デジタル
2023/9/22 17:02

「将来は1億台規模に」新ARグラス「XREAL Air 2」発表会で見せたXREALの自信

日本Xrealは、ARグラスの新モデル「XREAL Air 2」シリーズを発表しました。ARグラスとして注目度の高い本製品の発表会の様子をレポートしながら、ARグラスで何ができるのか、さらにはXREALが考えるARグラスの展望は何かまでをご紹介します。

↑XREAL Air 2の限定色レッド

 

XREAL Air 2:5万4980円(税込)、予約受付中、10月16日から順次出荷

XREAL Air 2 Pro:6万1980円(税込)、10月17日から予約受付(発売日は未定)

 

現実世界にスマホやPCの画面を大きく表示できるARグラス

XREAL Air 2シリーズはいわばサングラス型のディスプレイのような製品で、スマホやPC、ゲーム機などの映像を、視界の中に表示できます。たとえばスマホの動画を寝転がりながら見たり、飛行機や新幹線などで仕事をするときに活用したりと、便利に使える製品です。

↑XREAL Air 2のダークグレー

 

実際にかけてみた感覚を端的に表現すると「目の前に37インチのテレビが生えてきた」という感じ。現実世界に重ね合わせるようにして、大きな画面を表示できます。精細も十分で色味も申し分ありません。PCの画面を表示して細かいマウス操作をしたり、シューティングゲームの緻密な操作をしたりするときも、一般的なディスプレイやテレビを使用するのと同じ感覚で利用できます。

↑メガネのレンズに小さな画面を装備している

 

ARグラスはプロジェクターと似ている性質があり、周囲が明るい環境では画面が見えづらくなります。その点、XREAL Air 2は画面輝度を高めに設定できるので、リビングルームぐらいの明るさでも問題なく使えそうです。

 

そしてARグラスの良いところは、メガネの感覚で、気軽に装着できることです。XREAL Air 2は72gと軽く、長時間装着しても疲れません。見た目も「少し太縁なサングラスです」と言い張れるくらいの格好です。なお、実際に画面を表示するときは、メガネの縁にケーブルの接続が必要となりますが、周りからは有線イヤホンを使っている人のように見えるくらいで、そこまで目立たないでしょう。

 

日差しが差し込むで使いたいときや、作業に集中したいときは、付属のプレートを装着して視界を遮ってしまえば、よりくっきりと表示できます。ただ、視界をさえぎったARグラスは、VRゴーグルに近い状態になりますが、視野角は広くないです。そのため、視界全体に映像が広がって、没入感のある体験をするのにはあまり適していません。

↑視界をさえぎるとVRゴーグルのような感覚で使える

 

スマホやPCはケーブル1本で接続。PS5などのゲーム機にも対応

XREAL Air 2の映像入力端子は、USB Type-Cを採用しています。スマホやPCがDisplayPort出力対応のUSB Type-Cを備えていて、ある程度の処理能力がある場合は、ケーブル1本で接続可能です。

 

より具体的には、2022年発売のGalaxy S22以降のハイエンドスマホなら、ケーブル1本をつなぐだけで画面を表示できます。さらに、22日に発売されたiPhone 15シリーズについても、USB Type-Cケーブル1本でつなげるとしています。

↑TGS 2023で展示されていたXREAL Air 2のデモ機。くっきりと映像が映っている

 

別売のHDMI変換アダプターを装着すると、だいたい何でもつなげるようになります。たとえば、Nintendo SwitchやPS5のようなゲーム機の画面も表示可能。

 

さらに、XREAL Beamという周辺機器を併用すると、画面の表示機能をより強化できます。テレビ番組の小窓表示のように、スマホの映像を視界の端に固定したり、小さな揺れを吸収して見やすくしたりといった機能を利用できるわけです。

 

なお、通常の画面出力では1つの画面しか表示できませんが、専用アプリ「Nebura」を併用すると、最大で3つのウインドウを空間内に表示できます。つまり、ケーブル1本でつなぐだけで、目の前に3面モニターを召喚できることになります。Neburaアプリは現在、Macと一部のAndroidスマートフォン向けに提供中。Windows PCとSteamDeckには近日対応予定となっています。

 

新モデルは画面がより明るく鮮やかに。上位モデルは何が違う?

