デジタル
2015/6/11 8:00

5.1ch制作の「シドニアの騎士」をもっと楽しめるシアタースピーカー

鳥居一豊の「2次元にもっとハマるためのAV機器教室」 vol.4

 

5回目となったこのコラム。今回は待望のBD版「シドニアの騎士 第九惑星戦役」を取り上げます。すでにBD版は第1巻と第2巻が発売され、テレビ放送とは雲泥の差といえる5.1chサラウンド音声を収録。映像特典としても、いくつかのカットでテレビ放送版とは異なるアングルの映像を収録したものが用意されているなど充実の内容ですが、本作を存分に味わうならば、やはり「音」が重要になります。キーワードは、もちろん「サラウンド」です。

 

↑「シドニアの騎士 第九惑星戦役」のBDは現在2巻まで発売中です。画像は2巻の初回限定盤

細かな効果音の再現で作品の魅力が倍増する

「シドニアの騎士 第九惑星戦役」では、第1期の「シドニアの騎士」と比べさらに熾烈となった、謎の生命体「ガウナ」と人類の戦いがテーマ。戦いの舞台はレム恒星系へと移り、主人公たちは敵の母船ともいえる、大衆合船との対決を目指します。

 

そこで大きな役割を果たすのが、ガウナと人類の融合個体である(筆者的に宇宙最萌ヒロインの)白羽衣つむぎです。見た目はガウナそのもので、第1期の強敵であった紅天蛾を思わせるフォルムはグロテスクとも言える造形。ですが、それが人間の声を発し、子どものように無邪気なふるまいで主人公・谷風長道たちに接していく様子を見ていると、ガウナとの対話を成功させる選択肢もあるのではないかと思ってしまいます。

 

アニメ版での見どころは、つむぎがリアルに雪白仄(第1期でガウナに取り込まれ命を落としたヒロイン)の声でしゃべるところ。3DCGで造形されたつむぎが表情豊かに動き回り、それにともなう動作音もきちんと付けられていることです。つむぎ本体の胸のあたり(?)から伸びてくる人間サイズの触手は、身振りにあわせてキュキュッという感じの音を出しますが、こうした細やかな音までしっかりと再現できると、つむぎの魅力がさらに倍増します。

 

そんな音、そしてキャラクターの魅力ををより楽しむために今回オススメしたいのが、これから紹介するシアタースピーカーです。これは、手ごろな価格、省スペースで本格的なサラウンドを楽しむためのアイテムといえます。

 

2.1chでサラウンドにも対応するシアタースピーカー

本格的なサラウンドは実現がなかなか難しいものですが、いわゆるシアタースピーカーと呼ばれるシステムでは、バーチャルサラウンド技術を用いることで、テレビの周りにスピーカーを置くだけの省スペースで、手軽に臨場感豊かなサウンドを楽しめます。こうしたシアタースピーカーは各社から発売されていますが、ここでは春にラインナップを一新したソニーのシアタースピーカーをまとめて紹介しましょう。

 

まずは、スタンダードな2.1chスピーカー。HT-CT780(実売価格5万2560円)とHT-CT380(実売価格4万1400円)がこれにあたります。最新の薄型テレビはスタンド部分の高さが低くなり、ベゼル幅も狭くなっていますが、このCT780とCT380はぐっと背の低いくさび形のフォルムを採用しているため、テレビのトレンドに合ったデザインのスピーカーといえるでしょう。

 

スピーカー構成はどちらも2.1ch。本体とサブウーファーはワイヤレス接続のため、電源をつなぐだけでケーブルの引き回しを気にせず使えます。さらに、4K信号の入出力対応やNFC対応のBluetooth(LDACにも対応)によるワイヤレス再生などの機能面はほぼ共通しています。

 

大きな違いは、CT780が高域用のトゥイーターを備えた2ウェイ構成であることと、サブウーファーの口径が160mmと大口径化され、サイズもひと回り大きくなっていることです。つまり、低音域と高音域をより強化して音の臨場感をさらに高めたモデルと言えます。価格差はおよそ1万円ですが、アニメを本格的な音で楽しむなら、思い切って上位モデルであるHT-CT780を選ぶのがおすすめです。

 

↑HT-CT380
↑HT-CT780

 

↑HT-CT380
↑HT-CT380。外見はCT780と大差ありません

 

また、より手軽に使いたい人には台座タイプと呼ばれるシアタースピーカーも注目です。台座タイプとは、その名の通り薄型テレビの下に設置するタイプのスピーカー。HT-XT100(実売価格 2万6870円)が大画面テレビに合わせた大型サイズで発売されました。テレビの台座になるため、スピーカー自体の置き場所が不要で、サブウーファーも内蔵した一体型なので、接続などの手間も不要。より簡単に使えることが特徴です。接続もHDMIで手軽に行うことができ、使いやすさを重視したモデルといえます。

 

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↑HT-XT100。使いやすさはピカイチ!

