デジタル
パソコン
2025/3/26 12:00

2025年ビジネスPCのファーストチョイスかも。 AIフル活用の超軽量モデル「FMV Note U」レビュー

2025年1月にブランドリニューアルを行なった富士通クライアントコンピューティング(FCCL)のFMVシリーズ。刷新とともに新たにリリースされたノートPCが、若年層をメインターゲットに据えた「FMV Note C」と、AI活用に特化したCopilot+ PCの軽量ノート「FMV Note U」(以下、Note U)の2機種です。

 

この記事では、Copilot+ PC準拠のノートPCとして世界最軽量を誇るNote Uをレビューするとともに、実際にCopilot+ PCとしての使い勝手も紹介していきます。

 

Copilot+ PC準拠で14インチ世界最軽量。使いやすさが光るモバイルノート

↑FMV Note U。指3本で軽々と持てるほどの重量。日々の持ち歩きも苦にならない。

 

直近のFMVブランドの特徴のひとつに、多くの軽量ノートPCをラインナップしていることが挙げられます。現状、14インチディスプレイ搭載PCで世界最軽量の機種は同ブランドの「FMV ZERO」で、重量634gと圧巻の軽さを実現しました。同じ14インチディスプレイ採用のNote Uはそれにこそ及ばないものの、重量は1kg切りの848g。これは、Copilot+ PC準拠のノートPCとしては世界最軽量となっています。

 

実際にキッチンスケールで本体重量を測定してみると、821gとカタログ値よりもさらに軽い値となっており、指3本で軽々と持てるほどの重量でした。軽さに加え、アメリカ国防総省の調達規格である「MIL規格」準拠のテストをパスしている堅牢性の高さも魅力で、持ち運びの多いビジネスパーソンを意識した作りになっています。

 

展開してみると、まず目についたのはベゼルの細さ。特に左右のベゼル幅が小さく、通常の14型ノートよりもコンパクトな印象を受けます。

↑左右のベゼル幅は実寸で約4mm。上部のベゼルも約7mmと細め。

 

キーボードはテンキーなしで、「かな」を表記しない日本語配列を採用。一段下に下がったカーソルキーの横には「Copilotキー」が配置されています。タッチパッドは最近主流のクリック一体型ではなく、別途物理キーを搭載しているため、ドラッグ&ドロップなどがやりやすく感じて好印象でした。

↑キーボードにかな表記はないものの、しっかり日本語配列を採用。クセがなく使いやすい。

 

インターフェイスが豊富なことも特徴の一つです。左側面にはセキュリティロック、Thunderbolt 4(USB4 Gen3)Type-Cポート×2、USB 3.2 Gen1 Type-Aポート、ヘッドホン・イヤフォンジャックが並びます。

↑充電にはUSB Type-Cポートを使用する。7.5W(5V/1.5A)以上を供給可能な対応機種であれば、モバイルバッテリーからの充電も可能。

 

右側面には有線LANポート、映像出力用のHDMI端子、USB 3.2 Gen1 Type-Aポート、microSDカードスロットを用意。ビジネス用途などで求められるインターフェイスは一通り揃えているほか、microSDカードを利用できるのが特徴と言えます。

↑microSDカードスロットを用意しており、別途カードリーダーがなくともデータの読み出しや保存ができるのは便利。

 

同時期に発売された若年層向けモデルのNote Cはシンプルさを強みとしており、インターフェイスはType-Cポートが2基のみとかなり抑えられていました。スッキリとしていてデザイン的には好印象でしたが、ビジネスの現場で使用する場合はこのくらい豊富なほうが何かと安心と言えるでしょう。

 

メインのビジネスPCとして活躍できるスペック

本機種には店頭などで販売されるカタログモデルと、富士通のパソコン通販「WEB MART」のみで販売される、SSDやメモリーなどが選択可能なカスタムメイドモデルの2種類があります。

 

ここでは、カタログモデル(FMV UA-K1)の基本スペックをまとめてみました。

 

