今年の「バーゼルワールド」では、機械式時計の代表的な複雑機構である「トゥールビヨン」搭載の新作が多く見られました。数年前なら1000万円はするような機構ですが、時計製造技術の進化、成熟により開発できるブランドが増加。徐々に平均価格も下がってきてはいましたが、ついにタグ・ホイヤーが167万5000円(+税)で、超スタイリッシュなモデル「カレラ ホイヤー 02T フライングトゥールビヨン」を作り上げてしまいました。
ジェネラルディレクターのギィ・セモン氏の取材コメントが印象的です。「私たちが安いトゥールビヨンを作ったのではなく、他社のものが高いだけではないか。なぜいまも高いのか? その理由を各社に聞きたいぐらいだ」
現地で本モデルを触る機会を得られましたので動画に収めてきました。複雑な機構であることがよくわかると思います。
ちなみに、トゥールビヨンは2世紀以上も前、アブラハム=ルイ・ブレゲによって考案された重力の影響を分散させる装置です。ただし、振動するテンプ自体を回転させるという発想の実現は困難を極めたよう。ただでさえ精密なテンプを自転させるわけですから、パーツの加工精度から精度の調整まで、理想的な効果を得るには熟練の技術の積み重ねが必要です。実際、トゥールビヨンの開発は多くの時計師が挑戦してきましたが、カタチにできた製品は1980年代まで数えるほどしかありませんでした。タグ・ホイヤーの新作を見たら、ブレゲは果たして何を思うでしょう。
セイコーのクレドールは名工と漆芸家の技術を結集
ほかのトゥールビヨンの注目作としては、セイコーブランドのクレドールより「FUGAKU」が登場。薄型キャリバー6830をベースに改良を加えたセイコー初のトゥールビヨンですが、こちらは日差+15秒〜-10秒というスペックで、精度の追求というわけではありません。それよりも、3名の現代の名工と漆芸家が力を合わせて完成させた、日本の時計工芸技術の結晶となります。時計1本に施す彫金だけで200時間を要するという手の込みようで、限定8本。お値段は5000万円(+税)になります。
【URL】
タグ・ホイヤー http://www.tagheuer.co.jp/
セイコー クレドール http://www.credor.com/