 

置き場所を確保する必要がなく、接続などの手間も少ないなど、入門者には最適なシアタースピーカーですが、スリムな薄型形状のためスピーカーユニットのサイズは小さくなるなど、音質的には少々不利な面もあります。また、ドルビーTrueHDやDTS-HD MasterAudioなどのロスレス圧縮フォーマットに対応していないなど、機能も少しシンプル。ドルビーデジタルやDTS、AACには対応しているので、BDソフトや地デジ放送の音もデジタルでクリアに再現できますが、絶対的な品質では上位モデルに比べれば劣ってしまいます。Bluetoothにも対応しますが、高音質コーデックの「LDAC」には非対応です。すなわち、機能や音質は多少劣るものの、より簡単で手軽に使えるというシステムといえます。AV機器は使い方が難しいと思っている人にマッチするモデルです。

 

ハイレゾ再生にも対応する高音質システムにも注目

BDで発売される高品質なアニメ、特に「シドニアの騎士 第九惑星戦役」を存分に楽しみたいという人には、多少高くなってもより音質の優れたモデルが欲しいという人もいるでしょう。ここではそんなモデルを紹介します。まずは、HT-NT3(実売価格 8万6270円)。HT-CT780/CT380と同じく2.1ch構成のシアタースピーカーですが、メインスピーカーを、65mm磁性流体スピーカーと18mmソフトドームトゥイーターを同軸配置した2ウェイスピーカーとしていることが大きな特徴です。

 

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↑HT-NT3

 

組み合わせるワイヤレスサブウーファーも、160mm口径の大型ウーファーを備えています。これにより、BDソフトの高音質はもちろんのこと、ハイレゾ音声の豊かな情報量もあますことなく再現可能。ちなみにハイレゾ音源の再生は、USBメモリー経由で行います。リニアPCMで最大192kHz/24ビット対応(WAV,AIFF,FLAC)、DSD音源にも2.8/5.6MHzに対応しています。このほか、ハイレゾで音声を収録したBDミュージックなどでもハイレゾ音源を手軽に楽しめるのが魅力です。

 

そして、ソニーのシアタースピーカーのハイエンドモデルとして登場したのが、HT-ST9(実売価格 16万1870円)です。こちらは65mm磁性流体スピーカーと18mmソフトドームトゥイーターを同軸配置したユニットを3個(フロントLR、センター)、そして同じく65mm磁性流体スピーカーを4個(サラウンド、サラウンドバック)搭載し、7.1chのバーチャルサラウンド再生に対応する本格的なモデル。ワイヤレスサブウーファーはさらに強化され、180mmウーファーと、200×300mmパッシブラジエーターを組み合わせたものとなっています。こちらは、7個並んだメインスピーカーを高精度に制御し、音の波面をコントロールすることで、より豊かで臨場感に溢れたサラウンド再生を実現。新機能として、より後方に回り込む音の再現を高めたモードと、厚みのある音場を広いエリアで楽しめるモードの2つが選択可能です。こちらもハイレゾ音源の再生はUSBメモリー経由で、リニアPCMで最大192kHz/24ビット対応(WAV,AIFF,FLAC)、DSD音源にも2.8/5.6MHzに対応しています。

 

ハイレゾ対応のための広帯域化と、基本的な音質の実力を磨き上げたことで、その音の再現性は大幅に改善しました。ハイレゾの音楽再生はもちろんですが、映画でのサラウンド再生の臨場感も大きく向上。今までは特に後方の音がぼんやりとした再現になっていましたが、特にHT-ST9で聴くとまさに後ろにスピーカーがあるような実体感のあるサラウンド音場が得られます。

 

↑HT-ST9。シアタースピーカーの最高峰です!
↑HT-ST9。シアタースピーカーの最高峰です!

 

これらのシステムを使った環境で「シドニアの騎士 第九惑星戦役」を視聴すると、谷風やつむぎの声がより生き生きとした音で響き、かわいらしい動作もより豊かに伝わります。ガウナとの戦闘での緊迫したムードや、弾丸の射出、高速移動を行う四騎掌位でのエンジン音などの迫力もさらに増し、自分を包み込むようなサラウンド音場の臨場感をたっぷりと味わえます。音の質がここまで高まってくると、テレビ放送とはまったく違った印象になります。

 

「シドニアの騎士 第九惑星戦役」 の物語は今後ますます緊迫の度合いを高め、戦いの描写も激しくなっていくものと思われます。ハイエンドなシアタースピーカーを導入して楽しむにふさわしい、魅力的な作品といえるでしょう!

 

【今回のキーアイテムリスト】

ソニー

HT-CT780

実売価格5万2560円

薄型フォルムを採用した2.1ch構成の上級モデル。アンプ出力は合計300Wとなっている。別体のサブウーファーはワイヤレス接続で、電源コードの接続のみで配線なしで使える。BluetoothはLDACにも対応。

 

ソニー

HT-CT380

実売価格4万1400円

薄型ボディの2.1chシステム。使用するユニットがフルレンジとなり、アンプ出力も270Wになっている。4K信号の入出力対応や、ワイヤレスサブウーファー、Bluetooth(LDAC対応)などの主要な機能は上級機・CT780と同等となっている。

 

ソニー

HT-XT100

実売価格2万6870円

サブウーファーを内蔵したワンボディの台座型モデル。横幅は702mmで、50V型クラスの大画面テレビとの組み合わせも可能。天面部分はガラス製で、キズに強いうえ見た目の高級感も高めている。Bluetoothにも対応。

 

ソニー

HT-NT3

実売価格8万6270円

同軸配置の2ウェイスピーカーを搭載し、ハイレゾ音源の再生に対応した2.1chシステム。サブウーファーはワイヤレス接続タイプを採用する。奥行き65mmの薄型設計を採用し、薄型テレビの手前などに省スペースで設置可能。

 

ソニー

HT-ST9

実売価格16万1870円

ハイレゾ対応の同軸スピーカーを7個搭載し7.1ch再生が可能なハイエンドモデル。ハイレゾ再生を実現した高音質に加え、さらに音場の広がりを高めたサラウンド処理により、臨場感豊かな7.1chサラウンドが楽しめる。サブウーファーはワイヤレス接続タイプで、Bluetoothにも対応。

 

【バックナンバー】

Vol.1「ガルパンの世界にもっと入り込むためのAV機器とは?」

Vol.2「『四月は君の嘘』のカラフルな映像を存分に味わえるテレビはコレ!」

Vol.3「手頃価格で音質格段アップ! ”ユーフォニアム”をもっと楽しむ」