本・書籍
自己啓発
2018/10/22 21:45

「それってどうせ○○でしょ」というナナメ目線を捨てて、オードリー若林がつかんだものとは?

私は、Excelが大の苦手だ。比較的、どんなジャンルのことでもチャレンジしてきたが、Excelだけは心底、もう吐き気がするくらい苦手意識が強い。

 

関数とか正直訳がわからないし、少しでも誤った数値を入力すると「#DIV/0!」とか「#VALUE!」とか謎の暗号が出てくるので、めちゃめちゃ焦る。しかも最後に「!」をつけるとか、Excelを思うように操れないことをおちょくられているようで、大変不快である。

 

足し算や引き算くらい、電卓でやれば答え出るやん。Excelなんてなくても生きていけるし。そもそも存在意義を感じないし!

 

だが先日、ひょんなことからExcelを使わなくてはできないお仕事を引き受けることになった。

 

 

久々に味わった「できる!めちゃくちゃ面白い!」な感覚

正直、数値の合計値を求めるSUM関数からままならないレベルだったが、アンケート集計とは、単純集計とクロス集計とはなんぞや、どんな関数を使うのかをものすごい勢いでリサーチした。そして、頼みの綱はExcelに詳しい夫である。深夜まで仕事をして疲れ果てて帰宅した後、無知な私にExcel関数のイロハを叩き込んでくれた。

 

その結果、ものの数日でちょいと複雑なアンケート集計ができるようになったのだ。この回答結果なら、この関数を使えば簡単? ちょっとややこしいけど、こっちの集計方法だとわかりやすい? などと、付け焼刃的な知識なりに自分の頭で考えていける。そして、関数を入れてEnterキーを押した瞬間に現れる数字。たまに「#DIV/0!」と出るが、もう焦らない。久々に、本当に久しぶりに、「できる!」という快感を味わった。

 

なんだ、Excelってめっちゃ便利やん!

 

「Excelなんて」とナナメに見ていた自分から脱皮したからこそ、世界も仕事の幅も広がった気がする。

 

 

オードリー若林氏は、なぜ変わったのか

さて、今回ご紹介したい一冊は、オードリー若林正恭氏の『ナナメの夕暮れ』(文藝春秋・刊)だ。オードリー若林氏といえば、相方のテンション高く、かなり個性的なボケに冷静にツッコむというイメージだったが、徐々に番組のMCとして登場することが増えてきた。彼のシニカルで、でも相手を傷つけなくて、的確なコメントが好きだ。

 

しかも、人見知り芸人として有名だったのに、先日の「アメトーーク!」では「人見知り芸人・卒業生」として出演していた。彼の胸のうちには、どんな変化があったのか。

 

本書によると、若いころは、毎日を楽しんで生きている人に憧れ、周りの目を気にしないで自分を貫ける人に憧れていたが、今はそういう人間になることを諦めた。すると、自分は何が好きで何が嫌いかの「自分探し」の答えがわかり、「日々を楽しむ」ことに繋がったのだと若林氏。

 

年を重ねたからこそ「生き辛さ」から解放された、これまでの日々の悶々とした想いや自分と向き合ってきた過程が、赤裸々に描かれている。

 

 

「肯定ノート」でナナメからの視点を殺す

『ナナメの夕暮れ』には、「自分探し」の答えを導き出すための方法として「肯定ノート」が挙げられていた。「それってどうせ○○でしょ」などというナナメ目線を続けていては、人生の楽しみを自ら奪っている。だから、なんでもいいから自分が楽しいと思うことを「肯定ノート」に書き連ねていく。

 

すると、我を忘れて楽しめることや、苦手だと思っていたけど意外に好きだったことに気づくのだという。自分の好きなことがわかると、他人の好きなことも尊重できるようになる。すると、世の中は案外「肯定」であふれていることに気づくのだと若林氏。

 

また、こんなことも書かれていた。人生は「自分と合う人に会う」ことを最優先させればいいではないか、と。「合う人にこれからも会えるようにがんばる」のだと。

 

普段はどんな本でもすぐに読み終える私だが、この本はすごく時間がかかった。用いられているワード一つ一つが、絶妙だったから。さらりと読むには、もったいなかった。じっくりと単語や表現を噛み締めながら読んだ本は久しぶりだ。「芸人が書いたエッセイなんて、どうせ大したことないでしょ」などとナナメに見ている人にこそ、おすすめしたい一冊である。

 

先日、私の父が65歳で定年退職を迎えた。今後は週3日の勤務になるので、何か新しいことを始めようかと思案しているらしい。「英会話を習いたい、趣味のテニスももっとやりたい、でもこれだけは絶対無理なのが楽器」などと話していたので、「いやいや、だったら楽器こそ始めるべき!」と今度帰省したら熱弁をふるってみようかと思っている。ナナメを捨てると、思いもよらない世界が広がるかもよ、と。

 

 

【書籍紹介】

 

ナナメの夕暮れ

著者:若林正恭
発行:文藝春秋

オードリー若林、待望の新エッセイ集! 『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』から3年。雑誌「ダ・ヴィンチ」での連載に、大幅に書き下ろしエッセイを加えた、「自分探し」完結編!

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