第2回 ゲームのテーマを知ろう~「ノルマンディーの戦い」ってどんな戦い?
前回は、歴史ボードゲームの歴史や魅力について説明しました。さていよいよ雑誌「歴史群像」(ワン・パブリッシング刊)最新号の付録ゲーム「ノルマンディーの戦い」を実際にプレイしていきたいと思いますが、その前に、もう少しだけお待ちください。
歴史ボードゲームは、そのゲームの主題となった戦いについて知っていると、プレイが何倍もおもしろくなります。ですので、ゲームを始める前に、そもそもノルマンディーの戦いとは、どのような出来事だったのかについてご説明します。
【第1回はコチラ】
ノルマンディーってどこにあるの?
そもそもノルマンディーとはどこにあるのでしょうか。お手元にフランスの地図があったら開いてみてください。首都パリからざっと150~
このフランス北西部の田舎の海岸で、今から76年前の1944年6月6日、第二次世界大戦最大規模の上陸作戦が実施されました。それが今回のボードゲームのテーマとなっている、アメリカ軍とイギリス連邦軍によるノルマンディー上陸作戦です。
なぜフランス西部の海岸に米軍と英軍が上陸したのか。もう少し説明を続けましょう。第二次世界大戦は1939年9月にドイツ軍が東側の隣国ポーランドに侵攻して始まりましたが、翌年にはドイツ軍は西ヨーロッパにも侵攻し、ノルウェー、デンマーク、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、そしてフランスを降伏させました。
フランスの国土は親ドイツ政権の下で縮小し、フランス北部と西部の沿岸部はすべてドイツ軍の支配下におかれました。つまり、島国であるイギリスと中立国のスイス、スペイン、ポルトガルを除く、西ヨーロッパのほぼ全域が、ヒトラー率いるドイツの支配下に入ったのです。
1941年に入るとドイツ軍は、今度はフランスとは反対側、ドイツの東部でソ連とも戦争を始めます。しかし、ソ連軍は粘り強く抵抗し、ドイツとソ連の戦争は決着のつかないまま長期化、泥沼化していきます。
そうなると、ソ連の指導者スターリンは、ソ連軍だけが大きな損害を出しながらドイツ軍の精強な部隊と激戦を繰り広げている状況に不満を表明し、ソ連とは反対側、つまり西ヨーロッパでドイツ軍を背後から攻撃するように、同じ連合国としてドイツと戦っているイギリスとアメリカに要求します。つまり、東西での挟み撃ちの要求ですね。
“史上最大の作戦”と呼ばれた空前の大作戦
こうした理由もあって、米英連合軍はドイツに対するフランスからの反攻に本気で取り組むことになりましたが、イギリスとフランスの間には海峡があるので、海を渡って上陸するしか方法がありません。つまり、イギリス本土に兵士や戦車、大砲などを集積し、それを専用の船でフランスまで運んで上陸するのです。
こうして、上陸を行う場所が検討され、研究と議論の末に選ばれたのが、西のコタンタン半島(その先端にはシェルブールという町があります)と、パリから流れてくるセーヌ川の河口部に挟まれた、ノルマンディーの海岸だったのです。
とはいえ、上陸作戦というのはとても大変でリスクの高い行動です。敵が大砲や機関銃を据えて待ち構えている海岸に、海から部隊を積んだ船で上陸するわけですから、事前の緻密な準備が不可欠です。さらに、上陸後にはパリ、さらにはドイツ本土まで進攻する計画なので、食糧や弾薬、燃料などの膨大な物資が必要になります。
それゆえ、ノルマンディー上陸作戦は、なんと6000隻もの艦船が投入された空前絶後の大作戦となりました。戦後に撮られたノルマンディー上陸作戦をテーマとした大作映画「The Longest Day(いちばん長い日)」の日本語タイトルが「史上最大の作戦」だったのも、こうした背景を知ればうなずけるでしょう。
こうして、1944年6月6日、イギリス南部に集結した米英連合軍の大部隊が続々と港を出港、同日朝、ノルマンディー海岸の指定された5つの海岸に上陸すべく向かっていきました。
「歴史群像」8月号の付録ボードゲーム「ノルマンディーの戦い」は、この6月6日から12日までの7日間の、上陸海岸一帯と内陸部の制圧を目指す米英軍(英軍は連邦軍なので、カナダ軍も含まれています)と、それを阻止して、ノルマンディー地方を守るために反撃を試みるドイツ軍の、両軍のいずれかの司令官となって、勝敗を競う2人用のゲームなのです。
以上で、戦いの歴史的背景と舞台について、ご理解いただけたかと思います。
次回、明日の第3回の内容は、「実際にゲームをプレイしてみよう ①ゲームの準備と進め方の基本」です。お楽しみに!
【第3回はコチラ】
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【第6回はコチラ】
解説:山崎雅弘(やまざき・まさひろ)
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