「仕事が終わったら、一杯飲まないとやってられない!」ーービジネスマンの中にはこう思う人もいるのでしゃないでしょうか。さて、サービス業など人前で働く人は、どうやらお酒に走る傾向が強いということが研究で明らかとなったんです。その理由は、仕事中の作り笑いや愛想笑い。自分の気持ちに嘘をついて、笑顔を作らなければならないと、お酒の量が増えてしまうと言います。
人前に出る職業は飲酒傾向が高い
ペンシルベニア州立大学とニューヨーク州立大学バッファロー校の研究者は、レストランで料理をサービスする人のほか、看護師や教師など、人前に出る職業につく人の飲酒習慣について調べる研究を行いました。職場でのストレスと健康に関する、国立衛生研究所が発表した約3,000人の調査データから、1,592人に電話調査を実施し、仕事場で「自分の感情を隠して笑顔になる状況」があるかや、就業後の飲酒習慣などについて聞き取りました。
すると、人前に出る職業についている人は、そうでない人に比べて飲酒傾向が高く、さらに日常的にわざと笑顔を作ったり元気に見せたり、ネガティブな気持ちを抑制している人は、仕事が終わった後にお酒をたくさん飲む傾向があることがわかったんです。
自分の気持ちを抑制した分だけ反動が
「仕事で、ネガティブな気持ちをコントロールしなければならないほど、仕事が終わった後、アルコールに走る気持ちを抑えられなくなる」と、この発表を行った研究者は述べています。自分の気持ちを抑制し続けていると、仕事が終わりそんな厳しい環境から開放されたときに、ついついお酒が進みお酒をやめようというセルフコントロールもきかなくなるようです。
また、お金のことを考えることは、ネガティブな感情を抑えて、前向きな気持ちになろうというモチベーションになるもののの、一日中作り笑いをするというのは疲れるものだとも研究者は述べています。だから、「これだけの給料がもらえるから頑張ろう」などと思っても、それを持続して作り笑いをし続けるというのは、なかなか難しいことのようです。
サービス業ではなくても、クライアントや上司の前で無理に笑顔を作ったり、自分の本心を隠したりするようなシチュエーションはよくあるものです。そんなときに、心が疲弊せず飲酒に頼りすぎないためには、どうしたらいいでしょうか?
この研究者は、働く人にとってその仕事にやりがいを感じているのなら、作り笑いのように感情を押し殺すこともそれほど問題にはなりにくいと指摘しています。例えば、看護師が患者さんに笑顔で接するとき、「患者さんに少しでもリラックスしてほしい」とか「患者さんといい関係を作っていきたい」という思いがあるもの。でも、そのとき一度しか会わないとわかっている人に作り笑いをすることは、“やりがい”にはなりにくく、かえって負担に感じやすいと言います。
仕事に限らず世の中で生きていくには、ときには自分の心は違っていたとしても、笑顔を作ることは必要でしょう。そんなとき、その行動に自分なりの目的や価値を見出すことができたら、大きな精神的負担を感じないですむようになるかもしれません。