Note U スペック抜粋

CPUインテル Core Ultra 7 プロセッサー 258V
コア数/スレッド数8コア/8スレッド
動作周波数Pコア:最大4.8GHz、低消費電力Eコア:最大3.7GHz
NPUインテル AI Boost(最大47TOPS)
GPUインテル Arc グラフィックス 140V(CPUに内蔵)
メモリー32GB(オンボード/増設・交換不可)LPDDR5X-8533
ストレージ約512GB SSD(PCIe Gen4)
ディスプレイ14.0型ワイド、1920×1200ドット、ノングレア液晶
OSWindows 11 Home 64ビット版
ネットワークWi-Fi 7、Bluetooth v5.4、1000BASE-T/100BASE-TX/10BASE-T
インターフェイスUSB Type-C×2(Thunderbolt 4)、USB Type-A×2、HDMI、microSDカードスロット
WebカメラフルHD Webカメラ(プライバシーシャッター付)、Windows Hello対応
バッテリー駆動時間JEITA 3.0(動画再生時)約15.5時間、JEITA 3.0(アイドル時)約36.0時間
サイズ308.8×209×15.8~17.3mm
重量約848g
カラーピクトブラック
オフィスソフトMicrosoft 365 Basic + Office Home & Business 2024

 

スペック面で最初に注目したいのは、搭載CPUがインテルの「Core Ultra 7 258V」である点です。このCPUの大きな特徴は、AI系タスクの処理能力に優れるNPU(Neural Processing Unit)を内蔵していること。これにより画像認識や言語処理といったAIタスクを高速で実行できますし、本機が後述するCopilot+ PCについての要件を満たしているのも、ひとえにこの高性能なモバイル向けCPUを搭載しているがゆえです。

 

もう一つ、注目すべきポイントはバッテリー駆動時間でしょう。Core Ultraプロセッサーは省電力性にもすぐれており、本機種は動画再生時でも約15.5時間、アイドル時約36時間の長時間駆動を実現しています。まる一日ACアダプターを持ち歩かなくとも済むことで、本機の軽さを存分に活かせるのも大きな魅力ですし、1日ぐらいなら充電を忘れて外出しても何とかなります。

 

他のスペックに目を向けても、Wi-Fi 7の搭載、Office付属など、ビジネスPCに求めるものは一通り揃っている印象です。メモリーはオンボードのため増設・交換ができないものの、容量自体は32GBなので、ビジネス用途ならばほとんど問題にならないと言えるでしょう。

 

Copilot+ PCとしてもしっかり使える? Windows Insider Programでチェック

↑昨年から対応モデルがリリースされはじめたCopilot+ PC。今後増えるであろうAI系のアプリや機能をしっかり利用したい人にとっては特に注目に値する。

 

冒頭で述べたとおり、Note Uは”世界最軽量のCopilot+ PC”です。最近のモバイル系ノートPCにはこの”Copilot+ PC”に準拠したモデルが増えていますが、まだ登場からあまり時間が経っていないこともあり、そもそもこれが何かを知らない、という人も多いでしょう。ひとまずCopilot+ PCについて簡単に解説していきます。

 

まず「Copilot」とは、Microsoftが開発したAIアシスタントのことです。文章作成や画像生成など、さまざまなタスクを支援してくれる機能を揃えており、今後も徐々に機能が拡張されていく見込みです。そしてCopilot+ PCは、AI機能を最大限に活用するために設計されたWindows PCのことで、Microsoftが定める要件を満たしていれば、メーカーは「Copilot+ PC準拠モデル」として販売できます。

 

要件はいくつかありますが、代表的なものとして「40TOPS(1秒あたり40兆回の演算能力)以上のNPUを搭載すること」が挙げられます。簡単に言えば、AI系の処理が得意なNPU内蔵CPUを載せているかどうかがポイントなのです。上のスペック表にあるとおり、Note Uは最大47TOPSと要件をクリアしています。

 

「AI関連の処理が速くなるだけ?」と思われがちですが、そうではありません。そもそも、以下5つの機能は現時点でCopilot+ PCでしか実行できないものとなっており、Copilot+ PCに準拠していること自体にも意味があるわけです。

 

・フォトアプリの画像生成機能「イメージクリエーター」

・ペイントアプリの画像生成機能「コクリエーター」

・カメラ画像にエフェクトを掛けられる「Windows Studio エフェクト」

・字幕表示&翻訳機能「ライブキャプション」

・PC上で行なったあらゆる操作を記録しておき、後で検索できる機能「リコール」

 

例えば、ペイントアプリで使用できる「コクリエーター」は、大まかなラフスケッチをもとに画像を生成してくれるおもしろい機能です。コンテンツ制作などを行なっている人には大きな助けとなってくれそうですが、一般的なビジネスパーソンにとってはあまり使いどころはなさそうというのが正直なところです。

 

