家電
調理家電
2017/1/26 21:15

【 ホットクックvsバーミキュラ】売れた要因と最大の弱点とは? 家電ジャーナリストが語る2大ヒット家電の本質

ここ数年、調理家電カテゴリーで大ヒットモデルが毎年のように出ている。2013年には油を使わないで揚げ物を作れる“ノンフライ調理”が得意なフィリップスの「ノンフライヤー」、2014年にはコンパクトさとスタイリッシュなデザインで未だに続くロングセラーとなったイデアインターナショナルの「BRUNOコンパクトホットプレート」のほか、自宅で製麺できるフィリップスの「ヌードルメーカー」などもヒットとなった。

 

2015年にはスチームを使うことでおいしいトーストを焼けるバルミューダの「バルミューダ ザ・トースター」のほか、放っておくだけで健康的な無水調理が可能なシャープの「ヘルシオ ホットクック」もロングセラーとなっている。

 

2016年には、シャープが世界で初めて家庭用調理機器に採用した「過熱水蒸気」を手軽に使って調理できる「ヘルシオ グリエ」も話題に。さらには、無水調理が可能な鋳物ホーロー鍋「バーミキュラ」で炊飯および自動調理ができるバーミキュラの「バーミキュラ ライスポット」もヒットしている。

 

ホットクックとバーミキュラ ライスポットはどう違う?

今回はそのなかでも、シャープの「ヘルシオ ホットクック」と、バーミキュラの「バーミキュラ ライスポット」(直販価格7万9800円)に着目したい。ヘルシオ ホットクックは2016年11月に、初代モデルの約1.5倍の容量を実現した「KN-HT24B」(実売価格6万5350円)を発売。バーミキュラ ライスポットは2016年12月1日に発売したばかりで、ともに注目度が高いアイテムだ。なお、バーミキュラ ライスポットは「ライス」という名前が入っているが、実のところ、本機は炊飯専用機ではなく、「炊飯もできる電気無水調理鍋」といえる。一見すると、電気調理鍋(ホットクック)と炊飯器(バーミキュラ ライスポット)を比べているの? と違和感を持つ方もいるかもしれないが、実際はどちらも大容量で自動調理が可能な「電気調理鍋」なのだ。

↑シャープが2016年11月に発売した「ヘルシオ ホットクック KN-HT24B」
↑シャープが2016年11月に発売した「ヘルシオ ホットクック KN-HT24B」

 

↑愛知ドビーがバーミキュラブランドで2016年12月に発売した「バーミキュラ ライスポット」(直販価格7万9800円)
↑愛知ドビーがバーミキュラブランドで2016年12月に発売した「バーミキュラ ライスポット」(直販価格7万9800円)

 

ただし、どちらも「電気調理鍋」なのは確かだが、その性格は大きく異なっている。この2モデルがなぜヒットしているのかというと、少しの手間で調理できる「時短調理」と、栄養価をできるだけ損なわずにおいしくて健康的な料理ができる「無水調理」が可能な点だと筆者は見ている。2機種の詳しい使い勝手については次回以降で紹介するとして、ここでは2機種の性格の違い、どんな人に向いているのかについての結論から紹介しよう。

 

手っ取り早く「時短&無水調理」したい人は「ヘルシオ ホットクック」

シャープのヘルシオ ホットクックは数年来ブームとなっている「無水調理」をより手軽に、手間なしで自動調理してくれることをコンセプトに開発されただけあって、扱いやすさと手間がかからないことに関してはダントツだ。

↑従来モデルの1.5倍の容量を実現し、カレーなら6人分の調理が可能になった「ヘルシオ ホットクック KN-HT24B」
↑従来モデルの1.5倍の容量を実現し、カレーなら6人分の調理が可能になった「ヘルシオ ホットクック KN-HT24B」

 

特筆すべきは「まぜ技ユニット」だろう。内鍋の内ブタの部分に装着されているユニットが、必要に応じて鍋の中の食材を混ぜ合わせてくれるというものだ。カレーなどを作る場合、普通は肉や野菜にしっかりと火を通してから仕上げにカレールウを入れるが、ホットクックはまぜ技ユニットがあるために最初からルウを入れておくことができる。つまり「食材をすべて最初に内鍋にセットし、あとは待つだけ」という調理スタイルを実現しているというわけだ。

↑内鍋の内ブタ部分に自動的に開閉する「まぜ技ユニット」が搭載されている
↑内鍋の内ブタ部分に自動的に開閉する「まぜ技ユニット」が搭載されている

 

作業時間を省く「新しいタイプの時短」がウケた

「食べごろ予約調理」機能にも注目したい。これは事前に食材をセットしておくことで、食べたい時刻にできたての料理を作ってくれるというもの。夜にセットして朝にできあがるようにするとか、夕方にできあがるように朝の空いた時間にセットするといった使い方ができる(最長12時間後までの予約設定が可能)。食材が腐敗しやすい温度帯を避けてしっかりと熱を加えてくれるため、1年中安心して使えるのがうれしい。

 

ちなみに、ホットクックは圧力をかける方式ではないため、一口に「時短調理」といっても、肉を短時間でやわらかく煮込むような使い方には向いていない。しかし先述のように食材を仕込んでおけば後は放っておくだけなので、工程ごとに何らかの作業をしなければいけない煩わしさから解放される。そういう意味では、調理時間を短縮するのではなく、作業そのものにかかる時間を省く、新しいタイプの時短調理家電といえるだろう。

