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2017/12/20 21:00

歌とともに北国へ……師走に聴きたい演歌・歌謡曲を集めたギャランティーク和恵の「歌謡プレイリスト」

みなさんこんばんは、ギャランティーク和恵です。毎月その季節に合わせた歌謡曲を10曲選び抜き、みなさんにご紹介する「マンスリー歌謡プレイリスト」。今月は「北国」特集です。先日、ワタシが所属する星屑スキャットのお仕事で北海道は富良野に行って参りました。そう、富良野といえばワタシも大好きなドラマ「北の国から」ですよね。初めて降り立つ富良野で「北の国から」ごっこしたいなぁ〜なんて思っていたのですが、いきなり大雪で極寒という試練を与えられ、ラベンダー畑でいしだあゆみごっこみたいな甘い考えを早速打ち砕かれてしまいました。

 

ということで、テーマは寒い寒い「北国」。「北国」って言葉、いまも使う人いるのでしょうかね。ずいぶんと乱暴な言い方のようにも思える「北国」。どこを指しているのか「北国」。歌謡曲の歌詞にはたくさんの「北国」があります。ま、とりあえず「北国」に向かって出発してみましょう……。

↑ギャランティーク和恵さん(撮影:下村しのぶ)
↑ギャランティーク和恵さん(撮影:下村しのぶ)

 

【12月のプレイリスト】

01.北国行きで/朱里エイコ
(作詞:山上路夫 作曲:鈴木邦彦)
まず北国に行くためには北国行きの汽車に乗らなくてはいけません。ということで1曲目はここではお馴染み、朱里エイコさんの1972年1月にリリースされたシングル曲からスタート。付き合っていた男と別れて黙ってひとり北国へ逃避行するお話。この曲で紅白歌合戦初出場だったのですが、北国に行く歌なのに朱里エイコさんはいつもと変わらずミニスカートで素晴らしい御御足を露わにステップを踏みながら歌うのでした。

 

02.逢いたくて北国へ/小柳ルミ子
(作詞:橋本 淳 作曲:井上忠夫)
お次は、1976年9月にリリースされた小柳ルミ子さんの20枚目のシングル曲。汽車が走っているような音にも聞こえる軽快なリズムに乗せて、ルミ子(敬称略)が遠く北国に住む愛する人への募る思いを歌い上げます。先ほどの朱里エイコさんの歌は男と別れて北国へ。一方こちらは男に逢いたくて北国へ。しかしこの男とはどういった関係なのでしょうか。遠距離? 単身赴任?

 

03.だからわたしは北国へ/チェリッシュ
(作詞:林 春生 作曲:筒美京平)
なんで北国なの? それは……ということで、お次は1972年1月にリリースされたチェリッシュの2枚目のシングル曲。チェリッシュと言えば松崎さんとえっちゃんのデュオ、というイメージがありますが、デビュー曲「なのにあなたは京都へ行くの」とこの「だからわたしは北国へ」までは5人編成でした。この「接続後+名詞+場所」シリーズとして、「だけど二人は湯布院へ」とか「そして娘は納沙布岬へ」とか色々作って欲しかったわ……。

 

04.北の宿から/都はるみ
(作詞:阿久 悠 作曲:小林亜星)
北国への旅路の途中でどこか宿に泊まりましょう。ということでお次は1975年12月にリリースされた都はるみさんのシングル曲。75年の紅白歌合戦でも歌われたこの曲は、翌年もロングヒットして76年のレコード大賞を受賞、そして紅白に2年連続この曲で出場し、しかも76年は大トリで歌うという快挙を成し遂げました。まるで手紙にしたためるような私小説的な“ですます調”の歌詞にも見られる、フォーク・ニューミュージックのブームが歌謡曲・演歌に与えた影響は大きく、70年中期あたりに感じる、どこか暗く影のある時代のムードをも映し出しているような曲だと思います。

 

05.津軽恋女/新沼謙治
(作詞:久仁京介 作曲:大倉百人)
さて、北国へ向かう旅路は津軽へと向かいます。お次は1987年4月にリリースされた新沼謙治さんの28枚目のシングル曲。東北出身でもある新沼さんの声には郷愁があり、青年の汚れない純粋な心を呼び起こすようで清々しく絶品です。津軽には7つの雪が降るらしい……と、いろんな雪の名前を並べたサビの歌詞がとってもキャッチー。でも何より歌い出しの「津軽〜の海よ〜」の導入部分でもうギュッ! と心を掴まれてしまうメロディーとコード感がスーパーキャッチー。名曲です。

 

06.津軽海峡・冬景色/石川さゆり
(作詞:阿久 悠 作曲:三木たかし)
さぁみなさん、とうとう津軽海峡を渡りますよ。お次は言わずと知れた大名曲、1977年1月にリリースされた石川さゆりさんの15枚目のシングル曲。ババババーンッというド派手なイントロが、津軽海峡の荒波と(見たことありませんが)凍えるような青森の冬の厳しさ(知りませんが)を想像させます。アレンジ、三木たかしセンセー自らやったんだって。スゴいわ。あと阿久 悠センセーが描く「北へ帰る人の群れは誰も無口で」って情景もスゴいです。フィクションのリアリティとでもいいますか……。本当だったら絶対みんな寒すぎて「あ〜寒い寒い寒い!」とかベラベラ喋ってそうじゃない? でもそうじゃないのよね、歌の世界は。

