環境に優しいうえ、交通渋滞が緩和されるなどメリットが大きいことから、世界中の都市で導入が進んでいる自転車シェアリング。モビリティ革命に伴い様々なテクノロジーやサービスが開発されているなか、自転車シェアやe-bike(電動アシスト自転車)、電動スクーターなどの発展の可能性が高いアメリカの都市ランキングが今月、発表されました。
クルマ社会として知られるアメリカですが、自転車シェアリングやe-bike、Eスクーターなどの小型モビリティが広く使われ始めている都市もたくさんあります。アメリカ都市交通協会の算出によると、スクーターは0.5マイル~1マイル(0.8~1.6km)、自転車は1~3マイル(1.6~4.8km)の移動に使われているそう。5000万台に及ぶクルマの移動距離について分析してみると、混雑のひどい都市圏のクルマの48%が3マイル未満の移動距離だったと判明。3マイル未満の近距離移動をする人が、自動車ではなくスクーターや自転車を選択すれば、都市の道路渋滞の緩和につながると期待できます。
本稿では、クルマで3マイル(4.8km)未満の近距離移動をしている人の割合をもとにINRIX発表が発表した最新の「マイクロモビリティ・ポテンシャル・ランキング」をご紹介しましょう。なお、ここでのポテンシャルとは「マイクロモビリティがクルマでの移動を減らす可能性」を意味します。
1位 ホノルル(55%)
2位 ニューオーリンズ(52%)
3位 ナッシュビル(51%)
4位 シカゴ(51%)
5位 シャーロット(51%)
6位 ニューヨーク(51%)
7位 ポートランド(51%)
8位 ピッツバーグ(50%)
9位 ロサンゼルス(49%)
10位 サンフランシスコ(49%)
※( )内のパーセンテージは、3マイル(4.8km)未満の距離をクルマで移動している人の割合。
1位に選ばれたのはハワイ州ホノルルで、シカゴやニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコなどの大都市も上位に選ばれる結果となりました。
可能性を実現できるか?
3マイル以下の近距離移動にクルマを使っている人の割合が最も高かったハワイ州のホノルル。同都市はアメリカで交通渋滞がひどい都市ランキングで上位に入るほど、通勤時間帯の渋滞が問題となっている場所です。小さな島で道路に使える土地も限られているのに、中心部には高層コンドミニアムの建設が進み、これから進む人口増加もあわせて、交通渋滞の緩和は大きな問題のひとつなのです。公共交通機関はバスのみで、現在モノレールに似た鉄道計画「ホノルル・レール・トランジット」の建設が進められていますが、財政難などの問題もあり、なかなか予定通りに進んでいないのが実情です。
しかし2017年にはワイキキやダウンタウンを中心に、シェアリング自転車サービス「Biki(ビキ)」が登場。観光客とローカルの双方の間で利用が伸び、サービス開始当初は1000台の自転車と100の自転車ステーションが設置されていましたが、現在では1300台と130の自転車ステーションにまでサービスが拡大されています。
また、自転車シェアリングが多く設置されているワイキキやダウンタウンは、駐車場がとても少ないエリアのため、自転車の方が利便性が高いというメリットも追い風となっているでしょう。先のランキングでは、これに加えて1年を通して温暖で自転車などを乗るのにも適した気候であることも、ランキングトップの理由の1つとして挙げられています。また利用台数は限られていますが、2018年には自転車の貸し出しステーションがない自転車シェアリングサービス「シェアリー」もホノルルで始まるなど、ハワイのモビリティの選択肢は着実に増えつつあります。
日本もアメリカも、特に都市圏では、これから自転車シェアリングなどのシェアリングモビリティのサービスがさらに活発化していくと予想されています。気持ちのいい気候のときなどは、電車やタクシーではなく、そんなモビリティを自然と選べる日常になっていくといいかもしれませんね。