米国ラスベガスで開催されたエレクトロニクスショー「CES2020」は、近年ではIoT家電に関わる新しいサービスや製品が集まるイベントとしても注目されています。今年のCESの出展を振り返りながら、2020年のIoT家電の行く先を占ってみたいと思います。
IoT家電で先行するアメリカに、日本は追いついたのか
CESが開催されるアメリカでは日本よりも先に、AIアシスタントと連携しながら人の声で操作できるIoT家電が普及してきたと言われています。筆者はアメリカに長く暮らしたことがないため本当のところはわかりません。実際にそうなのでしょうし、CESなど海外のイベントを取材すると確かに多種多様なIoT家電に出会えます。
でも一方で、イベントに出展する家電メーカーに手応えを聞くと、やはりメーカーや種類が異なるIoT家電をホームネットワークの中に共存・連携させて便利に使える環境はまだアメリカにも整っていないそうです。例えばスマホに複数機器のアプリを入れて別々に操作しなければならなかったり、異なるAIアシスタントのウェイクワードや音声コマンドを使いこなすのも大変だったり。迷路に入り込んでしまったユーザーのサポートも、メーカーにとってはそれなりの負担になるのだと、様々な関係者が話しています。
IoT家電をより便利なものにするため、「プラットフォームの共通化」という課題に製品が増える前から取り組んできた日本と、先に製品を揃えてユーザーがDIYで家電を使いこなしてきたアメリカとではアプローチが異なっていたということなのかもしれません。
現在日本のメーカーではシャープが精力的にKDDIやセコムなどの企業、および経済産業省とも連携を図りながらIoT家電とサービスを便利に使うための共通プラットフォームを整えています。アメリカでは昨年末に近距離無線通信規格のZigBee(ジグビー)のアライアンスメンバー企業がAmazon、Apple、Googleと手を組んでセキュアで安心なIoT家電の共通プラットフォームをつくるためのワーキンググループを発足しました。
IoT家電をつなぐのはやはりAlexa/Googleアシスタントの役目になる?
でも、やはりメーカーやサービス事業者の枠組みを超えたプラットフォームが実現するまでにはもう少し時間をかける必要がありそうです。だったら当面はAmazon、GoogleのAIプラットフォームに対応する製品を足場にすれば、心地よく使えるスマートホーム環境が作れるのではと、おそらく誰もが考えるのではないでしょうか。
CESには数年前からAmazonとGoogleがブースを出展しています。各社ともに独自のAIプラットフォームに乗り入れるパートナーの開発商品をブースに集めていました。その種類と数は2020年に入ってさらに増えているように見えました。
Amazonのブースではキッチンに寝室、子ども部屋などシーンを想定して、Alexaを介した使いこなしをスタッフがわかりやすく解説してくれて見応えがありました。
製品もユニークなものが出揃ってきたように思います。例えばP&Gの電動歯ブラシ「Oral B Sense」です。充電台にAlexaとスマートスピーカーが内蔵されていて、音楽を聴いたり、ホームネットワークに接続されているIoT家電を声で操作できます。Amazon純正のスマートスピーカー「Echo」シリーズとほぼ同等のことができるそうです。それだけでなく電動歯ブラシならではの使い方として、ブラシヘッドを歯に強く押しつけると本体と充電台のLEDが赤く点灯して歯の磨き方を改善するように知らせてくれます。
サードパーティが開発したカスタムメイドの「スキル=機能」を追加すればきっと同様のことも可能になるのですが、スキルだけでなく電動歯ブラシそのものにAlexaによる体験を作りこんでしまったほうが、ユーザーにとってより使いやすいものになると感じました。
アプリと連携するIoT家電をAlexaによる音声操作に対応させて独自の体験価値を提案するメーカーも増えています。そのひとつが今年のCESに初めて単独のブースを出展した寝具メーカーの西川です。
西川ではセンサー搭載マットレス「AiR」シリーズの睡眠支援機能を紹介していました。マットレスに埋め込んだセンサーで、寝ているユーザーの動作を検知して睡眠状態を解析、アプリで眠りの質を可視化できるサービスです。将来はAlexa連携を加えて、例えば入眠・起床の状態を検知したらAlexaを通じて連携するスマート照明のオン・オフを切り替える機能の開発を進めているそうです。