この5つの機能の中で、ビジネスで役に立ちそうなのは「ライブキャプション」と「リコール」でしょう。

 

Note Uならサクサク動くが、やはりプレビュー版なのがネック

・ライブキャプション

↑Note Uのメニュー画面には初期状態でライブキャプションが備わっている。

 

ライブキャプションはPCで再生中の音声を文字起こししてくれる機能です。

 

最大の特徴はアプリに依存しないことで、ブラウザーで再生中の動画やmp3のオーディオファイルなどの音声がリアルタイムでテキスト化されます。字幕機能のないニュース動画などにも字幕をつけられるなど、文字起こしの精度はかなり高いと感じました。

↑画面下部に字幕が表示されているのがわかる。

 

なお、「日本語の読み上げに日本語の字幕を付ける」ことは可能な一方で、「他言語から日本語への翻訳」機能が実装されていません。現時点では「他言語→英語」のみが対応しています。現状でも語学学習や聴覚障がい者のサポートなどに活用できますが、今後他の言語から日本語へのリアルタイム翻訳がスタートすれば、ビジネスを強力にサポートしてくれそうです。

 

・リコール

もうひとつ、ビジネスで使えそうだと感じた機能がリコールです。これは「PCで行なったあらゆる作業が自動的に記録され、あとから簡単に検索できるという」もの。ただしこのリコール、発表後はCopilot+ PCの目玉機能として話題を呼んだものの、同時にプライバシーに関する懸念が議論され、現時点でもまだ正式リリースに至っていません。

 

2025年3月現在、リコールは「Windows Insider Program」に参加することで正式実装前のプレビュー版を試用できます。実際にNote Uで試してみたところ、ちょっとした作業がすべて記録され、後から簡単に検索できたのは驚きでした。ビジネスで資料を作成する際などに大きく役立ってくれそうな機能だと感じます。

 

例えば、下の画面はリコールを立ち上げた際の画像です。上部のスライダーを操作することで、そのPCで行なった作業を時間軸で遡ることができます。

↑実際に記録された画面。ブラウザーやメモ帳など、アプリを横断して時系列を遡ることができる。

 

さらに、検索ボックスから該当する情報を探すことも可能です。例えば、下の画面は「Note U」というワードで検索した画面ですが、テキスト情報はもちろん、OCRで認識された「Note U」という画像の文字も検索結果に表示され、過去の情報を漏れなく表示してくれました。

↑検索には「テキストの一致」と「視覚的な一致」の2つがあり、後者は画像を認識している。

 

議論が巻き起こったとおり、設定によってはプライバシーの問題が発生する恐れも感じましたが、過去のデータ閲覧は顔認証または指紋認証が必須であることや、パスワードやクレジットカード情報は記録しない設定がデフォルトとなっていることなど、プライバシーには一定の配慮がされていると感じました。

↑プレビュー版のため、設定画面はすべて英語。記録から除外するアプリを指定できるなど、細かい設定が可能。

 

実際にNote Uでこれらの機能を試してみたところ、処理能力の不足を感じる点もなく、マシン自体は快適に動作していました。リコールに関してはプレビュー版ということで、時おり動作の安定性に不安を感じることもありましたが、正式リリースに至った際にはライブキャプションと合わせ、ビジネスシーンを一変させる可能性がある機能だと感じます。さきほど述べたとおり、そもそもCopilot+準拠のPCでなければ利用できない機能もあるので、これらの正式実装に備えるAI PCとして、Note Uを選ぶのはいい選択肢でしょう。

 

2025年のビジネスPCのファーストチョイスになりえる1台

上記で解説したライブキャプションやリコールはCopilot+ PCで使える機能ですが、Note UにはAIメイクアップアプリ「Umore」など、FMV独自のAIアプリも搭載されています。独自アプリも文書・資料の作成やオンラインミーティングなどビジネスで役立つものが多く、Copilot+ PCの機能とあわせて使えば、仕事の能率を高めてくれそうです。これらの独自アプリについては、「FMV Note C」のレビュー記事で解説しているので、こちらも参照してみてください。

 

ここまで解説してきたとおり、本機種は軽量・堅牢性・長時間駆動などに加え、AI特化のスペックなど、ビジネスノートPCとして非常に高い水準でまとめられた機種だと感じました。

 

カタログモデルの価格は実売29万3000円前後と決して安価な部類ではありませんが、AIの活用がより進むことが予想される2025年に買うPCなら、これをファーストチョイスにするのもアリと言えそうです。