我が家は夫婦そろってコーヒー好き。朝は、ほぼ毎日豆を挽いてコーヒーをドリップしています。ただし、毎回面倒に感じるのがお湯を沸かす作業です。我が家のコンロはガス式なので、ヤカンを放置して別の作業をすることができません。そしてなにより、後述する「温度を計る」のが面倒! そんな訳で、最近探していたのが「コーヒー好きに理想的な電気ケトル」です。電気ケトルを導入すれば、お湯を沸かしたまま放置しても安心ですし、なによりヤカンがコンロを占有することがありません。
とにかくコーヒーをおいしく淹れられるケトルが欲しい!
我が家でケトルを使用するのは、ほとんどがコーヒーを淹れる時。このため「コーヒーをおいしく淹れる」ことに特化したモデルを探していました。我が家の譲れない条件は2つ。
1.ノズルが細口であること
2.温度調整ができること
ところが、探してみると意外に2.「温度調整ができる」電気ケトルが少ないのが現状です。そんななか、ついに我が家の条件にピッタリ合致したモデルを見つけました。それが、ハリオの「V60温度調整付きパワーケトル・ヴォーノ EVKT-80HSV」(以下、EVKT-80HSV・実売価格2万1600円)です。
コーヒー好きなら狙った場所に注げる細口ノズルは必須
ドリップコーヒーの必須アイテムともいえるのが、ノズル先が細口のケトルです。ドリップコーヒーは、最初に粉に少量のお湯を染みこませて豆を蒸らします。このとき、少ない量のお湯を豆全体に行き渡らせるため、お湯を少量ずつ細く注げるのが理想的。また、濡れていない部分を狙って、思った場所にお湯を注げることも重要です。このため、コーヒー用のケトルは、ほとんどがノズル先が細くなっています。そして、今回見つけたEVKT-80HSVも、もちろん細口ノズルです。
温度調節機能を持ち1℃刻みの設定が可能!
コーヒーを抽出するお湯で、もう一つ重要なのが温度。実はコーヒーは75~93℃あたりが抽出に適した温度だそうです。つまり、沸騰したてのお湯を使うのは厳禁。我が家では、85℃で抽出したコーヒーがおいしく感じられるため、「今日はどうしてもおいしいコーヒーが飲みたい」という日は、ケトルに温度計を挿して湯温を確認しながらお湯を沸かしています。とはいえ、毎日湯温を計るのは面倒なので、忙しい朝は沸騰後、適当にヤカンを放置してドリップするという手の抜きっぷりです。
もちろん、電気ケトルに温度調整機能があれば、面倒な温度を計る作業は必要ありません。湯温を自動的に調整できるケトルはないものか……と思っていたところ、出会ったのが本機でした。ちなみに、EVKT-80HSVの温度調節機能は60~96℃までで、なんと1℃刻みの設定が可能です。
ケトルとしての使いやすさはさすがハリオ
ここからは、実際にEVKT-80HSVを使ってみます。まず、ハンドルは波形形状で、しっかりとグリップできるようになっています。また、本体に取り付けられたノズルの角度が良いのか、軽く本体を傾けただけで、ピュッとお湯が飛び出します。最初は加減がわからず、思った場所より遠くにお湯を注いでしまったのですが、慣れてくると力を入れずにお湯が注げて快適でした。ドリップはお湯を細く、長く注ぎ続ける必要があるので、この「力がいらない」という点はうれしいですね。また、ノズルの水切れも良好。急にお湯を注ぐのをやめても、ほとんど液だれがありません。
また、フタの裏には水分が露になってついていることが多いので、斜めに置くと露がたれて机が濡れがち。ですが、EVKT-80HSVはフタのつまみ上部が平らで、机の上などに逆さに置けるのも便利です。ひとつひとつの細かいポイントまで「ケトルとしての使いやすさ」を追求している点はさすが。さすがはハリオ、長年コーヒー器具を販売しているだけのことはあります。
反面、「電気ケトルとしての操作」は、少々使いにくく感じました。まず、加熱時は水温と設定温度が交互に表示されますが「水温」「設定温度」などの表示がないため、今どちらの数字が表示されているのか直感的にわかりません。また、温度調整時は設定温度に到達後、15分間は保温されるのですが、沸騰させた場合は保温されないなど、取扱説明書を読まないとわかりにくい部分もありました。
沸騰湯と85℃指定で淹れたコーヒーにはどんな違いがある?
ところで、本製品は税込2万1600円。電気ケトルにしては少々お高めです。そのため「温度の違いでそこまでコーヒーの味は変わるの?」と、気になる人もいるのではないでしょうか? そこで今回は、沸騰したての熱湯で淹れたコーヒー(以降沸騰コーヒー)、EVKT-80HSVで85℃にした熱湯で同時にコーヒーを淹れてみました。どちらも紙フィルターで一杯ずつドリップ。コーヒー豆は15g。お湯は140mlで抽出しています(蒸らし分除く)。
結果は、なんと沸騰コーヒーのほうが色が濃く、香りも香ばしいという結果に……。ただし、味は圧倒的に85℃コーヒーのほうが上。沸騰コーヒーは強い苦みのほか、渋みとえぐみも感じます。
また、これらのコーヒーを2時間置いてみたところ、さらに違いが大きくなりました。85℃コーヒーは渋みと苦みが少し出たものの、ストレートで飲めなくはありません。ですが沸騰コーヒーは渋みと苦みが強くなったほか、なぜか酸味も強くなりました。牛乳を混ぜればごまかせそうですが、正直ストレートでは飲みたい味ではありません。また、時間が経つと、なぜか沸騰コーヒーは「濁り」が発生するのも特徴的でした。
ちなみに、今回はコーヒーだけでなく「70℃で淹れる」とパッケージに書いてあった煎茶でも飲み比べをしてみました。結果「香りは沸騰湯で淹れた煎茶、味は70℃のお湯で淹れた煎茶の方が上」という、コーヒーと同じ結果になりました。ただし、日本茶はコーヒーよりも特に味の差が顕著で、甘みと旨みが驚くほど違います。「これ、本当に同じ茶葉?」と確認したくなるレベルです。
自分の家の豆にぴったりの温度を探し出してみては?
先述した通り、EVKT-80HSVは一般的な電気ケトルより価格は高めで、万人にオススメできる製品ではありません。価格のほかにも、ノズルが細いのでお湯をドバッと注ぎたい人には不向き。たとえば、ケトルを使う主な目的が「カップラーメンにお湯を注ぐ」という人には向いていないでしょう。
しかし、我が家のように「おいしいコーヒー」が目的で電気ケトルを購入するなら、むしろEVKT-80HSVは強くオススメしたい製品。毎朝のコーヒーがお湯の温度で失敗することがありませんし、お湯の温度を1℃ずつ変更できるので、自分の家で使っている豆にぴったりの温度を探し出すのにも役に立ちます。設定した温度を15分しかキープできないなど、すべてが理想というわけではありませんが、「理想に一番近いモデル」であることは確か。すでに我が家では、本機のない生活にはもう戻れなくなっています。コーヒーや日本茶など、「沸騰湯でなく、低温で淹れる」という飲み物が好きな家庭なら、きっと手放せなくなるのは間違いありません。