 

07.函館の女/北島三郎
(作詞:星野哲郎 作曲:島津伸男)
津軽海峡を越えて、ようやく北海道へ上陸です。はるばる来たぜ! 函館! みなさまご存知、1965年11月にリリースされた北島三郎さんの14枚目のシングル曲。先ほどまでの寒さに耐え忍ぶようなストイックな楽曲から一転、何とも陽気で開放的な歌に心が救われます。もしワタシも津軽海峡を越えて函館に向かうことがあるならば、絶対にこの歌を口ずさむでしょう。「は〜るばる〜来たぜ、鮭茶漬け〜!」っていう永谷園のCM、30代以下の方たちはもう知らないんでしょうね……。

 

08.北酒場/細川たかし
(作詞:なかにし礼 作曲:中村泰士)
テレッ! テレテレッ! イントロから調子E感じのお次の曲は、1982年3月リリースされた細川たかしさんの18枚目のシングル曲。「北酒場」と言えば札幌のすすきのあたりを想像します。旅行気分でちょっぴり浮かれちゃって、隣に居合わせた女の人に恋なんかしちゃったりなんかして。歌は世につれ……といいますが、豊かになってゆく80年代の日本人の心の余裕を映しているかのようです。この曲で細川たかしさんは初めてのレコード大賞を獲得。作詞作曲はデビュー曲「心のこり」と同じく、なかにし礼センセーと中村泰士センセー。低迷していた時期に再起を賭けて挑む細川さんへの、お二人の愛のようなものを感じずにいられません。

 

09.石狩挽歌/北原ミレイ
(作詞:なかにし礼 作曲:浜 圭介)
札幌からさらに北へ……。お次は1975年6月リリースされた北原ミレイさんの8枚目のシングル曲。こちらも「北酒場」と同じく作詞はなかにし礼センセー。なかにし礼さんは実際に幼少期を小樽で過ごした経験があり、貧困の中で兄が鰊(にしん)漁で博打のような商売に手をつけて莫大な借金を抱えてしまったという実体験から、この曲が生まれたといいます。栄枯衰退……夢を追いかけて挑む漁師たちの活気を感じる力強いアレンジと、その夢が消えてゆく様を重ねるように描かれたモチーフたち。聴いていると、入ってるはずのないソーラン節が遠くに聴こえてくるから不思議です。

 

10.稚内ブルース/原みつるとシャネル・ファイブ
(作詞・作曲:藤本卓也)
北国行きが行き着いた先は、稚内……。最後は1971年にリリースされた原みつるとシャネル・ファイブのデビュー曲でお別れです。藤本卓也センセーは、歌謡曲の作家先生の中では少しマイナーな印象がありますが、五木ひろしさんの「待っている女」や、矢吹健さんの「あなたのブルース」、内山田洋とクールファイブ「愛の旅路を」などを手がけた方で、狂気を帯びたようなアレンジや情念深い歌詞世界などが、熱量の高い歌手の方たちと非常に相性がよく、傑作を数多く残されている素晴らしい作家先生なのであります。流れ流れて最果ての街、稚内。サビの「稚内 あとがない」「稚内 先がない」「稚内 わからない」というダジャレまで……。ジャケットも“先がない”感溢れてます。北国への旅、行き着く先まで行きました。おしまい。

 

以上、今月のプレイリスト、12月は「北国」をテーマにお送りいたしました。一緒に北国へ旅をした気分を味わっていただけましたでしょうか?(結構悲惨な旅)

 

今回のプレイリストは演歌色が強いですね……。年の暮れって演歌が聴きたくなりませんか? 紅白歌合戦も大トリは演歌歌手じゃないと年を越した気分になれない世代なものですから。今年もワタシの店「夜間飛行」では紅白歌合戦を見ながら年越します。東京でひとり淋しく年を越されるご予定の方、夜間飛行であったかい鍋をご用意してお待ちしております。

 

今年も一年ご愛読いただきありがとうございました。来年もどうぞギャランティーク和恵をよろしくお願いいたします!

 

【インフォメーション】

ギャランティーク和恵さん、ミッツ・マングローブさん、メイリー・ムーさんによるコーラスユニット・星屑スキャットのNEW SINGLE「ANIMALIZER」が発売中! 各音楽配信サイトでもダウンロードできます。ぜひチェックしてみて下さい!

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「ANIMALIZER」(Kuchibiru RECORDSより発売中/iTunes Storeほかで配信中)

1.ANIMALIZER(作詞:MITZ MANGROVE 作・編曲:中塚 武)
2.新宿トランスファー(作詞:山川啓介 作曲:有澤孝紀 編曲:中塚 武)