グルメ
2018/5/5 20:50

【街中華の名店】銀座の老舗「萬福」。大正時代から不変の中華そばは必食だ!

いまは珍しい西支料理がベースとなっている

「萬福」で感じられる郷愁は、料理に関しても言わずもがな。なんといっても、基本的なレシピは創業時から不変というから驚きだ。つまり、大正時代と同じ味を楽しめるのである。そんな同店を代表する一皿が「中華そば」。玉子のトッピングが個性的な一杯だ。

↑「中華そば」700円。あっさりとしたしょうゆスープに細麺、チャーシュー、ほうれん草、メンマ、ナルトと王道であるが、玉子がこのタイプなのは珍しい

 

秘伝のスープは詳細こそ明かせないものの、動物系のダシに香味野菜を加えたもので魚介は入らない。そこにしょうゆダレを合わせ、特注のストレート細麺をしずめる。大きな特徴は、薄焼き卵を二等辺三角形にカットしてのせるトッピングだ。ほかではあまり見かけない特徴だが、その理由は創業者である初代の経歴にあった。

↑レシピを考案したのは、初代店主の笠原福次郎さん。額縁入りの写真が店内に飾られている

 

料理人だった初代は洋食出身。そして創業時の「萬福」は西洋と支那(中国)のメニューを提供する西支(せいし)料理というハイカラなジャンルだった。時代の流れとともに中華の割合が増え、街中華へとなっていった同店。だが、メニューの随所に西洋料理のエスプリといえる盛り付けへの美学などが込められている。そのひとつが、三角形の黄色い玉子なのだ。また、「ポークライス」にもその片鱗を見ることができる。

↑「ポークライス」880円。同店には同料金で「焼飯」もあるが、どちらにも普通のねぎではなく玉ねぎを使う。これも西支料理店からスタートしたという矜持であろう

 

チャーハン(焼飯)がしょうゆ味なら、「ポークライス」はケチャップ味。豚肉を使って強火の中華鍋で炒めるからか、洋食のチキンライスよりもパラっとしていて、パワフルなうまみがある。だが、玉ねぎの甘みによってまろやかさもある。いまとなっては珍しいかもしれないが、レシピを長年守り続けた老舗ならではの逸品だ。

↑「焼餃子(6個)」690円。大ぶりの手作り餃子も同店人気メニューのひとつ。甘酸っぱいタレと野菜で味わう「水餃子」は5個で690円。「サッポロラガービール 中瓶」は550円

 

ほかにも傑作は数知れず。たとえば餃子は豚肉と白菜を具材に用い、ニンニクは入れない。これは昼に訪れるビジネスマンのお客に配慮したものだ。シンプルであるが絶品で、厚くもっちりとした餃子を一度ボイルし、その後たっぷりの油で焼くのも特徴。そのため、まるで揚げパンのようにふっくらジューシーとした味に仕上がっている。

↑「レバーにら炒め」900円。15時までのランチタイムならライスとスープ付きで890円となる

 

一品料理で人気の「レバーにら炒め」も素晴らしい。「中華そば」などに用いる秘伝のしょうゆダレを味付けの軸にしており、酒などの調味料はあえて使わずシンプルに仕上げる。しいていえば豆板醤を辛さのアクセントにしているが、これが絶妙なエッセンスとなってご飯や酒が進むおいしさを醸し出すのだ。

↑現在の店主は三代目の久保英恭(ひでひさ)さん。偉大な祖父の味とともに「萬福」を守り続けている

 

奇しくも2018年の秋から放送されるNHKの朝ドラは「まんぷく」というタイトル。インスタントラーメンを生み出した偉人をモデルとした内容だが、この「萬福」にも奥深い歴史と秘められた人間ドラマが隠されている。ぜひ今度銀座に繰り出す際は、同店の味と雰囲気でモボ&モガ(モダンボーイ、モダンガール)な気分に浸ってみては。

 

撮影/我妻慶一

 

【SHOP DATA】

萬福

住所:東京都中央区銀座2-13-13

アクセス:東京メトロ日比谷線ほか「東銀座駅」A7口徒歩3分

営業時間:11:00~15:30、17:00~23:00(L.O.22:30)月~木、(L.O.23:00)金、(L.O.22:00)土

定休日:日曜、月曜の祝日

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