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2020/3/15 18:54

海と楽しいキャラクターが迎える「ごめん・なはり線」――心ときめく12の秘密

【ごめん・なはり線の秘密⑨】安芸といえば阪神ファンの聖地!

土佐湾を眺めるうち、穴内駅(あなないえき)から安芸市へ入る。安芸市と聞けば、プロ野球好きの方の中にはわくわくする思いを抱く方も多いかと。筆者もそんな中の1人だ。このローカル線の旅も、安芸に立ち寄りたい目的もあった。

 

安芸駅のひとつ手前、球場前駅の目の前に安芸市営球場がある。この球場の愛称は「安芸タイガース球場」だ。この愛称どおり阪神タイガースとの縁が深い。ごめん・なはり線が開業する前の、土佐電気鉄道安芸線が走っていた1965(昭和40)年度から阪神球団のキャンプが行われてきた。今も若手中心の秋季キャンプ、そして2軍の春季キャンプにこの球場が使われている。

 

高架駅を降りると、目の前に安芸ドーム(屋内練習場)がある。メイングラウンドはドームの裏手だ。取り囲むスタンドにはおもに女性ファンが多く集まり、熱心にグラウンドに目を向けていた。

↑球場前駅が安芸市営球場の最寄り駅。駅のキャラクターは「球場 ボール君」。駅前のトラ仕様の自販機には思わず笑ってしまった

 

筆者が訪れたのは秋。時間に余裕がなかったため小一時間で引き上げたが、穏やかな空気が球場を覆っていた。もっと過激に若手を鍛えるシーンが出会えるのかと思ったが、これで大丈夫なのだろうか? とちょっと不安にかられた。

↑安芸市営球場のメイングラウンド。秋の安芸キャンプには多くのファンが集い、にぎわっていた

 

 

【ごめん・なはり線の秘密⑩】車庫がある安芸駅構内が気になる

さて球場前駅から次の駅、安芸駅を目指す。後免駅から安芸駅までは約40分の距離だ。安芸駅は沿線で最も賑わいが感じられる。この駅止まりの列車も多い。奈半利行の列車の乗客も、多くがこの駅で下車してしまった。

 

鉄道ファンにとって、安芸駅は気になる駅だ。駅構内に検車区があり、留置線には出番を待つ車両が多くとまる。一般塗装の9640形以外に、「てのひらを太陽に号(9640形10)」「モネの庭号(9640形5)」や、オープンデッキ付きの車両9640形S2が停車していた。

↑薄緑色のオープンデッキ車両は9640形2S(左)。車体には魚や野菜などのイラストが描かれる。右は9640形の一般車輌

 

安芸駅の次の駅、伊尾木駅は同線では珍しい地上部分を走る。この伊尾木駅の裏手には頑丈な造りのタワーが立っていた。このタワーは「避難タワー」と呼ばれる施設だ。太平洋に面した高知県は、南海トラフ地震による津波の被害が予想されている。高台にある施設と共に、こうした巨大な避難用にタワーを設けていざという時に備えているわけだ。

↑伊尾木駅の北側にある「津波避難タワー10号」。収容人数は160人と多い。沿線には複数の津波避難タワーが設けられている

 

【ごめん・なはり線の秘密⑪】駅ホームにある海抜表示の意味は?

沿線にはもしもの津波が発生した時に備えて、避難タワーをはじめ津波用の施設が多く用意されている。

 

安芸市の資料によると、ごめん・なはり線の駅も緊急避難所に指定されていた。たとえば穴内駅ホーム、ここは収容人数190人とある。球場駅前ホームは収容96人、下山駅ホームは収容190人となっていた。もしもの災害にはこのように複数の駅が緊急避難所として使われる予定になっている。

 

このあたり太平洋に面した高知県の沿岸部ならではの備えと言って良いだろう。

 

唐浜駅(とうのはまえき)から列車は安田町へ入る。次の安田駅と安田町内の駅が続く。田野駅は田野町、奈半利駅は奈半利町とそれぞれ町の玄関口となる。安芸駅ほどの賑わいはなかったものの、駅前はしっかり整備されていた。

↑ごめん・なはり線の終点・奈半利駅。キャラクターは「なは りこちゃん」だ。駅前から室戸方面や安芸駅へのバスが出ている

 

起点の後免駅から通して乗れば、約1時間前後で終点の奈半利駅に到着する。奈半利駅は高架上の駅で、ホームには高さ海抜12.9mとあった。ホームに掲示された案内には「津波浸水予測では浸水しない地点ですが、注意して下さい」とある。この奈半利駅ホームも、同線の他の高架上の駅と同じく、緊急避難場所に指定されていた。

↑奈半利駅のホームにあるホームの高さを示す表示。加えて避難場所であることを示す案内が掲示される。こうした表示が沿線各所で見受けられた

 

 

【ごめん・なはり線の秘密⑫】徳島方面へ行く公共交通機関は?

奈半利駅は高架上にある駅だが、線路はその先、ぷっつりと途切れている。駅の先、遠洋漁業の基地として知られる室戸市がある。当初計画された国鉄の阿佐線は海沿いを走り室戸へ。そして阿佐海岸鉄道の甲浦駅(かんのうらえき)まで線路が結ばれる計画だった。

 

現在、奈半利駅と室戸、室戸の先、甲浦駅の間は高知東部バスによって結ばれている。両駅間の距離は約70km弱あり、バスで約1時間50分かかる。

↑奈半利駅前からは高知東部バスの利用が可能。室戸や阿佐海岸鉄道の甲浦駅へ向かうバス便もある。お遍路ツアーで利用する人も多い

 

国鉄阿佐線により、ごめん・なはり線の奈半利駅と結ばれる予定だった阿佐海岸鉄道の甲浦駅。この駅は、高知県の最東端にある駅だ。高知県内の駅とは言うものの、徳島県との県境がすぐ間近にある。鉄道の利用ならば徳島県の県庁がある徳島駅に向かうほうがはるかに便利だ。

 

阿佐海岸鉄道では、現在DMV(デュアルモードビークル)という、バスとしても運行できる鉄道車両の導入を進めている。まだ正式な導入日は発表されていない。導入後は同鉄道の路線を走り、終点の甲浦駅に設けられたアプローチ道路を降りて、路線バスのように道路上を走る。現在の予定では週末に、室戸市内まで足を延ばす案も計画されている。

 

このDMVが好調で利用者が増えれば、車両の増備が可能となりそうだ。となれば将来は奈半利駅まで足を延ばす希望も見えてくる。沿岸を巡る予定で計画された国鉄の阿佐線。先人たち100年前に描いた夢は、DMVという姿に形を変えて、実現する可能性を秘めている。

 

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