昨年9月、世界No.1のタイヤメーカーであるブリヂストンから、乗用車用の最新スタッドレスタイヤ「BLIZZAK VRX3(ブリザック ヴイアールエックススリー)」が発売しました。4年ぶりにモデルチェンジされたこのタイヤは、“新次元のプレミアムブリザック”と位置付けられているだけに、その能力の高さは大いに気になるところです。今回は北海道での試乗を通してその実力を体験して参りました。
北海道と東北北部の主要五都市で2台に1台が装着
そもそもブリザックといえば1988年に登場以来、33年にわたって進化を重ねてきた歴史あるスタッドレスタイヤです。その評価は特に積雪地で高く、ブリヂストンの調査によれば、北海道と東北北部の主要五都市での一般車装着率はほぼ2台に1台に近い46.2%。札幌市のタクシー装着率に至っては69.5%にものぼる高い装着率! このデータからはブリザックがいかに多くの人から信頼性を獲得しているかが推察できると思います。
BLIZZAK VRX3はその最新モデルとして、そうした実績を踏まえてさらなる「氷上性能の大幅向上、ライフ性能、効き持ちの向上を実現した新次元のプレミアムブリザック」として誕生しました。ブリヂストンによれば、氷上制動性能を先代「VRX 2」比で20%向上させながら、耐摩耗性などライフ性能も17%も向上させているとのこと。開発陣としては、そのほかにもメインの氷上性能だけでなく、ドライ路面や雪混じりの路面など、非積雪地域での性能向上にも努めたそうで、その性能もぜひ体験して欲しいとも話していました。
中でもライフ性能についてはユーザーがもっとも求めることです。しかし、スタッドレスタイヤの構造上、氷上や積雪路でもグリップ力を高めれば摩耗はしやすくなり、早いタイミングでの交換が必要になります。そこでVRX3ではこの相反するテーマにあえて挑戦。積雪路や氷上での水はけ能力を高めつつ、タイヤブロックのサイズを均一にして接地圧を路面に行き渡らせるなどして偏摩耗性を向上させたのです。
ドライのオンロードで乗り心地の良さや高い静粛性を実感
さて、今回の試乗、“冬の北海道”ということでスノードライブを予想していました。ところが、訪問した12月中旬は道路上に積雪がゼロ! というあいにくのコンディション。雪上試験はテストコースに人工降雪機で雪を降らせてやっとコースを作り上げたという状態でした。つまり、期せずして開発陣が話していた、積雪路とドライ路面での実力を同時に北海道の地で体験することになったのです。
オンロードでの試乗はフォルクスワーゲン「ポロ」とアウディ「A4アバント」の2台。ポロはFFで185/65R15サイズを、A4アバントは4WDで245/40R18サイズを装着していました。
ポロは元々、路面からの反応がキツメに出る傾向にありましたが、それがVRX3を履くことでそれをいなしてくれているようにも感じました。それでいてステアリングの応答性が良いものだから、スタッドレスタイヤではありがちなグニャッとした曖昧さはなく、ドイツ車らしいキレの良いフィーリングとして体感できたのです。
A4アバントでは、走り出すとしっかりとしたフィールがすぐに感じ取ることができました。スタート時にはA4アバントが発生する太いトルクを確実に路面へ反映させて、コーナリングでも腰くだけするような印象はありません。気持ち良いハンドリングを体験させてくれたのです。中でも驚いたのが乗り心地の良さと静粛性です。荒れた路面でもその振動を和らげてくれている印象で、さらに静粛性の高さはスタッドレスタイヤとは思えないハイレベルなものでした。これならバッテリーEVで使った場合でもそのメリットを十分感じ取れるはずです。
わだちのあるシャーベット状の積雪路でも安心して走れる心強さ
続いては、人工雪で作られたテストコースでの試乗です。雪質としてはほぼ“雪解け”状態の、わだちも多い条件の良いものではありませんでした。むしろこの状態は、日本の非積雪地で大雪が降った翌日あたりに生まれるシャーベット状の路面にも似ています。そういった意味では除雪がされない都会での走行をリアルに再現されたコンディションともいえます。
試乗は軽自動車から上級サルーンまですべて4WDという多彩な車種での体験となりました。ここで実感したのは車種を問わず、トラクションがしっかり効いていたことです。車重の軽い軽自動車である日産「デイズ」でこそ、わだちで跳ねるような印象がありましたが、そんな状態でも路面のグリップはしっかりキープ。4WDということもあって、ステアリングを勢いよく切った場合でもコントロールは極めてしやすく、安心して走行することができたのです。
また、メルセデス・ベンツ「Eクラス」ではFR系4WDとして別のフィーリングを味わうことができました。このクルマでは基本的に後輪の駆動力をメインとした上で、ステアリングを切ったときは前輪でグリップしながら操舵していく感じになりますが、この状況にもVRX3はしっかりと対応してくれます。重めの車重が功を奏している面もあるかとは思いますが、感覚としてはグリップ力に余裕を生み出したと言った感じでしょう。この余裕がいざという時の助けにつながるのです。
今回、スケート場での氷上試乗と合わせ、異なった3パターンでの体験ができたわけですが、それを通して理解できたのは。VRX3があらゆるシーンで高い能力を発揮するスタッドレスタイヤであるということです。氷上でも前モデル「VRX2」からの進化を感じさせましたが、ドライ路面での乗り心地の良さや静粛性を、シャーベット状の積雪路ではコントロールしやすさはまさにプレミアム感を実感できるものでした。こうした着実な進化があるからこそ、VRXシリーズが多くのユーザーから支持される理由なのだと再認識した次第です。
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