文房具
筆記用具
2020/10/9 19:00

“細筆”感覚の軽快なタッチが心地良い! ジェットストリーム誕生の伏線となった三菱鉛筆「ユニボール5」

【文房具愛好家・古川耕の手書きをめぐる冒険】

文房具をこよなく愛す、放送作家の古川耕氏。雑誌『GetNavi』で「手書き」をテーマとした新連載をスタートした。デジタル時代の今だからこそ、見直される手書きツール。いったいどんな文房具の数々が披露されるだろうか。第1回は“赤青鉛筆”と呼ばれた懐かしの「朱・藍鉛筆」、今回は?

 

第2話

三菱鉛筆
ユニボール UB-105
110円(税込)

1981年に発売された水性ボールペン。事務用水性ボールペンの定番として根強い人気を誇る。インクは黒・赤・青の3色で、乾くと耐水性に変化。ボール径は0.5mm。

 

ジェットストリームに影響を与えた軽やかなタッチの一本

人とボールペンの話をしていて、どうやら自分はボールペンの“重さ”に人一倍関心があると気が付いた。具体的にいうと、ボディの重心のバランスとインクの粘度、ボディの重量の関係をいつも気にしている。例えば、ここ数年で定着した滑らかな低粘度油性インクなら、断然ボディも軽いほうがいい───と力説しては怪訝な顔をされている。でも自分としては、重さは誰でも分かる、最も直感的な“性能”だと思っているのだけど。

 

この観点で一番好きな一本は三菱鉛筆の水性ボールペン「ユニボール UB-105」、通称「ユニボール5」だ。水色のプラスティックボディがチープでかわいらしく、手に取ると見た目の印象どおりに軽い。水性ボールペンらしい潤沢なインクフローはかすれ知らずで、軸の真ん中あたりを軽くつまんでペン先を走らせると、まるで細い筆を扱っているような軽いタッチが楽しめる。ここまで書いていて心地良いペンはそうない。

 

初めてこのペンを意識したのは、三菱鉛筆の市川秀寿(いちかわしゅうじ)氏が愛用していると本人にうかがったときだ。2006年、ボールペンの歴史を決定的に変えた低粘度油性ボールペン「ジェットストリーム」の生みの親である市川さんは、油性インクの「重さ」が苦手で、UB-105のような書き味を目指しこのインクを開発したという。日本文具史にとって極めて重い意味を持つペンは、なんとも軽やかな一本から生まれたのだ。

 

【第1話】久米宏氏の美学を見た! 扱いにくくも書くのが楽しい、懐かしの“赤青鉛筆”
https://getnavi.jp/stationery/524920/