恥ずかしながら、クリアホルダーが好きだ。いや、好きなら好きで堂々としていればいい話で、恥ずかしながら、なんて付ける必要はない。ただ、クリアホルダーの極端なまでの地味さが、どうしてもそう言わせてしまうのである。
数ある事務用品の中でも雑兵感があり、明らかに主役の器じゃないなコイツ……という雰囲気。それがクリアホルダーの社会的な(大勢を占める)評価だと思う。
仕事をしていると手に触れる機会はやたらと多いが、あくまでも主役は中身の書類。クリアホルダーは、せいぜいお菓子の包み紙程度の興味しか払われない。例えば、外部から送られてきた書類がクリアホルダーに入っていたとしよう。もちろんあなたは興味があるのは書類の方で、クリアホルダーは「なんとなく」といった感じで机の引き出しに放り込むだろう。そうしたらあとは、何回か目立たない社内の連絡用に使い回され、ヨレや折れがついた辺りでポイと廃棄だ。そんな廃棄予備軍のクリアホルダーが、全国の引き出しにどれほど溜め込まれているか? 想像するだにせつない。
もちろん、そういう道具だから仕方ない、と言えばそうかもしれない。ただ、書類の包み紙もそれなりのプライドをもって働いており、さらには、これまで以上にあなたのお役に立とうと進化しているのだ。なんとも健気ではないか。
そんな“ビジネスパーソンの忠臣”ことクリアホルダーの便利なヤツを知ったら、もう二度と地味だの雑兵だの言えなくなるに違いないのだ。
自分専用のタフなクリアホルダーならコクヨ「ハードクリヤーホルダー<モッテ>」
ところでクリアホルダーには、大きく分けて2つの用途がある。ひとつは先から述べている“書類の包装紙”というもの。要するに、他人に渡す書類を保護するラッピング。もうひとつが、自分が書類をカバンに入れて持ち歩く際の“保護ケース”役である。
つまりは他人に渡すか渡さないかの差であるが、だいたいにおいて自分用のほうが乱雑に扱われ、よりハードな環境におかれがち。ならば自分用クリアホルダーは、多少値段がお高くとも(他人に渡さないから)頑丈で便利なものがいいだろう。
コクヨ
ハードクリヤーホルダー <モッテ> A4サイズ
230円(税別)
タフユースに耐える保護ケース的クリアホルダーは、各メーカーからいくつも発売されているが、ここ最近で特に筆者のお気に入りなのが、2019年夏にコクヨから発売された「ハードクリヤーホルダー<モッテ>A4サイズ」。
こちらは、クリアホルダーをまとめて収納する「クリヤーホルダーブック モッテ」、ページポケットに直接書類を保管する「クリヤーブック モッテ」に続く、モッテ兄弟の末子ということになる。
“ハード”クリヤーホルダーの名の通り、通常のクリアホルダーと比較すると、ハッキリと硬い。そして本体の硬さはそのまま、“守備力の高さ”に直結する。カバンの中に入れておいても、内部で揉まれて書類ごと折れたり曲がることなく、確実にガードしてくれるというわけだ。クリアホルダーにとって、硬さ=正義なのは間違いない。
本体の構造は、中心に硬いプレートを挟んで、表裏にそれぞれカバーがついた両サイドポケットとなっている。クリアホルダーで複数ポケットをもつものは珍しくないが、異素材を挟んで両面がホルダー、というのはなかなかレア。しかもこの方式が、思った以上に使いやすいのである。
通常の複数ポケットのホルダーに書類を分類して入れた場合、取り出す時に「あれ、どのポケットに入れたっけ?」と分からなくなることがある。客前であわててポケットをさぐるのもみっともないし、その間に次の訪問先で使う予定の書類を見られてしまう、なんてこともありうるだろう。
ところが、この表裏ポケットであれば、とりあえず表を見て裏を見て、で書類の所在は確実。取り出す時に違う書類を相手に見られる心配もない。
もうひとつ便利なのが、モッテシリーズお馴染みの、書類の脱落を防ぐストッパー。これは本体上端にナナメに配置されたベルトで、ここにホルダーの表紙端を差し込むことで、中に収納した書類がすべり出るのを防止する役割をもっている。
持ち歩く際に、カバンの中でクリアホルダーから書類がはみ出し、そのはみ出し部分が折れている……なんてケースは意外と多い。そんなトラブルを事前に防いでくれるのはありがたい。また、ホルダーを持ち上げたときに書類がバサバサと落ちた、なんて恥ずかしいうっかりミスもこれでガードだ。
ハード&はみ出し防止の防御力と、両サイドポケットの使いやすさは、今のところ不満なし! と言い切れる便利なもの。雑兵どころか、よくできた執事みたいなもんである。
もし今までの人生で、客前で折れた書類を出して恥ずかしい思いをした、という経験があるなら、まずはこれを使ってみるべき。