ここ最近、一眼に匹敵するクオリティの写真が撮れる、コンパクトなレンズ一体型の高級カメラが豊作です。ここでは、「風景」「夜景」「動きモノ」の3つのシーンで実際に撮影。それぞれの「引き出し」の多さを、カメラマンの吉森信哉さんが検証しました。
センサーサイズが大きいX100Fの画質が秀逸
10万円クラスの高級コンデジは、いま人気のカテゴリ。しかし、搭載するセンサーのサイズやレンズなどは、各モデルによって大きな違いがあるのがポイントです。筐体の見た目は似ていても、画質や連写性能はまったく異なることがあるので、購入前に吟味したいところ。
「今回試した3モデルのうち、最も大きいセンサーを搭載する富士フイルムのX100Fは、やはり画質に関する引き出しが多彩。『風景』と『夜景』の撮影における性能は、他モデルより頭ひとつ抜けていました。一方で、AFや連写速度が重要になる『動きモノ』撮影では、1型センサー搭載のソニー RX100M5とパナソニック LUMIX GF9が有利。画質と連写、撮影する際にどちらの性能を重視するかによって、選択するモデルが決まるでしょう」(吉森さん)
【比較モデル01】
高効率センサーを新搭載し画質もレスポンスも向上
ソニー
DSC-RX100M5
実売価格11万8000円
1型センサーを搭載し、小型ボディながら美しい画を実現するRX100シリーズの5代目モデル。高効率な積層型CMOSセンサーを新採用し、画質が向上しました。連写は最高約24コマ/秒という圧巻のスピードで、AFも0.05秒と高速。
ポップアップ式EVFを装備。約236万ドットの高精細タイプで視認性が高く、ピント確認も快適に行えます。
よく使う機能は、ファンクションメニューで素早く呼び出せます。内容のカスタマイズも可能。
【DSC-RX100M5の風景画質】
十分な解像感があり、立体的な描写はまずまずのレベル。レンズの開放絞りが広角端でF1.8と明るいため、夕暮れどきなど薄暗いシーンにも対応する。
【DSC-RX100M5の夜景画質】
1型センサー搭載カメラのなかではハイレベルな画質。「マルチショットNR」機能を利用すれば、ISO6400といった高感度でもノイズは目立ちません。
【DSC-RX100M5の動きモノ性能】
AFやAEを機能させた状態で約24コマ/秒の連写が可能。像面位相差AFでAF速度も速く、乗り物などの高速移動する被写体を自動で追い続けて撮れます。
【DSC-RX100M5をプロが採点】
88/100点
(操作性 :16、速写性:20、携帯性:16、グリップ性:20、画質:16)
速写性は圧倒的で 立体感のある描写も魅力
「適度なサイズのボディで起動も速く、速写性は抜群です。サイズのわりに重めですが、EVFを備えているため、トータルでの操作感は上々。描写には立体感があり、自然な写りが魅力です」(吉森さん)
【比較モデル02】
大口径レンズを搭載し暗所でも低感度で撮れる
パナソニック
LUMIX DMC-LX9
実売価格8万5940円
1型センサーと開放F1.4の大口径レンズを組み合わせ、暗所撮影でも高画質を実現。連写性能にも優れ、電子式シャッター使用時には最大約50コマ/秒での撮影も可能だ。30コマ/秒の「4Kフォト」にも対応する。
モニターのタッチ操作に対応。タップやドラッグ、ピンチイン/アウトができ、スマホ感覚で操作できます。
レンズの根元に絞りリングやコントロールリングを装備。構えた状態で絞りやピントなどの操作を行えます。
【LUMIX DMC-LX9の風景画質】
超解像機能を使うことで、適度に精細感のある自然な写真に仕上がりました。レンズは広角端でF1.4。被写体に近づけば、大きなボケ描写も得られます。
【LUMIX DMC-LX9の風景画質】
開放絞りがF1.4と明るく、広角側で撮影することで感度の上昇を抑えられます。ただ、ISO800を超えるとノイズが多少目立つようになってくるので注意。
【LUMIX DMC-LX9の動きモノ性能】
電子式シャッターでの約50コマ/秒連写に対応しますが、AFは固定されます。動きの速い被写体なら約30コマ/秒でAF追従できる「4Kフォト」がオススメ。
【LUMIX DMC-LX9をプロが採点】
80/100点
(操作性 :16、速写性:16、携帯性:16、グリップ性:16、画質:16)
必要な機能がすべて揃い トータルバランスに優れる
「突き抜けた部分こそないものの、必要な機能はすべて揃いスキなし。4Kフォトを使いこなせば、被写体を選ばず使えます。解像感や色再現もまずまずのレベルで、大きな失敗が起こりにくいです」(吉森さん)
【比較モデル03】
一眼並みの大型センサーで コンデジを超えた描写力
富士フイルム
FUJIFILM X100F
実売価格15万1480円
一眼と同等の大型センサーを採用。35mm相当F2のレンズも高性能で、コンデジのレベルを超えた高画質を誇る。EVFとOVFを兼ねた「アドバンスト・ハイブリッドビューファインダー」により、シーンに応じたスタイルで撮影可能だ。
感度設定内蔵のシャッター速度ダイヤル(左)や露出補正ダイヤル(右)を装備。設定がひと目でわかります。
「アドバンスト・ハイブリッドビューファインダー」の視野イメージ。OVFとEVFを切り替えて撮影できます。
【FUJIFILM X100Fの風景画質】
独自のフィルムシミュレーション機能から「Velvia」に設定することで、好ましい鮮やかさで撮れました。光の当たった建物や空の色を再現できています。
【FUJIFILM X100Fの夜景画質】
一眼並みの大型センサーを採用し、高感度撮影に有利。常用感度でも最高ISO 12800です。レンズも開放F2と明るめのため、無理に感度を上げる必要もありません。
【FUJIFILM X100Fの動きモノ性能】
連写は約8コマ/秒と他の2機種に劣ります。レンズが35・相当の固定焦点で大きく撮るには被写体に近づく必要もあり、速い乗り物などの撮影には向きません。
【FUJIFILM X100Fをプロがチェック】
84/100点
(操作性 :20、速写性:17、携帯性:11、グリップ性:16、画質:20)
画質だけでなく直感的な 操作性も好印象
「大型センサーならではの高い描写力がポイント。単焦点レンズ採用で起動が速いため、スナップ撮影に最適です。ダイヤル中心で直感的な操作が行えますが、ボディが多少重いのはネック」(吉森さん)
【私がチェックしました!】
カメラマン
吉森信哉さん
これまでコンデジを含む数多くのカメラを購入して使用。高画質かつ実用的なカメラを追い求めている。