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2021/2/12 6:00

やっぱ無茶だった? 気球でネット回線をつなぐ「ルーン計画」が10年で終了。なぜ頓挫した?

Googleの親会社のAlphabetは、より多くの人たちがインターネットに接続できるように、世界のインターネット網を気球で構築する「ルーン」計画を行ってきました。発展途上国などを中心にインターネットにアクセスできない人は世界の人口のおよそ半分もいると言われています。いわゆる「情報格差(デジタル・デバイド)」を解決するために、同社は壮大なプロジェクトに取り組んできましたが、最近この計画の打ち切りが発表されました。

↑ルーン計画は絵に描いた餅に

 

まずはインターネットの仕組みを簡単に見てみましょう。日本では全国各地に設置されている基地局に電波が送られて、インターネットに接続できます。総務省では2023年度末までに5Gの基地局数を28万局以上にする目標を発表しており、日本全国でインターネットに接続できる環境を整えるためには、それだけの基地局の数が必要です。

 

このようなことをインターネットの環境が整っていない世界中の土地で行うには莫大なコストがかかります。そこで、Alphabetは成層圏に太陽光で動く機器を搭載した気球を飛ばし、それを利用してインターネット網を構築しようとしました。

 

同社は2011年に子会社ルーンを創業し、「プロジェクト・ルーン」を開始しました。地表から高度10㎞までを「対流圏」と呼び、そのうえの高度10㎞~50㎞を「成層圏」と呼びます。ルーンの気球は地上から高さ20㎞の成層圏に飛ばし、空に浮く基地局として稼働する計画でした。飛ばす気球はテニスコートほどの大きさで、マイナス90℃になり時速100㎞以上の強風が吹く成層圏で耐えられるようにポリエチレン製で設計されていました。この気球なら地上の施設の200倍の地域をカバーできるそうです。

 

このルーンの飛行は世界各地で行われ、実際、ペルーの洪水やプエルトリコのハリケーンで被害を受けた地域の人々にインターネットを提供してきました。さらに2020年にはケニアの企業と提携し、初の商用展開を発表。さらなる展開に期待が高まっていました。

 

しかし1月下旬、Alphabetはルーンの閉鎖を発表。長期的に安定した事業として継続するためのコスト引き下げが難しかったことに加えて、多くの地域で基地局建設のコストが下がり、ルーンの需要が低くなったことなどが原因のようです。

 

ルーン計画は実現まで至りませんでしたが、ソフトバンク傘下のHAPSモバイルが成層圏に「HAPS(高高度疑似衛星)」と呼ばれる無人航空機を飛行させてインターネット網の構築を目指すなど、新しい取り組みが世界中で進められています。情報格差を解決するための挑戦は終わりません。