↑ホットクックで、水を使わずに作る「無水カレー」を作ったところ
↑ホットクックで水を使わずに作った「無水カレー」

 

ホットクック最大の弱点は「応用が利きにくい」こと

ホットクックは野菜を下ゆでしたり、麺をゆでたり、ご飯を炊いたりすることもできるのだが、最大の弱点は「応用が利きにくい」ということだろう。

 

レシピブックに従えば119種類の料理を自動調理してくれて、35種類の食べごろ予約調理メニューも用意されている。レシピは甘みや塩味を抑えた比較的優しい味付けなこともあって、手軽に満足度の高い料理が作れるはずだ。しかし、自分オリジナルの料理を作るために活用したいと思った場合、一気にハードルが上がってしまう。レシピブックを見ながらでないと、どのメニューがどのような調理をするのかが分からないためだ。

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↑ホットクックのレシピブック

 

以上のことから、ホットクックは、一人暮らしや新婚生活をスタートしたばかりで、料理に慣れていないという人にオススメ。一方で料理が得意で、オリジナル料理をたくさん作りたいという人にはあまりオススメできない。

 

「バーミキュラ ライスポット」は「炊飯もできる電気無水調理鍋」だ

バーミキュラのバーミキュラ ライスポットは、もしかしたら「炊飯器」として認識している人も多いかもしれない。しかし。先述した通り、バーミキュラ ライスポットは炊飯専用機ではなく、「炊飯もできる電気無水調理鍋」と認識した方がいい。その真骨頂は「無水調理も含めた本格的な調理を、失敗なく手軽に行える」という点にある。

↑バーミキュラの「バーミキュラ ライスポット」(写真左)。写真右は2010年から販売している鋳物ホーロー鍋の「オーブンポットラウンド」
↑バーミキュラの「バーミキュラ ライスポット」(写真左)。写真右は2010年から販売している鋳物ホーロー鍋の「オーブンポットラウンド」

 

バーミキュラ ライスポットは、2010年に愛知ドビーが発売して以来、料理好きに絶大な人気を誇る鋳物ホーロー鍋「バーミキュラ」と、専用ヒーター「ポットヒーター」を組み合わせたものだ。バーミキュラの特徴は、鍋とフタが100分の1mmの精度でピッタリとはまる加工が施されていること。これによって蒸気が無駄に抜けることがなく、鍋の中で食材がしっかりと対流するという。鋳物鍋の遠赤外線効果で、食材の中までしっかりと熱が伝わるというのも大きな特徴だ。

 

モードは「炊飯モード」と「調理モード」の2種類を用意。炊飯モードでは5合までの炊飯が可能で、玄米や炊き込みご飯、おかゆなども作れる。2つのタイマーを用意しており、予約炊飯にも対応する。

↑バーミキュラ ライスポットの操作部
↑バーミキュラ ライスポットの操作部

 

調理モードでは、「極弱火」、「弱火」、「中火」の3つの火加減を用意しており、こちらもタイマー調理が可能になっている。それに加えて30℃~95℃までの低温調理も可能だ。

 

ライスポットには、ホットクックの「まぜ技ユニット」のような気の利いた機能は搭載されていないが、ガスコンロやIHクッキングヒーターと同じ使い勝手で調理できるのが大きなポイントとなっている。火加減を選んで「スタート」ボタンを押せば、通常のガスコンロなどと同じように使えるし、火加減を選んでからタイマー設定をすれば、タイマー調理もできる。最近ではタイマー機能が搭載されているガスコンロやIHクッキングヒーターも登場しており、これを導入するだけで消し忘れなどの不安を抱えることなく安心・安全に調理できる。

↑ライスポットで水を使わずに作る「無水ポトフ」を作ったところ
↑ライスポットで水を使わずに作る「無水ポトフ」を作ったところ

 

↑ライスポットで作られたローストビーフ
↑ライスポットで作ったローストビーフ

 

バーミキュラを使った料理のレシピはオフィシャル以外にも多数出版されているが、ライスポットならそのまま活用できる。もちろん火加減の設定は一般的なガスコンロなどと同じなので、一般的なレシピ本もそのまま使える。そのあたりがホットクックとは最も大きく違う点だろう。

 

鍋やフタが重く扱いにくいのが最大の弱点

最大の弱点は、扱いにくいことにある。厚手の鋳物鍋にガラス質の釉薬を吹き付けて焼き付けたホーロー加工を施しているため、鍋やフタが重くて扱いにくい。落としたり傷つけたりすれば、ホーロー加工がはがれてしまう場合もある。調理直後は鍋の取っ手が熱くなるため、その取り扱いにも注意が必要だ。鍋とフタの接合部分はホーロー加工がされていないことからさびやすく、そのメンテナンスも必要になる。とはいえ、おいしくて健康的な無水調理を失敗なくできるという点は大きな魅力。料理が得意な人はもちろん、いろいろなレシピをとことん試しながら料理を覚えたいという人にオススメだ。

 

次回からは、ヘルシオ ホットクック、バーミキュラ ライスポット の個別のレビューをお届けする。詳細なレビューを通して、両機の「得意・不得意」「メリット・デメリット」をより深く掘り下げていこう。