2月から3月前半あたりは、まだまだ寒い日が多くて、野山や公園なども“冬枯れの風景”が広がっている。だが、全国のいろんな場所で梅の花が咲き始め、少しづつ“春の予感”を感じさせる時季でもある。そんな早春の花景色を求め、オリンパス「OM-D E-M1 Mark Ⅱ」とソニー「Cyber-shot RX10 IV」という2台のデジタルカメラを持って、横浜市の東南部にある庭園「三溪園」を訪れてみる。その撮影のなかで役立った機能を中心に、カメラの魅力や撮影旅のポイントを2回にわけて紹介。前編ではソニー「Cyber-shot RX10 IV」編をお届けする。
【今回の旅の相棒】
24-600mm相当をカバーする光学25倍ズームのレンズ一体型カメラ
ソニー
Cyber-shot RX10 IV
実売価格20万5070円
有効約2010万画素メモリー一体1.0型積層型CMOSイメージセンサーを採用し、24-600mm相当(35mm判フルサイズ換算)の光学25倍ズームレンズを搭載する、レンズ一体型デジタルカメラ。この高倍率ズームレンズは前モデルにも搭載されていたが、本モデルでは、クラス世界最速「0.03秒」の高速AFや、AF/AE追従「最高約24コマ/秒」という驚異的な高速連写性能を実現している。
早春の花景色という今回の撮影テーマでは、その高速性能はあまり威力を発揮する場面は少なかったが、スポーツや野生動物などの激しい動きや一瞬の変化を捉えることが可能な頼もしいカメラである。防塵・防滴に配慮したボディ設計も心強い。
【使って実感! 役立ちポイント①光学25倍ズーム】
広角~望遠まで幅広い領域を1台で描写しきる!
RX10 IVに搭載されるZEISS(ツァイス)ブランドのVario- Sonnar (バリオ・ゾナー) T∗ 24-600mmF2.4-4は、ズーム全域で高コントラストかつシャープな画質を実現する、大口径・高倍率のズームレンズ。超望遠撮影時や暗所撮影時に威力を発揮する4.5段分の補正効果がある「光学式手ブレ補正機能」も搭載しているので、優れたレンズ性能や1.0型センサーの実力が引き出せる。さらに、望遠端600mm相当で約72cmまで被写体に寄れるテレマクロ撮影も堪能できるのだ(最大撮影倍率も0.49倍と高い)。
次の3枚の作例は同じ場所から撮影したものだが、24-600mm相当という広いカバー領域のおかげで、これだけ違った表現が可能になる。
ここでは青空を背景にして、紅梅の木を見上げるように撮影。広角24mmだと、梅の木の周囲の様子まで写し込める。望遠300mmは、一般的な望遠ズームレンズの望遠端の画角。離れた枝の紅梅の様子がよくわかる。そして、超望遠600mmだと、その枝の特定の花が大きく写せるようになった。なるべく身軽でありたい撮影旅において、これだけ違う表現をレンズ交換なしで楽しめるというメリットは大きい。
【使って実感! 役立ちポイント②超望遠効果】
超望遠ならではの作画効果で、離れた被写体の存在感を高める!
望遠レンズには、離れた被写体を大きく写せる「引き寄せ効果」や、被写体(ピント位置)の前後が大きくぼかせる「ボケ効果」などの効果が顕著になる(ただし、ボケ効果に関しては、センサーサイズも関係してくる)。こうした作画効果は、200mmや300mm相当あたりの一般的な望遠域でも実感できるが、500mmを超えるような超望遠域になると、よりドラマチックな描写が得られるようになる。
この超望遠レンズ特有の効果を利用すれば、近づけない花の存在感を高めたり、華やかな“色彩のボケ”によって、幻想的な雰囲気に仕上げたりすることができるのだ。
次の作例では、画面奥の白梅にピントを合わせつつ、画面内の左側を“鮮やかな赤いベール”のようなサザンカの前ボケで彩り、写真を華やかに演出することができた。
上の写真の撮影状況が次の写真。赤いサザンカの花はカメラに近い距離にあるため、離れた白梅にピントを合わせると、サザンカのほうは大きくボケて写るという仕組みだ。
三溪園内では、何種類かの野鳥の姿も楽しむことができる。ちょうど、近くの松の木にヒヨドリがやってきた。人を警戒している様子はないが、極端に近づけるわけではない。こういった被写体も、600mm相当までカバーする RX10 IVなら容易に大きく写すことができる。
【使って実感! 役立ちポイント③ロックオンAF】
ロックオンAF+フォーカスホールドボタンで、狙った梅の花を継続追尾!
画面内に多くの花が入る場合、“どの花にピントが合っているか”が重要になる。狙いが決まったら、選択したフォーカスエリアに被写体を重ねて、シャッターボタンを半押し保持……というのがセオリー。だが、実際の撮影では、故意または不意の構図変化や風による枝の揺れなどで、フォーカスエリアから被写体が外れることも少なくない。
そんなときには、フォーカスエリアモードの「ロックオンAF」が役立つ。シャッターボタン半押しでピントを合わせると、そのあと被写体が移動しても、自動的にAFエリアも移動して被写体を追尾してくれるのである。また、レンズ鏡筒の横に配置されている「フォーカスホールドボタン」に、シャッターボタンと同様のAFを作動させる機能を割り当てて使用すれば、シャッターを切ったあとも追尾機能が継続されるのだ。
次の作例では、カメラを縦位置に構えながら、狙った紅梅の上下の空間の割合を変えながら構図を微調整して撮影。「ロックオンAF+フォーカスホールドボタン」の撮影方法を選択すれば、フォーカスエリアが移動するだけでなく、被写体やカメラの“前後の動き”にも対応できる(コンティニアスAFの機能により)。
RX10 IVは決して小型・軽量というわけではないが、これ1台で超望遠を含む幅広い範囲をカバーでき、交換レンズが不要のため持ち運ぶ機材が少なくて済む。なるべくフットワークを軽くしておきたい撮影旅にはもってこいだろう。今回の撮影シーンでは取り上げなったが、本機は高速AF&連写によって動きモノ撮影にも強く、さまざまなシーンで活躍できるカメラだ。後編では、「OM-D E-M1 Mark Ⅱ」編をお届けする。
【撮影スポット紹介】
今回のメイン撮影スポット「三溪園(さんけいえん)」は、明治から大正時代にかけて、生糸貿易で財の成した原 富太郎(雅号、三溪)によって造られた、総面積約17万5000平方mに及ぶ日本庭園。園内には、京都や鎌倉などから移築された歴史的価値の高い建造物が配置され、梅や桜、藤、花菖蒲など、季節の花々が園内を彩る。特に園内には約600本の紅梅や白梅があり、梅の名所としても知られている。竜が地を這うような枝振りの臥竜梅(がりょうばい)や、花弁の根元にある萼が緑色の緑萼梅(りょくがくばい)など、興味深い品種もある。2月中旬から3月上旬にかけて開かれる「観梅会」(2018年は2月10日~3月4日)をはじめ、1年を通してさまざまな催しが行われている。
■三溪園ホームページ
http://www.sankeien.or.jp/index.html