XREAL Air 2では、画面の表示能力が強化されています。ソニー製の0.55型マイクロOLEDディスプレイを搭載し、より明るく、鮮やかに表示できるようになりました。また、駆動速度は120Hzに向上し、シビアなアクションを求められるゲームにも使えるようになっています。解像度はフルHD、輝度は最大500ニト、画素密度は4032ppi、3DoF対応です。

↑サングラスのように、たたんで持ち運べる

 

メガネとしてのデザインは従来モデルとほとんど変わりませんが、細かな部分で改良が加わっています。鼻当ての部分は柔らかいエアクッションを採用し、長時間装着しても肌を痛めにくい設計にしています。また、眼鏡のツルの部分には、指向性の高いスピーカーを新搭載。イヤホンなしで、周囲への音漏れを気にせず使えるようになりました。

 

上位モデルのXREAL Air 2 Proはさらに、「エレクトロクロミック調光技術」を搭載しています。これは、サングラスの透過率を電気的に切り替えることができるというもの。XREAL Air 2 Proでは、ボタン操作で透過率0%(クリアな表示)、35%(サングラス状態)、100%(真っ黒)の3段階で切り替えられます。XREAL Air 2を明るい場所で使うには、視界を遮るプレートのつけ外しが必要となりますが、Proモデルならそれをボタン操作1つで行えるため手軽だというわけです。

 

ARは1億台規模の市場になると期待

XREAL Air 2の日本での発表会は、東京ゲームショウ2023の会期初日の9月21日に実施されました。中国のXREAL本社から、創業者兼CEOのチー・シュー氏が来日し、会場でARデバイスの現状と、将来像を語りました。

 

XRという大きなくくりで見ると、普及が進みつつあるVRに対して、ARデバイスの普及は進んでいないようにも見えます。これについてチー氏は、「AR市場と比べると、VR市場はざっくり5倍大きいが、今後はAR市場が急激に拡大して、VRを追い抜く瞬間が来るだろう」という見方を示しています。

↑XREAL Air 2を装着するチー・シューCEO

 

VRは、MetaとHTCという2大メーカーが存在し、ゲーム機として定着しています。また、アップルが6月に発表した「Vision Pro」も(空間コンピューティングという独自の呼び方をしていますが)表示手法としてはVRヘッドセットの発展系と言えます。

 

一方でARデバイスは、マイクロソフトの「HoloLens」やMagic Leap社などが知られていますが、両社ともここ数年は産業向けの高機能な製品に開発の方向を絞っています。スマホのように気軽に入手できるARデバイスの選択肢は、意外と多くありません。

 

その中で、XREAL(旧Nreal)は、多くの人が使えるARグラスにこだわって製品を投入してきました。2019年に軽量スマートグラス「Nreal Light」を発売し、2022年の「Nreal Air(現XREAL Air)」ではスマホと直接つなげるように進化させた経緯があります。

↑初代XREAL Airは1年間で20万台を出荷しています

 

その結果、XREAL Airは発売以来、累計20万台を販売しており、2023年上半期にはAR市場シェアの3割以上を獲得するトップメーカーとなっています。XREALが実施したユーザー調査によると、ユーザーの70%が週に5日以上XREAL Airを利用し、47%のユーザーは毎日利用するなど、実際に利用率も高いといいます。

 

XREALのARグラスは現時点では、物体がない外部ディスプレイのような使い方にとどまっていますが、今後は現実空間の物体と連動するMRデバイスとして進化させていく方針です。チー氏は「インターネットはPCやスマホから、実在空間と連動する『空間インターネット』に移り変わってくる。5年以上はかかるが、将来的には1億台が出荷される市場になる。XREALはこの市場に挑んでいきたい」と野心を示しました。