文房具
2019/11/22 19:30

分からない単語を指差すだけ! 机上で高速翻訳する電子辞書「Yiida」をレビュー

【きだてたく文房具レビュー】指差した英単語を瞬時に日本語訳する翻訳機

中学の授業から大学の一般教養まで、一応それなりの時間を割いて英語教育というものを受けてきたつもりだ。だがそれで英語に困らなくなったかというと、おそらく同様の教育を経てきた皆さんと同様、「できれば英文に触れずに一生を過ごしたいなぁ」ぐらいのレベルである。

 

とはいえ、仕事でどうしても原書の英文に目を通さなければいけなかったり、海外のネットショップに注文メールを書いたりと、英語をどうにも避けて通れないシチュエーションは存在する……。

 

ありがたいことに、近年ではGoogleなどによる翻訳機能が便利になったこともあって、ネット上の英文を読むのはさほど怖くなくなった。しかし問題なのは、その手が使えない書類や本・雑誌など、紙面の英文だ。

 

スマホのカメラ連動型翻訳アプリで英文を撮影→自動OCRで翻訳、という方法はあるが、「あー、この単語だけ分かったら読めそうなんだけど」レベルの場合、スマホでいちいち単語だけ撮るのは、正直面倒くさい。もちろん、辞書を引くなんて論外の手間。

 

ようするに、知りたい単語を指さすだけで意味を教えてくれるような、そういう魔法はないのか、という話なのだ。

 

指を差すだけで英単語の意味を教えてくれる魔法の杖

結論から言うと、魔法は存在する。現在クラウドファンディング展開中のスキャン式電子辞書「Yiida」が、マジ魔法なのだ。どれぐらいの魔法レベルかというと、まさに“紙面の英単語を指差すだけでその意味を教えてくれる”のである。完全に魔法。

↑GenHigh Tech「Yiida」1万8571円(税込・一般発売予価)
↑GenHigh Tech「Yiida」1万8571円(税込・一般発売予価)

 

使う際はまず、家電のリモコンサイズの本体をカシャッとスライドさせて伸ばし、読みたい英文の書類や本の前に立てる。あとは、スマホにインストールした専用アプリを起動してBluetoothでペアリングすればもう、スタンバイ完了だ。

↑使用時はスライドさせて伸ばすだけで電源オン。カメラ部が露出して待機状態となる
↑使用時はスライドさせて伸ばすだけで電源オン。カメラ部が露出して待機状態となる

 

試しに適当な英単語を指で指で指し示すと、一瞬でスマホの画面に単語とその訳が表示され、ネイティブ音声の読み上げも行われる。指を別の単語に移すと、また一瞬で認識する。あまりに簡単すぎて、呆気にとられたほど。感覚的には、自分の隣に英語ネイティブの人が座っていて、指差したところを次々訳してくれる、みたいなものである。

↑本や書類の天側に立てることで広範囲をスキャンし、指さした英単語を認識する(写真はイメージ)
↑本や書類の天側に立てることで広範囲をスキャンし、指差した英単語を認識する(写真はイメージ)

 

もちろん実際のところは魔法でもなく、本体の中に小さい英会話の先生が住んでいるわけでもない。本体を伸ばした先端にカメラが内蔵されており、指差しを認識してスキャンし、アプリに情報を転送してOCR・翻訳表示・読み上げ、という作業を一瞬(メーカー公称値0.3秒)で行っているだけの話だ。

 

スキャン範囲は、カメラを中心にA3ヨコいっぱいぐらいなので、大きめの洋雑誌でも端まできちんと認識可能。さらにペラ1枚の書類から厚みのあるぺーパーバックまで、ピント合わせを待たされないのも良くできている。


 

辞書機能は研究社の『新英和中辞典 第七版』を搭載しており、一般レベルの語彙はまったく問題なし。学術用語や専門用語もある程度フォローしているので、英語学習からビジネスユースまで、使える範囲は広そうだ。

 

ちなみに、あくまで単語単位での翻訳なので、慣用句など複数単語の組み合わせには対応していないが、「be able to」なら「able」を指さすと使い方の例文として出てくる、といった例はあった。

 

一方気になる点としては、指差す部分で微妙に認識ズレを起こすと単語の前後が欠けて「辞書に収録されていません」と出ることも。その場合は、少し指を動かして再認識させると成功する場合が多い。

 

もうひとつ、複数形のsが語末につくと認識しないケースが、わりとあるのも気になった(Dogは認識するが、Dogsは認識しない、というような)。せめてアプリ上で“s”だけ削るなどの修正ができればいいのだが、残念ながらそういった作業には対応していないようだ。

↑認識テストの結果。イタリックはもとより、様々なフォントを読み取ったのはすごい。ただし筆記体風は基本的に苦手のようだ
↑認識テストの結果。イタリックはもとより、様々なフォントを読み取ったのはすごい。ただし筆記体風は基本的に苦手のようだ

 

逆に感心したのが、フォントや文字角度によって読み取り精度があまり変わらないということ。例えばフォントは「セリフ体(明朝系)」「サンセリフ体(ゴシック系)」ともにほぼ認識し、「ポップ体」もよほど変形がかかっていなければ問題なし。

 

文字角度に関しては、精度は落ちるものの、斜めに流れる文字や、厚い本のノド(綴じに近い部分)側で湾曲した文字がきちんと認識されたのには驚いた。書籍として印刷されたものならだいたいは読み取れるんだろうな、という印象である。

↑ページの湾曲した位置に印刷された単語も、認識時間はかかったものの読み取れた
↑ページの湾曲した位置に印刷された単語も、認識時間はかかったものの読み取れた

 

↑サイズ的に文字として認識できないのか、ここまで大きなものは読み取れなかった
↑サイズ的に文字として認識できないのか、ここまで大きなものは読み取れなかった

 

それから、「Yiida」本体で良くできてるなと感じたのが、底部の構造だ。本体をスライドさせて伸ばすと、底部に備えた吸盤が働いて、机の上にペタッと貼り付くギミックを持っているのだ。一度貼り付くと、多少揺れたぐらいでは倒れないぐらいに安定する。

 

背が高いものだけに、うっかり本の端でも当てでもしたら、倒れて破損する可能性だってある。そういうトラブルを防ぐために机に固定できるのは、かなりありがたい。

↑カメラユニットをスライドさせると底部からせり出してくる吸盤。これだけで意外としっかり吸着してくれる
↑カメラユニットをスライドさせると底部からせり出してくる吸盤。これだけで意外としっかり吸着してくれる

 

しばらく使ってみた感想としては、やっぱりこれは魔法だ。電子辞書としての手軽さで言えば現時点で間違いなく最強レベルだと思う。

 

いちいち単語を入力したり辞書のページをめくったりという手間がなく、スマホのカメラで撮る必要もなし。ただ次々と指を差すだけで英単語の意味が分かるのは、めちゃくちゃ便利だ。というか、そもそもこの魔法レベルのすごさを体験するだけで充分に面白い。

 

クラウドファンディング自体は11/28で終了になるが、その後は来年1月以降から一般発売の予定もあるとのこと。今まで英文を読むのが面倒だなー、と思ったことのある人なら誰でもメリットがあるはずのツールなので、機会があればぜひ試してみてほしい。