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筆記用具
2024/1/25 21:30

大人の悪筆も矯正!「ポジットペンシル」を字にコンプレックスを抱える筆者が試してみたらどうなった?

「字が汚い」とか「落ち着きのない子どもっぽい字になってしまう」ことにコンプレックスを抱えている人は、意外に多く存在するのではないだろうか。実は、筆者もその一人。この連載の筆記具レビューでは、いつも落ち着きのない汚文字を読者諸氏にさらすことになるのが、本当に恥ずかしいのである。……などとボヤいていると、知人から「今さらだけど、筆記具の握り方が間違っているんじゃない?」という指摘を受けた。

 

そこで改めてネットで調べた “正しいペンの握り方” と自分の握りを比較してみると……確かにちょっと違っていた。そして正しい握り方だと、ペン先が自由に動かしやすく、ほんのちょっとだけれどマシな字が書けているように思えたのだ。それならば、正しくペンを握るための矯正グリップなどで握り方を矯正すれば、もっときれいな字が身につくのではないか?

↑左が以前までの筆者の握り方。中指以下を強く握り込んでしまっているため、窮屈でペン先が動かしにくかった

 

自然に正しい握り方ができる矯正シャープペンシル

しかし、矯正グリップ導入にはひとつ問題がある。握り方矯正グリップのほとんどは幼児〜小学校低学年向けに作られていて、鉛筆に装着して使う前提のものばかりなのだ。鉛筆を削る度にいちいち矯正グリップを外して、また着け直して、というのはボールペン・シャープペンシルに慣れた身ではどうしても面倒くささが先立ってしまう。では他に何か良いものはないか、と探していたところ、2023年9月に発売されたソニック「ポジットペンシル」に行き当たった。

SONiC
ポジットペンシル(芯径1.3mm/0.7mm)
850円(税別)

 

ポジットペンシルは、太芯(0.7mm/1.3mm)の三角軸シャープペンシルと矯正グリップが一体化した筆記用具だ。当然ながら芯を削る必要がないので、グリップの着け外しもしなくて済む。シリコン製のグリップからは、左右に各1本のリングが飛び出しており、握る際にはそれぞれのリングに親指と人差し指を下から上へ通す形となる。

↑ポジットペンシルを装着した状態。リングのねじれに合わせて指を沿わせると自動的に最適な握りになる仕組み

 

グリップ下部には凹凸があり、軸を握ったときに中指の側面から腹側までがフィットする。左右リングで親指と人差し指を固定しつつ、下部の凹凸に中指をハメ込むように持つことで、自動的に最適な握り方が決まるという仕組みだ。しかも、リング固定のおかげで軸を握るのに指の力はまったく必要なく、ただ軽く指を添えるだけでOK。

↑下部のくぼみに中指をはめることで、さらにペン先が動かしやすくなる

 

この力加減が身につけば、字が汚い人にありがちな「つい無駄に力を込めてグリップを握る」→「力が入りすぎて指が上手く動かせない」→「字が汚くなる」という負のコンボを元から絶つ効果も期待できるのではないだろうか。また、無駄な力を抜くことができるので、長時間筆記がラクになる可能性も高いだろう。

↑指にはほとんど力を入れず、グリップに沿わせるだけ。おかげでペン先がかなりスムーズに動かせるようになった

 

加えて、線を引くための指の動かし方も、このグリップなら理解しやすい。右利きの場合、ペンで縦線を引くには人差し指で軸を下に押すように、横線は親指で右側に押すように、上側に跳ねるには中指で持ち上げるようにコントロールするのが基本。これもリングと下部の凹凸を意識することで、力を使わず効率的にペン先の移動を制御することができるのだ。筆者は特に、横線が極端な右上がりになるクセがあるのだが、しばらく使っているうちに意識ひとつでかなりコントロールできるようになった。

↑指先で操作しやすくなったため、線の上がり癖も少し緩和された気が……

 

シャープペンシルは1ノックで長く書けるセミオートマ機構を搭載

シャープペンシル自体は、“セミオートマチック”とでも言うべき機構を搭載している。これは、筆記によって芯が減ると先端の金属パイプが紙に当たってわずかに後退し、その後退分だけ芯が新たに露出するという仕組みだ。そう聞くと最近人気のオートマチック機構のように思えるが、後退したパイプは自動で元の位置に復帰せず、再びノックし直すまではただ後退し続けるだけ。なので、オートマではなくセミオートマと呼ぶのがしっくり来る感じだ。

↑セミオートマ機構は、金属パイプが後退しきるまでノックせずに書き続けることが可能

 

リングに指を通している都合上、握り変えてのノックにやや手間があるため、この機構を搭載しているのだろう。せっかくならオートマ機構にしてくれたら良かったのに……と思わないこともないが、これでも普通のシャープと比べて1ノックで書ける距離は2.5倍ぐらい長くなるので、そこはまぁ我慢かな、というところ。太芯だけに偏芯も気になるのだが、偏芯対策として軸を回転させることが一切できないのは個人的に残念である。

 

ところで、ボールペンを日常筆記具として使っている我々のような字が汚い大人は、この便利なグリップを普段のボールペンと合わせて使ってみたい、と思うんじゃないだろうか? それなら、偏芯も気にしなくて済むわけだし。

↑個人的には、シャープペンシルよりもボールペンに装着して使いたい。グリップがツルツルしたペンに着けるとより効果的だ

 

結論から言うと、このグリップを軸径の合う別のペンに付け替えることも、可能といえば可能だ。グリップは大パーツと小パーツに分割されているため、外す場合は大パーツを先に動かすのがコツ。装着する場合は、逆に小パーツを先に動かす、と覚えておくと作業がしやすい。

 

ただし、メーカーが認める使い方ではないため、万が一破損などしても自己責任。もし試す場合には、そこは承知のうえでお願いしたい。

↑着け外しをする場合は、分割によってリングが伸びきらないように気をつけるとやりやすい

 

ポジットペンシルは学童用グリップであるため、ややファンシーな外見なのは仕方がない。個人的には、そこを押してでも字がきれいになるなら使うべきだと考えている。ただし、すでに自分の握り方が完成していて自筆に不満がない人が使うと、単に指が固定されて窮屈なだけの拘束具になってしまうので、そこは注意して欲しい。