキ」がある。こちらはグランドメニューなので、昼夜問わずぜひ1階でお試しを。

↑以前取材した際の「特製焼きチョコレートケーキ」と「アフターダーク」。フレークソルトがチョコレートの甘さを引き立てる

そんな同店は、2015年の開業から全店の累計来場者が今年6月に200万人を突破。そのお祝いと感謝を伝える目的で、7月12日まで“ENJOY! CRAFT 夏”企画が開催されている。内容は、レギュラーサイズ(350ml)の「豊潤<496>」を通常価格の半額で提供し、さらに、インスタグラムをフォローするとオリジナルステッカーを1枚プレゼントするというもの。「スプリングバレーブルワリー」の東京1階と、京都でも開催されるのでぜひこの機会に。

↑「スプリングバレーブルワリー京都」。「四条駅」から徒歩7分、「京都河原町駅」から徒歩5分の場所にある

「スプリングバレーブルワリー」は来春で誕生10年。その間、日本でもクラフトビールは徐々に広まり、専門店やブルーパブ(醸造所併設型レストラン)も珍しくなくなった。とはいえ、今回紹介した「ペアリングカウンターコース」のようなプランを提供している店はほぼないといえるだろう。ビール好きの人は、ぜひ体験してみてはいかが!?

 

【SHOP DATA】

SPRING VALLEY BREWERY TOKYO(スプリングバレーブルワリー東京)

住所:東京都渋谷区代官山町13-1 ログロード代官山

営業時間:11:00~23:00(L.O.22:00)※テラス席は22:00まで営業(冬期をのぞく)

休業日:不定休

アクセス:東急東横線「代官山駅」北口徒歩4分、JRほか「恵比寿駅」西口徒歩8分