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2018/4/27 13:30

『凪のお暇』――主人公の人生のリセットが、「普通」に疲れた女性たちの共感を呼ぶ

ドロップアウト女子を描いた漫画『凪のお暇』(コナリミサト・著/秋田書店・刊)が熱い支持を受けている。事務職として働いていた28歳のヒロイン・凪子が、過呼吸になったことをきっかけに会社を辞め、スマホも解約し、郊外の6畳のボロアパートに引越す。

 

苦境だらけに思えるこのマンガは、なぜ「ananコミック大賞」を受賞し、「マンガ大賞」でも3位を獲得したのだろうか。

 

「普通」に疲弊

退職するまでは、凪子は普通のおとなしい会社員だった。とはいえ損ばかりしている。おとなしいからと多くの人にナメられ、上司からは必要以上に叱られ、同僚からは仕事を押し付けられ、彼氏に勝手に部屋に上がり込まれる。しかも彼と付き合っていることは会社の人たちには秘密だ。それでも彼女が耐えていたのは、いつか寿退職をして大逆転ができると信じていたからである。

 

こういう女性は凪子だけではない。多くの人がたとえ理不尽なことがあってもなんとか辛抱して日々を耐え忍んでいるのだ。けれど、すがっていた希望を失った時にあっけなく崩壊が訪れることがある。凪子が求めていたのは彼との結婚で、それはごく普通の女としての幸せである。そして凪子が送っていた日常は、ごく普通の会社員としてのものである。けれど社会とズレないために彼女は神経をすり減らしていた。普通を続けるということは、人によってはえらく疲れるものなのである。

 

 

崩壊後の自由

彼女はマンガの中で日常を「なんだかなあ」とか「空気読んでいこう」などとぼやき続けている。本当はこんなことをしたくない、けれど、周囲に合わせないとお給料をもらえない。お給料をもらえなければ生きていけない。だから、働き続けなくてはならない。多くの人たちは、長いこと、このジレンマに苦しんでいた。「我慢して稼がないと暮らしていけない」という資本社会的な価値観に縛られていたのだ。そして、マンガは軽々とこの辛苦を飛び越えていった。

 

彼氏の裏切りにより、凪子は限界を超え、過呼吸になり、何もないアパートに無職の状態で引きこもる。貯金の残高はわずかに100万円のみだ。かなりのピンチだ。それなのに彼女はどこか楽しそうで、同じアパートのちょっと変わった住人たちと交流を深めていく。彼らは好きに生きている。人と自分を比べたりもしない。マウンティングしてくる同僚女子との見栄の張り合いのような会話に比べて、肩のこらない自然な関係を築いていく。

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